NHK衛星放送での『20世紀最高の大スター、エルヴィス・プレスリー』4日連続放映で溜飲を下げたファンは少なくない。さてどのエルヴィスのどの場面が好きだったのかは様々であるが、その中でもシットダウン・ショーの、その中でも、<BABY WHAT YOU WANT ME TO DO>に「これぞ!エルヴィス!」と思ったというか、声が張り裂けんばかりに吠えたいファンも多いはずだ。
<ペイビー・ホワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ>
オール・ライト,イェア、ベイビー,オーケー、
元気にいくぞ
しっかり行こう、ベイビー
ノリノリで
オールライト
アップでいこう、ダウンでいこう
アップでダウン、ダウンでアップ
どちらにいくにも、きみの好きなロールできめて、
ベイビー、イェア、イェア、イェア
結局ぼくは、きみの言うなりさ
ベイビー、きみは一体どうしたいんだい
きみの指図で覗いて、
隠れて覗いて隠れて、
隠れて覗いてどちらにいくにも、
きみが好きなロールでぎめて、
ベイビー、イェア、イェア、イェア
結局ぼくは、きみの言うなりさ
ベイビー、きみは一体どうしたいんだい
アップでいこう、ダウンでいこう
アップでダウン、ダウンでアップ
どちらにいくにも、きみが好きなロールできめて、
ベイビー、イェア、イェア、イェア
結局ぼくは、きみの言うなりさ
ベイビー、きみは一体どうしたいんだい
馴染みのリングだね。
これでいい
イェア、上出来、ただ、、、
腰から下ねえ。
自分の体に触ってもいなかったのに、
おかしな話じゃないか。
逮捕されるところだったね。
地獄に連れていかれるところだったよ。
あ、裁物官のお出ましだ?
裁判官だ。あれは一体何だったのかなあ。
オー、イェア、そうだね。
やってもらいたいのはこれ。楽しい曲だよ。
まずこのショーの素晴らしさは、ごまかしようのない状況で、ごまかす必要もなく、素のままに声もギターもリアルなバイブレーションが画面に溢れていることだ。座ったままで動きがない分、女性ファンにはどのエルヴィスよりも美しくハンサムであることを確信しながらも、アンバランスとも言えるほどブラッキーで生々しいプレーによって、この世にふたりといないロックンローラーを見ることができる唯一の機会である。おそらく40数年前にエルヴィスはじめ世界中の人間が心配したロックンロールの終焉を迎えることもなく、今後もロックンローラーは登場するだろうが、こんなに美しく激しくフレンドリーな心優しきロックンローラーは登場しないだろうと確信するに十分な映像である。
そしてその中でも、<ラブ・ミー>を歌い終えたエルヴィスがそれまで使用していたアコースティック・ギターをスコティ・ムーアのエレキギターと交換して、プレーを始めた瞬間に匂い立つ熱気、それにすぐさま反応してバンドから声が上がり、エルヴィスは桃源郷に加速して向かうかのようにリズムを全身でとりはじめる。恐らく多くのファンは、過去どのような映画でも見ることができなかったカッコ良さを思い知らされることになる。しかし肝心のエルヴィスとその仲間には、まるでお遊びの範疇でしかないノリかたなのである。ほとんど素のままの彼等のプレーに鳥肌が立つのは、聴く者の受けた衝撃と彼等の日常とのギャップにである。一体自分たちはエルヴィスの何を知っていたのかという疑問にぶつかざるを得ない光景を見たのだ。
このテレビ放映を見ていくつかの寄せられたメールには共通したメッセージがあった。それは「エルヴィス・プレスリーがこんなにすごいということを初めて知った」という意味のことである。断っておくがボクもこのシットダウン・ショーを観る度に同じことを毎回思っているのだ。
考えてみると来年は没後25年である。その間、新曲はないのだ。それでも飽きずに聴く程吸い込まれていくというのは尋常なのか?尋常ではないはずだ。しかしボクは決して狂っていない。エルヴィスの場合は尋常であるというしかないのである。
それを集約しているのが、このシットダウン・ショーの、その中でも<TRYING TO GET TO YOU>で堰を切ったようにはじまる魂の解放というべき突進だ。<TRYING TO GET TO YOU><ONE NIGHT>2度目の<BABY WHAT YOU WANT ME TO DO>の大地震である。
このエルヴィスの男っぽさはいかがなものか。この場の空気のすべてがエルヴィスのプレーに宿っている。没頭し中腰になってギターを弾き、かけ声をかける。バンドも全員でエルヴィスをがっちり支えている。1回目の最強のお遊びではない、世界最高レベルのプロ魂が熱く漲っている。全身がロックンロールである。この激しさ、この熱さ!ゴスペルなんて言ってくれるな、バラードなんて言ってくれるな、映画スターなんて言ってくれるな、エルヴィス・プレスリーはロックンローラーなのだ。
エルヴィスの素晴らしさのひとつは今日的に言うなら「白い黒さ」である。いわゆる黒さでいうなら、エルヴィス登場時代と社会環境も大きく様変わりし、今日では白人でも黒人っぽくプレーするのは珍しくない。それと比較すると現代では「エルヴィスのどこか黒いの?」と思う人がいても不思議でない。
エルヴィス初期の問題作<ブルームーン・オブ・ケンタッキー>など聴いたところで、どこがどう黒いの?もっと黒い人いくらでもいるよ思うだろう。例えばボクの大好きなミック・ジャガーなどの黒さは素晴らしい。しかし言い過ぎかもしれないが、今日多く見受けられるのは黒人のようにプレーをすることはそれ事態ひとつの形、表現方法である。だからこそエルヴィスの自然体の黒さが分かるはずなのだ。つまりエルヴィスはエルヴィスの表現であり、オリジナリティに満ちたプレーなのだ。それゆえに「エルヴィスだけが本物だった」というような賛辞が上がるのだ。
ただひとつ、エルヴィスの歩む道をおかしくしてきた「考え」がこの素晴らしいショーにも一点だけある。それは最後の<メモリーズ>だ。とっても素晴らしいこの曲によってハリウッドらしさを、アメリカのショービシネスらしさを露出した。あくまで個人的な意見だが、悔いが残る。迫真のロックンロール・ショーを”バンド全員が同時に楽器を置いた時点”で終了すれば、よりパワフルだった。しかし映画漬けにされたキャリアとファンサービス精神などがいらないおまけをつけてしまった。
それにしても悲劇である。このぶったまげる歴史的なパフォーマンスを収録したアルバム『TIGER MAN』がそのタイトルから受ける印象のせいか、その内容を知られないままに見過ごされているケースも少なくない。このアルバムこそ数ある中でもエルヴィス屈指のアルバムである。
エルヴィスの至福の瞬間のドキュメントであり、それはロックを愛する人にとって、ファンの垣根を超えて評価されるにふさわしい熱情によって遺された20世紀の至福の音源である。
ここには人が働くことがどんなに素晴らしいか、生きることがどんなに素晴らしいか、熱くなれることがどんなに素敵なのかが記録されている。
尚、この、<BABY WHAT YOU WANT ME TO DO>は最高にカッコいい黒っぽいエルヴィスを集めたアルバム『リズム・アンド・ブルース』に収録されている。こちらもエルヴィスの真実に触れる点で特筆すべき重要なアルバムである。
<BABY WHAT YOU WANT ME TO DO>
Yeah, baby!
Okay, we're gonna hit it.
*We're goin' up, we're goin' down
We're goin' up, down, down, up
Anyway you wanna
Let it roll, yeah, yeah, yeah
You got me doin' what you want me
Baby, what do you want me to do
You got me peepin', you got me hidin'
You got me peep, hide, hide, peep
Anyway you wanna
Let it roll, yeah, yeah, yeah
You got me doin' what you want me
Baby, what do you want me to do
(* Repeat)
Oh it's got a familiar ring. Is that okay?
Yeah, that's good, just -
The waist down.
I didn't even touch myself, isn't that funny?
You gonna get arrested, boy.
Oh, you're gonna go to hell, too. Here come thejudge
. Here come the judge. Why did I stand up for, man.
Oh yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah.
I tell you what you can do. It's a funny line.