ライフスキルは、 世界保健機構(WHO)が 、建設的、適応的、前向きに行動するために必要不可欠な能力と定義づけた技術のことです。
ライフスキル教育は、先進国などで社会問題化している青少年の薬物乱用、飲酒喫煙、無防備な性行為、学校中退、退学などの危機的状況を未然に防ぐ方法として、発達段階に応じたライフスキルを身につけさせるべきだと世界保健機構(WHO)がライフスキル教育プログラムを1993年に公表、紹介したのが始まりです。
生きる、暮らすとは、選択の連続です。
よりよく生きるために「なにを、どうするのか」という選択の場面で役に立つ技術がライフスキルであって、性格を変えようとするものではありません。また性格や頭のよさの問題でもありません。
ライフスキルというと特別なもののように感じるかも知れませんが、言葉こそなかったものの、かつては、生活の知恵やコツとして、親から子へしつけというかたちを通して身につけたものです。
地域社会や子供社会で、また年長から年少者へ世代の違った集団による遊びの中で、無意識的・体験的に伝えられていたのです。
しかし、少子化、地域社会の変質、情報化が進むなかで、世代間の乖離が進み、人間関係が希薄になり、ライフスキルを学ぶ機会が極度に減少する傾向にあります。
そうしたなかにあって、人が幸福、安全、快適に暮らすためにスキルとして、いまもっとも必要とされているものは携帯電話でも、液晶テレビでもない、
ライフスキルこそが、いまもっとも必要とされていることであると言えます。
ライフスキルには次の10項目があります。
・自己認識スキル Self-awarenessr
・共感性スキル Empathy
・効果的コミュニケーションスキル Effective Comunication Skills
・対人関係スキル Interpersonal relationship Skills
・意志決定スキル Decision Making Skills
・問題解決スキル Problem Solving Skills
・創造的思考スキル Creative Thinking
・批判的思考スキル(クリティカル思考) Criticai Thinking
・感情対処スキル Copingwith Emotions
・ストレス対処スキル Copingwith Stress
以上10の技術のことです。
これらは相互に密接に関連しており、わかりやすくするために次の5つにまとめることができます。
必要なライフスキルを身につけていないと、自分の気持ちをうまく伝えられなかったり、問題を解決できなかったり、周囲に流されてしまったり、つらいときにどうしていいかわからなかったり、困った問題が生じます。
努力家で、とっても性格のいい、やさしい人が、人生の大事な場面、たとえば恋愛、仕事、試験などで失敗してしまうことが少なくないのは、ライフスキルが影響しています。
そういう「生き方の技術」は、みんなどこで身につけているのでしょうか?
学校や家庭などで学んでいきますが、ほとんどは知らない間に無意識に学んでいます。
だから、性格や頭のよさとして片付けられてしまうので、「私なんか」というように自信喪失につながってしまいます。
原因は努力できない性格にあるのではないか、頭が良くないんだと思ってしまうからです。
でも、そうではありません。
ライフスキルの身につけ方を間違えているだけなのです。
クルマでいうなら、間違ったドライビング・テクニックで、運転しているようなものにすぎません。
クルマの運転と同じく、コツがあるのです。
誰でも分る技術ですので、練習すれば身につけることもできます。
そして、コツは、いったん身につけると他のことにも応用できます。
うまくいかないときこそ、身につけてみょうと取り組むチャンス。
早ければ早いほど、後々影響力が違います。
身につけたスキルは、いったん身につけると他のことにもどんどん使えます。
使えるというより、ライフスキルはこどもから大人まで、すべての人がそれぞれの立場で使って生きているのです。
だからライフスキルの不足がなぜ起こっているのか、どうすればいま以上に育むことができるのか知っていたらなら、仕事、就職、転職、恋愛、結婚、離婚、出産、育児、あらゆる試験、習い事やスクール、子育て、介護ケア、海外留学・移住、日常のあれこれから、エンターティンメントまで様々な場面で効果を発揮します。
特に、これからお母さん、お父さんになる方は早く身につけることをおすすめします。
子育てにも強力な力を発揮するからです。あるいは思春期のこどもさんを持った方にも、道具として使ってほしい。そしてしあわせをがっちりつかんでほしい。
ひとりの人がしあわせになることは、少なくとも数人は幸福になるのですから。スキルを磨くチャンスがなかったために苦しい生き方をしている人がいっぱいいます。
新しいスキルを身につけるのは、いつからでも遅すぎることはありません。
スキルを身につけていくことは、自分の生き方を最大限、自分にひきよせ、自己実現していくことを容易します。
ライフスキルは10のスキル、それを集約して5つのライフスキルから成り立っています。その集約が自己肯定感(セルフエスティーム)になっています。
自己肯定感とは自分のよいところを発見し、好きになり、自分を大切にできる自尊感情、健全な自尊心などの意味で、自他肯定の基本になっています。
自他肯定とは、自分もOK、他者もOKとするありのままの自分、ありのままの他者を受け入れる力で、この力が発揮する効果は自分の人生はもちろん、周囲の人に及ぼす影響は絶大です。
では、5つのライフスキルについて説明します。
1.自己認識スキル
自分自身の感情を知るライフスキル
自己認識スキルは自分自身の感情を知るライフスキルです。感情の動物である人間にとって感情を知ることは自分をコントロールできることにつながります。
自分の感情をいつもどんな場合も察知できる能力は、自分自身を見つめ理解するうえで必要不可欠です。
自分が何をどう感じているのか把握できなければ、感情の波に押し流されてしまいます。そのために本当の気持ちが判らないままに、一生を左右すること、たとえば就職や結婚など生涯に影響する大事を決定してしまうことが少なくありありません。
その結果、気持ちと意識がミスマッチを起こして、不満がくすぶることにもなります。すべての混乱のはじまりは、自己認識スキルの不足から始まります。
一方、自分自身の気持ちがよくわかっている人は、迷わうことなく自分に率直に生きることが可能になります。
感情を知る事ができる力は、他者の感情を知る力につながり共感に発展します。
自己認識スキル と一対になっているのが共感スキルです。
共感は自分の感情を自己認識するスキルの上に成り立つスキルで、他人の感情に察知する上で欠かせないもので、根本的な人間関係を処理するとても重要な役割をします。
共感スキルにすぐれている人は、他者が放っている社会的信号を敏感に受けとめることができるので快適なコミュニケーションが築けるのはもちろんですが、人間関係考察力が必要な人、経営、教師、営業職には欠かせないライフスキルあり、その意味では親の役割を果たす上でとても大切です。
反面、他人の感情に対して無関心、鈍感による社会的代償は大きいと言わざるを得ない。
2.意志決定スキル
意志決定スキルは、自分のことは自分で決めるライフスキルですが、そのバックボーンには、感情に溺れず客観的に判断し、実行する力があります。
意志決定スキルは問題解決スキルと補完する関係にあり、意志決定力は因果関係を洞察する力に支えられています。
私たちは毎日頻繁に選択作業の繰り返しを行っています。
いくつかの選択肢の中から最も望ましいと考えられるものを1つ選択できるライフスキルは動機づけと表裏一体のスキル。
暮らしは選択の連続です。選択は問題を解決するときにもついて回ります。
個人がある問題に対して、期待したり、される効果を最大限に実現するために、いくつかの選択肢の中から最良と考えられる1つを判断して、選択する力が意志決定スキルです。
意志決定スキルは以下のことに役立ちます。
・健康に対する選択と決定がもたらす結果の予測
・選択肢と選択権に影響する要因を認識し、それに基づいて積極的に意志決定する
・状況を正確に予測して意志決定する
・現実的な目標を設定する・計画を立て、自分の行動に責任をとる
・新しい状況に適応するためにあらたな選択、判断をして、意志決定をする
次に、意志決定スキルと補完関係にある問題解決スキルについて説明します。
私たちは日々さまざまな重要な問題に直面しますが、多様な問題に適切に対処するスキルが、問題解決スキルです。
適切というのは、なんとなくうまく処理するということではなく建設的に対処することです。
重要な問題を未解決のまま、放置しておくと精神的ストレスが増えるばかりですが、ついには身体的ストレスにも発展します。
しかし、問題解決スキルがあれば建設的に処理できるようになります。
問題の解決とは、期待する結果を実現するために、いくつかの選択肢からもっとも最適なひとつを選ぶ判断をすることです。
問題解決スキルを身につけていると、問題やその原因を見極め、何が起こったのかを正確に予測、推測、判断できるようになります。
さらに問題が広がることを防止し、バランスよく判断、対策を打てるようになります。
その力のおかげで精神的にも身体的にもストレスを軽減し、意欲を引き出す源泉になります。
問題解決スキルを身につけると、以下のようなメリットが得られます。
・問題やその原因を見極め、何が起こったか正確に測、推測、判断できる
・助けを求める
・和解(衝突を解決するために)
・問題が生じたときにまわりの人が助けを得られる場を考えられるようになる
・地域の問題に対する集団的な解決法を考える
3.コミュニケーションスキル
自分を伝え相手を理解するライフスキル
コミュニケーションスキルは、効果的コミュニケーションスキルと対人関係スキルと一体になっています。
コミュニケーションは社会的知性とそれを発揮するために必要なスキルであり、リーダーシップやバランスのとれた人間関係を支える基礎的な能力です。
人をコントロールしたり、されたりすることなく、人間関係を損なわずに上手に自己主張(アサーティブ)できることはコミュニケーションの基本です。
こうしたライフスキルに優れている人は、他人との協調が必要な仕事を何でもうまくこなせるので、社会的な人望を集めます。
人間関係を処理するコミュニケーションスキルは、その大部分が他人の感情をうまく受けとめます。その意味でも効果的なコミュニケーションを行うには、受ける側の人はメッセージの送ってくる側の人に十分な注意を払う必要があります。
・効果的で適切な言語的・非言語的コミュニケーションができるようになります
・積極的自己表現(アサーティブネス)・交渉(ネゴシエーション)が可能になります。
・断ることができるようになります。
・内気さを克服できます。
・人の話をよく聞くようになります。
管理職にある方で、人が使えない、つまり指示できない、フォローできない、目的が達成できない方は、特に意識して身につけるようにしたいものです。この問題は因果関係があるので、後ほど詳しく説明しますが、たとえば、内気だからといって、主張がないわけではありません。
内気な人に多い主張の仕方で多いのが、統一されていない言語・非言語のコミュニケーションを行うことです。
つまり言葉では怒っていないけれど、態度は怒っているとうようなコミュニケーションのことです。
言葉にするには抵抗があるので、態度で伝えようとします。
しかし相手に要求がましくなってまうので、まわりの人を混乱させ、傷つけます。
それでも依然として 自分には被害者意識しかないので、加害者意識はありません。
結局、 まわりの人は不満を持ちますので、効果的でないばかりかコミュニケーションは断絶してしまうことが少なくありません。
対人関係スキルは、好ましいやり方で、人と人との良好な関係を作ったり、社会生活を営む上で、支援してもらえる最強の味方となる家族との良い関係を作り、維持して、より建設的、発展的な形での別れを可能にするスキルです。
対人関係スキルがを身につくと、主に以下のことに役立ちます。
・協力しあう
・信頼して共同作業をする
・適切な対人行動のための限界を知る
・友達をつくる
・対人関係をつくったり終了したりできる
・家族と建設的な関係を作れる
4.目標設定スキル
自分を動機づけできるライフスキルで、創造的思考と批判的思考が補完し合っています。
自分がしたいことを達成するために実行可能な計画を立てることができるライフスキルでモチベーションとも深く関連したライフスキルです。
目標達成にむかってモチベーションを高めて、自分の気持ちを奮い立たせるスキルは、自分がより自分らしく生きるために不可欠です。
集中力、創造力、あるいは衝動や快楽を我慢する力、生産的で効率的にセルフ・マネジメントするスキルは何を達成するうえで力を発揮するスキルです。
創造的思考スキルは、目標設定したり、問題解決したりするときにどのような選択肢があるか、いろいろな影響因子を見つけだすことができるライフスキルです。
また、経験しないことについても考えたりできるスキルが創造的思考スキルです。
創造的思考スキル によって、行動あるいは行動しないことがもたらす結果を考えることを可能にして、意思決定と問題解決をサポートに影響力を発揮します。
また問題がない場合や意志決定をする必要がない場合でも。豊かな発想ができるようになります。
創造的思考スキルを身につけていると毎日が柔軟に適応できるようになります。
創造的思考によって、以下のようなメリットを獲得します。
・ポジティブ思考
・主体的学習(新しい知識を求める)
・自己表現
・選択肢を見分ける(意志決定のために)
・問題に対する新しい解決法を見分ける
批判的思考(クリティカル思考)とは、目まぐるしくどんどん入ってくる情報や自他ともの経験を客観的な方法で分析するライフスキルです。
現代人の生活にはますます欠かせないスキルになっているといえます。
価値観、同僚からのプレッシャー、それにメディアなど、人々の態度や行動に影響する要因を認識し評価するのに役に立ち、心身の健康に建設的に影響を発揮します。
以下のことに役立ちます。
・態度や価値観行動に及ぼす社会的文化的影響に気づく(仲間のプレッシャーやメディアの影響も含む)
・不平等さや不公平さ、偏見を認識する
・大人が常に正しいわけではないことを認識する
・責任ある市民の役割を認識する
最近の相次ぐ企業犯罪ともいえる不祥事などからも解るように、批判的思考スキルの重要性は高まっています。
目標設定は簡単なようで難しいものです。多くの人が目標を設定できないために自分の力を発揮できずに悶々としています。
創造と批判のバランスがうまくとれないことが難しくしています。
5.ストレスマネジメントスキル
感情を制御するライフスキル
ストレスマネジメントスキルは、感情対処スキルとストレス対処スキルと補完する関係にあります。
有害なストレスを引き起こさないようなライフスタイルを実践できるスキル
感情を適切な状態に対処できるスキルは、自分の感情を自己認識するうえで大きな力になります。
自分の感情を静め、不安や憂うつや苛立ちをふりはらうことができ、逆境に出会ったり、混乱があっても、立ち直りも早く思うように自分を動かせます。
反対に思うように、感情のコントロールができない場合には様々は弊害が発生するため、いつも不快な気分との葛藤が立ち上がってきます。ストレスマネジメントスキルを支える感情対処スキルは、自分やまわりの人の不安や喜怒哀楽の感情を認識し、適切にコントロールできるスキルです。
怒りや悲しみなどの感情に適切に対処せずに、自分を委ねてしまうと、タバコ、酒、薬物乱用のような逃避的行動への依存を高め、さらには慢性疾患の危険度を高めます。
心身を危険な状態に追いやる可能性が高くなりますが、感情対処スキルがあれば自分やまわりの人を危険から守ることが可能になり、以下のことにメリットを発揮します。
・自分自身や他人の情動に気づくことで、良好なコミュニケーションを建設、維持できる。
・情動と感じ方、考え方それらと適切な行動の仕方とをつなぐことができる
・フラストレーションや怒り、退屈さ、悲しみ、恐怖、不安に適切に対処する
・まわりの人への強い情動に対処する
一方、ストレス対処スキルは、感情対処と補完し合っていて、それらのスキルによって以下のことに効果を発揮します。
・自分の力では変えることができない状況に対処できるようになる
・困難な状況(喪失、拒絶、非難)に対処する戦略を考え行動できる
・精神活性うぃするにあたり、アルコール、薬物、依存的な性質のものを使わずに対処する
・プレッシャーの下で落ち着きを保つ
・人間関係、ビジネス、テストのストレスに対処する
ストレスさん、こんにちは」のイメージ がぴったりのストレス対処スキルです。
もう怖がらない。ともだち扱いしてしまう。
ストレスが何たるものかを知ってしまえば、怖くはないですよね。
ストレス対処スキルは、日常生活でのストレス源が、どのように影響するのかを知り、ストレスのレベルを調整できるライフスキルです。緊張とストレスに対処する能力です。
ライフスタイルや物理的な環境を変えることで、ストレスの源を少なくすることができます。
また避けようのないストレスに対しては、緊張が心身の健康問題に波及しないようにリラックスできる方法を学び探しだすスキルです。