エルヴィス・プレスリーの声が懐かしい。それは血の通った人間の声だ。
"Occupation G.I.Blues"一撃の歌詞がエルヴィスの声とひとつになった時、”ロックンローラー”エルヴィスの輝きが勲章以上に光ってみえる。
銃と向かいあい、弾丸に追われている瞬間に、別の場所ではテレビを見て笑っている。友の死に絶唱している瞬間に、別の場所では絶叫している人への恋文を綴っている。
残酷だけど人は他の場所で起こっていることを意識せずに暮らしている。
災害援助ですら悲劇はつきまとうのに、戦争ともなれば果てしない悪夢が続くのだろう。
戦場にいる兵士を思うと、戦争反対ということさえ残酷な仕打ちのように思えて、もう何もいう気さえしない。
狂気の権力者たちの気紛れが腹立たしい。
身体に爆弾を巻き付けた市民を称えるばかりか、それを行えというおぞましい狂気と指示、一体何のため?
1.2.3.4,1.2.3.4・・・。
爆弾を捨て、銃を捨て、故郷に、家に向かって、歩んでくれ、
ブッシュ・キス・キス・フセイン。フセイン・ハグハグ・ブッシュ。できないな。
なんでだろ?
ブッシュ・キス・キス・パワー?フセイン・ハグハグ・パワー?
WHY?なぜに〜い〜?アホらしいが、権力者を認めた民衆はそれ以上に愚かということか。
ああ、あれが自分の鏡と思うとゾッとするが、ゾッとする必要があるようだ。
命の大切さを訴える感動作とPRする後に、むごい暴力映画を面白いと賞賛する。
ニュースキャスターがまじめくさった顔でチクリチクリと言った後に、風俗・低俗大行進の多重人格、マスコミもなにもかも自身の分裂症状に気がつかない。
それこそ人の鏡なのかも。
いやなことは戦争があってもなくても毎日起こる。
それは「人間」が交わって暮らしているから。悲しいけれどそれが事実である。
いくら戦争をくり返しても戦争がなくならないのは、人間に否定する気持ちがあるから。
否定、対立はどこにでも転がっている。雪だるまとなった不機嫌は増殖するしかなく、自分の目の前はもちろん、いつもハートの常備薬である限り世の中に転がり続ける。
だからと言って、洞穴、井戸の中、ツボの中、落ち込んでいるわけにもいかない。
一旦気持ちをリセットして、アップ&ゴー、進まないと自分の生を生きることはできない。
不機嫌爆弾を持っていないか、否定銃を持っていないか再点検、
ただただ無心で生きなよと天の声がする。
プチ〜ン。シ〜ン。
日常のスイッチをオフにした時に、エルヴィスの声がオンになる。オフにした頭とココロに、いま聴こえてくる1.2.3.4,1.2.3.4・・・。
軍が与えてくれた部屋からは
美しいライン河の眺め
軍が与えてくれた部屋からは
美しいライン河の眺め
でも泥と油で濁ったテキサスの
汚い小川がいいんだよ
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
ドイツ風シチューと
黒パンが俺たちの食事
ドイツ風シチューと
黒パンが俺たちの食事
来月の給料が飛んでもいいぜ
テキサス・ステーキが食べれるなら
ヒーローに憧れるのに
来る日も来る日も行進ばかり
ヒーローに憧れるのに
来る日も来る日も行進ばかり
橋から落ちたくらいでは
勲章なんかもらえやしない
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”
うんざりさ
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
花よりきれいなドイツの娘たち
なのに近づくこともできゃしない
花よりきれいなドイツの娘たち
なのに近づくこともできゃしない
だってみんなの胸には
「私の芝生に立入禁止」のサイン
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”、
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
(嘆きが仕事のG.I.ブルース)
嘆きが仕事のG.I.ブルース
(嘆きが仕事のG.I.ブルース)
ハウディ
映画『G.I.ブルース』の同名主題歌<G.I.ブルース>は、タイトルとは裏腹に、軽快なマーチ風のロックナンバー。ブルースの所以は、ブルーな兵隊さんの心情を歌ったものだから。
エルヴィス・プレスリーはアメリカ国民の法律によって、実際に1958年に1958年3月24日、陸軍に入隊、テキサスの基地で6ヶ月の訓練を受けた後、ドイツに駐屯、
月給78ドルで2年間の兵役を持ち前のあたたかく豊かなサービス精神で勤めた。
普通を望み特別な待遇を嫌い、一国民、若者として一兵卒として過ごし軍曹に昇進。
1960年3月5日に除隊している。
除隊後初の映画『G.I.ブルース』はその等身大の姿を全世界に見せようと、実際にエルヴィスが駐屯していたフランクフルトを舞台に、製作され1960年11月23日に公開された。
そのコンセプトはファンのみならず多くの人の気持ちとマッチ、アメリカ人の誇り、安心、共有のアンケート結果であるかのように記録破りの大ヒットとなっている。
アメリカ人はきっと虹を見たようにうれしかったのだ。
オリジナル・サウンドトラック・アルバムは映画公開に先行して10月にリリース、10週連続アルバムチャート・トップの大ヒットとなっている。
チャートイン期間は2年を超える111週で、ギネス大量ホルダーのエルヴィスでも最長のアルバムとなった。
無気味・・・僕は幼い頃、エルヴィスの存在と声(ハートブレイク・ホテル)を何かで見たこと、聴いたことはあったが、その印象は無気味、恐い、ふしだらの印象でしかなかったのだ。
その無気味さは子供には近付いてはいけない雰囲気があって、”成人オンリー”しかも”特殊な人オンリー”の覗いてはいけないモノと決めていた。ところが偶然立続けに見た『ガール!ガール!ガール』『恋のKOパンチ』でのエルヴィスは悪魔でもなく、健康な「普通のお兄さん」だった。
なんとなく知っていた恐い印象とのギャップが急速に接近させたのかも知れない。
いま思うとそれはエルヴィスと能動的に関わることは大人への関門として偶然の必然だったようである。
映画『G.I.ブルース』には入隊前に製作された4作品の無気味なエルヴィスとは全く違うエルヴィス・プレスリーがすでに登場している。演技と歌とも新境地の数々、連発に彩られている。入隊前のファンが、この映画で新しいエルヴィスを見た瞬間というのは、自分の恐怖感からしても、衝撃だったと推測する。
映画の展開は歴史に名高いM-G-Mミュージカルでのジーン・ケリー、フランク・シナトラらの作品のようだし、エルヴィスの笑顔が爽やかなキャラクターも、その線でこちらもスマイル。スマイル。で楽しめるが、ここではしっかりと「エルビス映画」というジャンルへ踏み込んでいる。
ハル・ウォリスのプロデュース、ノーマン・タグロウ監督のアカデミー賞コンビが初めてエルヴィスと組んだ作品ということもあって定石ながらも全編にもっとも映画らしい雰囲気が漂い好感の持てる力強い作品に仕上がっている。
映画の1/3が過ぎた頃に登場するエルヴィスの相手役のジュリエット・プラウズが、アメリカの友人とそっくりなのが個人的には一番楽しめる理由。
そんなことを抜きにしてもエルヴィスの楽曲も、映画の展開もすこぶる快調で、いつ見ても楽しめる。
ジュリエット・プラウズを前にして歌う<いかす買い物>も軽妙ななかにロックンローラー、エルヴィスの本領発揮、ウォーツ、ウォーツ、いよいよ、いよいよという感じで映画の作り方としてもおいしい。
伝説的アニメ『宇宙戦艦ヤマト』のテーマ曲でも知られる佐々木功氏のカヴァーもあって、日本では馴染みの深いタイトル曲<G.I.ブルース>だが、意外にもアメリカではシングル・リリースされていない。
アルバムからは<さらばふるさと>がイギリスでシングルカットされた。
ヨーロッパではドイツ語バージョンがリリースされた。
アメリカでは<さらばふるさと>も1964年クリスマス・シーズンに<ブルー・クリスマス>のB面としてやっとリリースされた。
つまり本国ではアルバム1本勝負だったわけだが、納得できる充実したアルバムになっている。
ジャケットも内容も時の流行りを超える力が最初からあって素敵だ。
<G.I.ブルース>のシド・テッパー、ロイ・C・べネットの作者コンビによる。
ここではタイトルはいかさないけれど、曲はいかす<いかす買い物>を提供しつつも、『ブルー・ハワイ』では大量ファン獲得の<ハワイアン・サンセット><愛の島>などなど。
『ガール!ガール!ガール!』では<壁の耳には聞こえない><似合いのカップル>などなど。なんとそれぞれ。それぞれ。に5曲も提供している。
<G.I.ブルース>は劇中、懐かしや、お帰りキング!稀代のロケン屋仲間、スコテイ・ムーア、D.J.フォンタナのバンドとともにお披露目される。
歌詞はホームシック、シクシクにかかった兵隊さんの心情、サウンドはゲンキが出るマーチ風ロックナンバー。
嘆きが仕事の”G.I稼業”といった内容だが、きちんと兵役をつとめ、軍曹に昇進したエルウ゛ィス・プレスリーゆえに歌になり、絵になっている。
裂け目を疾走するエルヴィスの真骨頂、絶妙のバランスが声のバランスで2乗4乗されてエルヴィスらしい。
クロージングのシャウトになんともいえない哀愁の一撃が爆発。泣け泣け、
こんな泣き節ならミルクカウだってモーたまらんと、早く帰っておいでと、ステーキに身を捧げる。
オジジ、オババが幸福な国は素晴らしいが、若者も幸福な国はもっと素晴らしい。
「エルヴィスを大統領に!」と言った人たちが一番健常人だったのかもしれないと思うこの頃。1.2.3.4,1.2.3.4・・・。が胸を叩く。
エルヴィスの背中にかくれんぼ。
もういいかい?まあだだよ。もういいかい?・・・・。
エルヴィスの声が消えて、意向を尋ねるわけでもなく、新しい瞬間が出迎える。
楽しい時か、残酷な時か、分からないけれど、スイッチをオンにする。
新しいココロで始めることができる。
G.I.ブルース、ラジカセ抱えて、「FUCK YOU!」逃げ出してしまえばいいのに。すべての兵士よ。逃げ出しなよ。とつぶやきながらも、逃げられない世界に向かう。
エルヴィスが背中を押し続ける。1.2.3.4,1.2.3.4・・・。
They give us a
room
With a view of the beautiful Rhine
They give us a room
With a view of the beautiful Rhine
A gimme a muddy ole creek
In Texas any ole time
* l've got these hup two three four
Occupation G.I.Blues
From my G.I.hair
To the heels of my G.I.shoes
And if I don't go Stateside soon
l'm gonna blow my fuse
We get hasenpfeffer
And black pumpernickel for chow
We get hasenpfeffer
And black pumpernickel for chow
l'd blow my next month's pay
For a slice of Texas cow
We'd like to be heroes
But all that we do here is march
We'd like to be heroes
But all that we do here is march
And they don't give the Purple Heart
For a fallen arch
* Repeat
The frauleins are pretty as flowers
But we can't make a pass
The frauleins are pretty as flowers
But we can't make a pass
Cause they're all wearin' signs sayin'
"Keep it to your own grass"
* Repeat
(Occupatlon G.I.Blues)
Occupation G.I.Blues
(Occupation G.I.Blues)
Howdy