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イチロー選手で考える


イチロー選手のこと。

大リーグで活躍するイチロー選手。

「そりゃ、僕だって、勉強や野球の練習は嫌いですよ。だれだってそうじゃないですか。つらいし、大抵はつまらないことの繰り返し。でも、僕は子どものころから、日標を持って努力するのが好きなんです。だってその努力が結果として出るのはうれしいじゃないですか」 (イチロー:談)

年間の200本安打にこだわるイチロー選手の言葉です。

「努力が結果として出るのはうれしいじゃないですか」は誰でも願いことだし、そうだったらいいと思います。

でも、 自分を信頼できない者はうなずく一方で、別の考え方をします。

イチローほどの実力があるから目標を持てると・・・・。

そんなふうに思う人でも、こんな言葉を聴くと、見方も少し変わるはず・・・

「ここまでヒツトを重ねるには、それよりはるかに多い数の凡打を重ねなくてはいけない。やっぱり思うことは2000という表に出る数字じゃなくて、それ以上にはるかに多い数の悔しさを味わってきたことのほうが僕にとっては重い気がします」(イチロー:談)

・・・目標に向かう気持ちを挫くのに十分すぎる挫折があります。
挫折は誰にでもつきもの、ハイレベルになればなるほど、挫折も多い。それを挫折と思わないのはどうしてだろう。
ある者は決定的に傷つき、ある者は挫かれない。それはどうして、なにが違うのだろうか。

それでも挫けない秘密は、次の文章にあります。

「ぼくの夢は一流のプロ野球選手になることです。
そのためには、中学、高校で全国大会へ出て、活躍しなければなりません。
活躍できるようになるには、練習が必要です。
ぼくは、その練習にはじしんがあります。
ぼくは3歳のときから練習を始めています。
3歳-7歳までは半年くらいやっていましたが、3年生の時から今までは365日中、360日ははげしい練習をやっています。
だから一週間中、友達と遊べる時間は、5時-6時間の間です。
そんなに、練習をやっているんだから、必ずプロ野球選手になれると思います」
(イチロー:談)

これはイチロー選手が、小学校6年のときに書いた作文だそうです。

この作文に挫けない秘密と関連して、「自分はきっとやれる」といった自己肯定スキルがしっかりと育まれているプロセスを明確に観ることができます。

練習漬けの毎日ですが、練習をすることによって、「友達と遊ぶ時間もないほど、こんなに練習をやっているんだから、プロ野球選手になる以外にないだろう。これだけやっているのだからそれしかないだろう」という実感を手に入れています。
こどもごころにも、選択の余地がないほど自分と自分の時間を野球に投資しているのだから、その結果を引き受けていくしかない。という選択。それは選択肢を失うほどに、追い込まれた者のつらさでもあるのですが、それが自信になっています。

この時イチロー選手は、この現象に対して、ネガティブにもポジティブにも判断できる立場にあり、判断の選択もイチロー選手にありますが、野球のスキルが上達していることもあり、ポジティブな判断に傾き、「必ずプロ野球選手になれると思います」と結論づけています。

この状態を自分の選択で継続したことで、野球のスキルと、自己肯定スキルをはじめとするライフスキルが身につけることが雪だるま式にどんどんふくれあがっていったわけです。

さらに イチロー選手の「個人主義的な印象」の真実が見えます。

国別対抗戦「ワールドベースボールクラシック(WBC)」で、王監督率いる日本チームに参加したイチロー選手の印象に違和感をもった方も多かったと思います。
それまでの「個人主義的な印象」と違ったからです。

もともと「個人主義」でもなんでもない。
自分はOK、まわりの人もOKの姿勢なんだということが小学校6年のときの作文から見えてきます。
自分はOK、まわりの人もOKの背景には自他境界、つまり自分とまわりの人は別個の人間だという明確な分別がついていて、自分のやりたいことを自分はする。それはともだちも同じことが当てはまると分別がついているにすぎない。自分を尊重するようにまわりの人も尊重するということに他ならないわけです。

それをさらに裏付ける言葉があります。

「自分にとって、満足できるための基準は少なくともだれかに勝ったときではない。自分が定めたものを達成したときに出てくるものです」(イチロー:談)

自分をまわりの人と比較していません。
自分はOK、まわりの人もOK。のポリシーが明確ににじみでている言葉です。
自分に自信のない者、つまり自分を肯定的にとらえられない人は、無意識のうちにまわりの人と比較してしまい、なにかにつけて競争的になります。
自分が勝手に劣等感をもっているからです。

その劣等感が
自分を苦しめます、ますます自己否定的になってしまい、それによって傷つきます。
でも、もうこれ以上傷つきたくない気持ちが強迫的に動いてしまい、競争的になり、なんでもいいから勝っていることを感じたくなります。

これは社会問題になっている「いじめ」の根本にある原因と同じです。

だから、いじめをなくそうとしたら、「いじめるのをやめなさい」というではなく、目標を持たせることです。
「いじめるのをやめなさい」と言っても、いじめている者には、そうせずにはいられない理由があります。
いじめる側の者にある自己否定感、つまりコンプレックスの処理の仕方を間違えているのです。

親や先生は、「いじめるのをやめなさい」ではなく、正しい処理の仕方を教えてやらないといけない。
「夢を持とう」「目標を持とう」をアプローチをするのです。具体的な夢や目標を持つ作業にかかわって、サポートしてあげないといけない。セルフエスティームスキル自己肯定スキル)を高める道を探し、身につけるようにしたほうがいいのです。

ところが、それをせずにいたり、できなかったりするから、いじめている者の問題が解決されないままになるので、いじめは止まらないのです。

 

「ここまでヒツトを重ねるには、それよりはるかに多い数の凡打を重ねなくてはいけない。やっぱり思うことは2000という表に出る数字じゃなくて、それ以上にはるかに多い数の悔しさを味わってきたことのほうが僕にとっては重い気がします」(イチロー:談)

たとえば、こんな話を聴く機会がよくあると思います。
コップの中に半分水が入っている。それを見て、もう半分しかないと思う人。まだ半分あるもあると思う人。同じものを見ても考え方はこうも違う。
ポジティブ発想、ネガティブ発想についての事例に、よく使われる話です。


このイチロー選手の談話は、どうでしょうか?
彼は失敗に関心があるようですが、そうではありません。

彼の言いたいのは、悔しい思いをするたびに、どうすれば打てるのかを考え工夫したことを言いたいのであって、ネガティブな発言ではなく、常にポジティブだったと言いたいわけです。
つまり、「打てなかったときに、落ち込む人は多いけれど、ぼくはそうじゃない。打てなかったときほど、やってやると闘志がわき、考え、工夫して、練習をした」ということです。

それを裏付ける言葉があります。

「やれることはすべてやりましたし、どんなときも手を抜いたことは一度もなかった。やろうとしていた自分、準備をした自分がいたことは誇りに思います」(イチロー:談)

イチローは特別な人でなく、みんなと同じです。
事実そのことを本人が一番知っている。だからこそ、みんなと同じだけど、みんながしていないこと、つまりイヤになったとき、落ち込みそうになったとき、仕事から離れたくなるときほど、仕事に打ち込んだことを、誇りにしたいと言ってるのです。

みんなが、していないこととは、できないことでも、あきらめずに、どうしたらできるのかを考えて行動したことです。

バットを置いて考えるのではなく、置かずに、いつも振りながら考えたということです。
過去の成功も未来の不安もない。ただいまこの瞬間、どうしたら打てるのかと、練習中も試合中も考えながらバットを振っているだけなのです。だから不安になっている時がない。
とてもシンプルです。

でもたいていの人は、嫌気がさして、つまり失意の内にバットを置いて気晴らしに全然違うことをする。あるいはバットを置いて考える。あるいはさっさとあきらめる。
そして、これが一番重要なことだけど、それと引換に自己肯定感を失っているのです。
自分はダメだと思うようになってしまうのです。

 

「成功にはいろいろあると思うんですけど、自分の中で立てた目標というものを成し遂げた。
そのことを成功だというのなら、わかります。
でも、他人が言う成功を追いかけ始めたら、なにが成功かわからなくなってしまいます」
(イチロー:談)

ビジネスも、勉強も、遊びも、本当の自分を外に出すためのツールみたいなものです。
自己実現でない成功もたくさんありますが、それは世間の尺度で測った成功であって、自己実現でないことが少なくありません。
本当の意味での成功とは自己実現ではないでしょうか。
つまり自分がしたいことができたというよろこびです。
他者の尺度で測った成功は自分の成功とは呼べないと思います。
自己実現こそ成功と呼べるわけで、成功は他者と比較できる性質のものではありません。

イチロー選手の場合は、「夢を持とう」「目標を持とう」です。
自分はOK、まわりの人もOKですから、まわりの人は比較する存在にならない、競争の対象にならない。

いじめというのは。自分のやりたいことが分らない、あってもできない、あるいはしないことに始まるのではないでしょうか。つまり自分への関心が薄れて、他人に関心を寄せざるをえない状況に陥ったときに、自分への憎しみが無関係な他者に向けられた状態です。

なんで、自分への憎しみが起こるのかというと。本人は気がついていないけれど、自分がしたいことを放棄したことへの怒りです。自分が引き受けないといけない怒りなんだけれど、それがきつくて耐えられない。

自分の目標を達成するために一生懸命だから、まわりの人のことなんか気にしていられないのです。

イチロー選手のように自分のやりたいことを自分で引き受けてチャレンジしていたら、自分にも、対象となること(イチロー選手の場合、野球ですが)愛情はわくけど、憎しみは起こらない。

 

行動している人間ならではの言葉です。考えていると不安にもなるばかりです。

でも、行動している人は不安がないかというと、実は取り返しのつかないリスクを背負って行動しているのです。まず時間を使っています。お金を投資しているのと同じです。もう二度と使った時間は戻らない。

だから、イチロー選手のこの言葉が重いのです。

「やれることはすべてやりましたし、どんなときも手を抜いたことは一度もなかった。
やろうとしていた自分、準備をした自分がいたことは誇りに思います」
(イチロー:談)

行動していない人は、こんなことしていて何になるのかと思います。それでやめてしまう。やめてまた考える。結局行動はなにもない。

イチロー選手の言葉・・・

「いま小さなことを多く重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道なんだなというふうに感じてますし。激アツでしたね、今日は」(イチロー:談)

小さなこと、こんなことがなにになるのかと思うことを続けています。

「なんでこんな細かいことまで気にしなきゃいけないんだって、ホント嫌になることもあります。
自分が勝手にやっているんですけどね。
したくないんだけれど、やっぱりやっとかなきゃというのはある」
(イチロー:談)

冒頭に掲げたこの言葉をもう一度考えてみましょう。

「そりゃ、僕だって、勉強や野球の練習は嫌いですよ。
だれだってそうじゃないですか。つらいし、大抵はつまらないことの繰り返し。
でも、僕は子どものころから、日標を持って努力するのが好きなんです。
だってその努力が結果として出るのはうれしいじゃないですか」
(イチロー:談)

 

目標を持つのか、持てるのか。
どちらにしても目標が目標になっていくのは、自分の行動の結果です。
目標を設定できる力によります。

目標を設定するライフスキルは、セルフエスティームスキル自己肯定スキルに支えられています。
自己肯定スキルは、 。つらいし、大抵はつまらないことの繰り返しをして得られる結果によって深まります。

温泉に入っているより、もっと心地良いことを知ると自己肯定スキルは高まります。

「自分以外の人が作る状況によって、白分が幸せに感じられる、うれしく感じられるとは思わないんですよね。
自分がなにかをやることによって、自分が幸せを感じるならばわかるんですけれどね。
単にそういった状況を見て『ああ、自分は幸せだなあ』っていうふうには思わないですね」
(イチロー:談)

人生は自分の手のなかにある。つまり自分で選択ができるという意味です。それは誰かのせいにしたり、誰かに絡んで気を紛らわしたり、誰かが用意したもので、時間を無為に使うも使わないも自分の選択だということです。

世の中はお金をもらうために、面白いこと、楽しいことを用意します。イチロー選手が言う大抵はつまらないことの繰り返しとえらい違いです。でもそれと引き換えに自分を失うか、自分を自分の手のなかにおいておくか、それは自分の選択です。

 

「第三者の評価を意識した生き方はしたくない。自分が納得した生き方をしたい」(イチロー:談)

イチロー選手がいまこう語ることができるのは、毎日自分の目標に向かって、小さなことを粗末にせずに繰り返し繰り返し実行してきたからです。

 

【参考】イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫」( 児玉光雄 著 東邦出版)


イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫


自己実現・・・それは、とてもシンプルなこと。

こんなことしていて大丈夫なんだろうか?という不安に向き合いながらも、その不安を気にしている余裕がないほど、そのことに取り組む。行動していたら不安は忘れます。

鮭が産卵のため、逆流する川を上っていきます。そして産卵して死にます。
ペンギンは卵を守るために何ヶ月も飲まず食わずでじっと立っています。

人間は賢いから、そんなことはしません。

でも、本当に人間は賢いのだろうか?そう思うこのごろです。

(敬称略)

 

 

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