不況日本。まだ30代前半の知人の女性が、自身の内なる声に従い自分を精一杯信じて会社を起こした。
お祝にわずかばかりのお金と壁飾りを贈った。
彼女はいよいよ困った時までお金は使わずに、それまで大事に壁飾りに中に入れておきますとメッセージしてきた。誰からも愛され有能、特異なキャラの彼女にそんな局面は来ないだろう。
それにしても人には浮き沈みがある。
浮き沈みとその裏側を描いたミュージカルを映画化した『シカゴ』は気持ちがよかった。
これだけのものを作れることに”国力”を感じる。かって『風と共に去りぬ』を戦後見た日本人が「こんな映画を作った国と戦争したのか」と驚いたというが、その気持ちが分かる。
アカデミー賞をゲットしたキャサリン・ゼダ=ジョーンズの踊り歌うそのまなざしに意志のかたまりのような女性の様が表現されていて、おもわず拍手しそうになった。ここは映画館だと自制することたびたび。リチャード・ギヤも素敵だったが、レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼダ=ジョーンズの女性2人に喰われて圧倒され通しの感じはある意味微笑ましくもあった。
もっとも当人たちはいずれも高額のギャラに見合うプロの約束を達成、それ以上を見せようと日々懸命だったと思う。
『監獄ロック』『68年TVスペシャル』を彷佛させるシーンに胸騒ぎは頂点に、
やはり拍手したい気分になってしまった。
それにしてもエルヴィス・プレスリーは、そのキャリアの大半をこのような俳優、歌手などのいわば頂点に立っていたわけだと思うと、その偉大さにはあらためて敬服する。
しかもおそらく彼、彼女以下の努力でもって!というと反発するファンもいるだろう。
確かにオン・ステージひとつとっても、バンド、コーラスなどとの音合わせにしても冗談たっぷりに余裕のシーンを見せる。しかしボクはその場面は練習全体を考えれば、極端な誇張であると思っている。
あれだけのステージはあんな軽いお遊びのような練習で、とても出来るはずがないし、いかに温和なエルヴィスであってもビシバシやっていたと思う。厳しい言葉を投げかけたかどうかは別にして、そのプロ魂を周囲が敏感に感じながら、ステージめざして調整をしていったと想像する。
しかしそれでもエルヴィスが彼、彼女以上の努力をしたとは考えにくい。それほどエルヴィスは巧かったし、サム・フィリップスが語るようにラジオから流れたきた曲を次々にマスターしてしまう集中力。
天才の能力に加えたところの磨きをかけた歌心、なにより人生観から育まれた独特の強い個性。
加山雄三は「ギリシャ彫刻のようだった」と会った時の感想を語っていたが、それは外面と同時に発散される人間として内面の深みも表していたのだと思う。
エルヴィス・プレスリーは、血へどを吐くような凄まじい『68年TVスペシャル』と比較してみても分かるように、キャリア全般を見渡すと、世間一般でいう「努力」という意味では努力は少ないように思う。誤解しないでもらいたい。
決してノホホンと暮らしたわけではない。違う努力をしてきたと思うのだ。それはほとんど世間では努力として認知していないものかも知れないが。
授業中に先生の話すことに集中し、黒板やテキストに集中する。これが世間でいう典型的な努力のあり方だろう。一方、グズと呼ばれたりする人は、目の前のこと、いますぐするべきことに集中せずにボーッとしている間に時間が過ぎてしまって後でバタバタ、間に合わない、理解できなかったというようなことが起こる。結果は明白。
だがこのボーッとしている間、何を考えているのだろう?とりとめもないこと?かも知れない。だが関心事を主にして、決してムダではないはずの時間。ただ形にならないだけなのだ。
形にならないものをひろいあつめて、とっても素敵な形にしてくれるのがアートだと思う。
エルヴィスは彼のアートでアメリカの芸能の頂点にたった。
そのことを世界はもっと真摯に受け止めるべきではないだろうか?
集中できない人が世界にはたくさんいて、その結果、自分を卑下している。
でも彼等は目の前のことに集中できなきくても、離れた何かに集中している。
離婚した両親、ドアを叩く借金取り、酔っては暴力をふるうアルコール中毒の親、自分を虐める同級生−−−不安が頭から離れない者が目の前のことに集中できないのは無理のないことだ。エネルギーの大半がそこに注がれて、もう残っていないことだって少なくない。
しかしくり返しくり返し考える何かを通じて、得難いことを学んでいることも多い。彼等の努力が、もっとも一般に称賛される努力と形が違うだけなのだ。
サイトを運営していると恋愛や人生など身の上相談が結構舞い込んで来る。相談を投げかけていただくまでに信用していただくのは、ありがたいことだ。エルヴィス・ファンは年令も高く、ほっこりさんが多いようなので、こんな相談は来ない。ただいま人生格闘中の相談は、リアルな叫びを歌う椎名林檎のページやその他のページを通じてのものが多く、送られてくるメールの主も銀行の支店長、大企業のサラリーマンから女学生までさまざま。
「ここの書いてあることは自分の姿・・・以前から何とかしょうと思いながら解決できない」というようなものから、メルマガ購読希望者には「汚点を残した。ここで鍛え直そうと思いますのでよろしくお願いします」と可愛いものまで。
特に電話での相談の場合は切羽つまった印象が強い。
余程なのだ。勇気を持って電話をするのも、そこまで思いつめたからだろう。
対処していてその挙げ句仕事の約束に遅れたことも何度か。それでもしばらくして「学校に入りました。一から出直して頑張ります」と失恋からリセットしなおす連絡をいただいたりするとホッとする。
しかし「慟哭」の声が電話の向こうから聞こえる時、「地獄」がそこにあると思う時、一体どうしてこの現状を突破するのだろうかと、その無常、日常に潜んでいる狂気に情けなくなることがある。ドラマの脚本を超える残酷。わずか20歳そこそこで崖から落ちていくしかないような時に、どんな言葉も虚しく思う時がある。だが、多くの人は、そんな局面にあっても自分の生を思いきりピカピカさせてみたいのだ。
どのような言葉でもっても解決しない問題をクリアしてしまう力が音楽にはある。
悩んでいる最中に「音楽でも聴いたら」というと「馬鹿にしないで」となるだろうから、そんなことは言えない。
しかしボクは音楽にはその力があると思う。
疲れてクタクタなときに風が優しく撫でるかのように、音楽は人の気持ちを撫でていく。
それは形にならない心をひろいあつめたアートだからと思う。
キース・リチャーズは「どんな音楽も素晴らしい。
ひとりでも聴いてくれる人がいる限り価値があるのだ」と語っている。その通りだと思う。
そこにはくり返しくり返し考えながら、ひろい集めた不揃いのバラバラに飛び散った人間の思いがあるのだ。
ボクはオルゴールのメカニズムを分析するように音楽を分析したくない。
特にエルヴィスは、そんな風に聴きたくない。
プロのミュージシャンでもないボクにとって音楽は風のようなものなのだ。
エルヴィス関連本もほとんど読まない。
拾い読みして途中で止まったままのもがほとんど。どれも真実でないと思うから関心が高くならない。
でもエルヴィスのことを考える。知識もないのに、自分の頭で考える。
可能な限り「原理原則」を使って考える。
その結果正しいのかどうか分からない。
でも近づいている気がする。繰り返し考える。
メンフィス。サン・レコードの前に立った時に、言い様のない思いがした。写真を撮ることが出来なかった。
そのドア・ノブに触ることも出来なかった。
テュペロの生家も、グレイスランドも、リサと命名した飛行機も、撮影したし、中にも入った。でもサン・レコードは屋根のマークを撮るのが精一杯だった。中に入ることができなかった。
”サン・レコード”それはボクにとって特別な場所。
エルヴィスが自身の三つ子の魂を引っさげて人生に突撃した場所なのだ。
誰でもどこかでうまれる。誰でもどこかで死ぬ。
そのことに特別を感じない。
それはすべての人間に起こる受け入れるべき事実であり、受け入れるのがその生への畏敬の念を表す礼儀だと思う。
でも誰もが人生に突撃するわけでない、できるわけではない。
誰もが自分を信じることができるわけではない。自分の内なる声に耳をふさぐのが大半なのだ。
”キング・オブ・ロックンロール”という言葉にこだわる。
エルヴィスは、ほとんどの人が努力と考えないところで、物心ついた頃から凄まじい努力をした人だと思っている。
エルヴィスのようにほとんどの人が努力と考えないところで、程度の違いはあれど努力している人が実は世界にはたくさんいる。しかし、ほとんどの人が努力と考えないから自分でも努力と思わない。
そしてその努力の結果を自分でも認めずに使うこともしないまま、「グズ」になっていく。
本当はそんなラベルを貼ってはいけないのに。
エルヴィスは、自分の内なる声に耳を傾け、自分を信じた。自分の努力を信じた。
そして人生に突撃して、世間でいう努力する人を遥か超えて成功した。
”キング・オブ・ロックンロール”その素敵が分かるかい?
どうか、エルヴィス・プレスリーを小さくしないでください。
君からの手紙を読みながら
ああ、君のことを想う
かつては甘くひびいた文面から
二人の色あせし恋を思い出す
★日をおうごとに君が恋しいよ
まるで空が星を恋しがるように
今でも君を心から想い
二人の色あせし恋をなつかしむ
分かち合った幸せを思い出し
ハトの求愛を見ていると
あれは春だったね、君がさよなら告げたのは
二人の色あせし恋がなつかしい
くり返し★
覚えているよ、二人の色あせし恋
覚えているよ、二人の色あせし恋
”色あせし恋”なのに、エルヴィスの声と、そのアートで、世界が色づいていく歌だ。
ぶっきらぼうにして、粗っぽいまま、色あせた恋をぐいぐい引っ張り回すエルヴィス。ホーンが熱い。カントリー・スイングの快楽に、マッチョな電撃ギターが絡みついて、信じられないことが起こる。ロックンロール、カントリー、ゴスペル、バラードと分ける意味等どこにもない人間のための生きた音楽。悲しみこそこの世の贅沢と言わんばかり、脳がねじれそうな恍惚。どこかにチャック・ベリーが入り込んではしゃいでいないかと思うようなフルカラーの音模様。色塗れと言うより先に、色づいていく。失恋した絶望など続かないことを知らせるように、驚いたことに歓喜の絶頂に向かってだ!!
手拍子を打て。人間が集まって、素晴らしいことをしているのだ。ここには人間の底力という宝物がある。
エルヴィス・プレスリーという記号の集合体である偶像ではなく、人間と分かち合うために、エルヴィス・プレスリーという人間の知的で肉体の回路の隅々から爆発してくる高潔な生身のアートがある。人間さまは色あせたりしないのだ。
涙も怒りも喜びさえも、超えていけ、超えていけ、きっと素敵な風が吹く。それは人間が大いなる自然界とひとつになって慟哭すら打ち負かす風だ。それは人間のミュージシャンが作った音楽にできる最高に素晴らしいことだ。
As I read the letters oh, that you
wrote to me
Well, it's you, it's you I'm thinking of
As I read the lines that to me were so sweet
l remember our faded love
* I miss you, darlin', more and more everyday
As heaven would miss the stars above
Wilh every heartbeat I still think of you
And remember our faded love
As I think of the past, all the pleasures that we had
As I watched the mating of the doves
It was in the spring time that you said goodbye
I remember our faded love
Repeat*
I remember our faded love
I remember our faded love
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さあ、行くぞ。
『愛ピの今週ノおススめ』
怒濤の極楽ムービー!
パラマウント映画
8連発だ! |