エルヴィス・プレスリー主演のパラマウント映画のものが2002年に4タイトル『闇に響く声』『G.I.ブルース』『ブルー・ハワイ』『青春カーニバル』がDVD化された。そして今年、さらに4タイトルが7月25日に発売予定だ。
今回は『ガール!ガール!ガール!』『アカプルコの海』『ハワイアン・パラダイス』『GO!
GO! GO!/ゴー・ゴー・ゴー』がリリースされる。
DVDにはうれしい予告編の特典つきだ。(作品によって収録されていないものもあるので注意。)予告編はDVD『キング!エルヴィス」にも収録されていたが、なぜかモノクロだったのが残念。今回はもちろんカラーだ。
DVD発売元パラマウント
ホーム エンタティメントではパラマウント・ハッピー・プライス・キャンペーンを展開中。『闇に響く声』『G.I.ブルース』『ブルー・ハワイ』『青春カーニバル』の4タイトルも対象になっているのでお買得。こちらは2500円(税抜)だ。同じく対象のジョン・フォード監督『リバティ・バランスを射った男』も個人的にはおすすめ。
その8タイトルを8週連続で『今週ノおススめ』でピックアップ。
第1弾として選んだのが、『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』だ。オープニングは『ブルー・ハワイ』か『G.I。ブルース』が妥当かと思案。しかしエルヴィス映画とは何か?!という本質に迫ろうと鬼っ子愛ピエロとしては、その課題を鮮やかに浮き彫りにした本作こそ妥当と判断した。
『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』は愛すべき映画であり、エルヴィス・プレスリー主演の最後のパラマウント映画。つまり数々のエルヴィス映画を世に送り出してきたハル・ウォリス・プロダクション製作の作品だ。オープニングの軍艦から降りるシーンでは、「これぞ!ハリウッド」の香りがしてワクワクする。
パラマウントのものはエルヴィス主演の映画では、一番上等というイメージがずっとあった。その次がM-G-M。その理由は多分、パラマウントのエルヴィスがスマートだったことと、上映館がその時期、時期の目玉作品をロードショウしていた劇場であったこと。その2つの理由にある。それは配給会社の問題なのだろうが、パラマウントのものは東宝系、M-G-Mは松竹系、ユナイトのものは、どちらかというと「ボケ役」が多く、上映劇場も先の両社より落ちる印象があった。20世紀フォックスのものは劇場で見た記憶がない。かなり遅れて日本で上映された『監獄ロック』は劇場公開当時見ていないが、大映配給でいきなり2本立の記憶がある。
ただしこれらはあくまで自分のあてにならない印象と記憶で正確な根拠は何一つないので、間違いかもしれない。
ともあれ『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』はロードショーで見ていなかった。ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードの『スティング』と二本立で”名画座”で鑑賞した。
さて、ボクは「サラリーマン」の方によく「あなたは何のためにその会社に勤務しているのですか?」と質問する。
「生活を営むため」という自分の目的は別にすると、「商品を売るため」「お客さまに喜んでいただくため」「さあ、なんでしょう」と様々な返答を耳にする。この様々が企業経営の混乱の原因である。ボクの考えでは理由はひとつしかない。「トップのやりたいことを実現するため」その1点である。
そのために雇用されているはずである。「商品を売るため」「お客さまに喜んでいただくため」はそこから派生した枝葉であって、本来ではない。そしてトップのやりたいこととは事業計画によって表現されているものである。
こいつはまたしても何を書いているのか?とお思いの方は多いと思う。ボクがいいたいのはエルヴィスは、ハル・B・ウォリスのやりたいことを実現するために呼ばれた男であるということ。
そしてエルヴィスがその映画でやるべきことはハル・B・ウォリスのやりたいことを、ハル・ウォリス・プロダクションのスタッフ、共演する俳優たちとの分業によって実現することにあるということだ。
つまりエルヴィス・ファンなら、エルヴィスの評価は、エルヴィスが自身の分担すべき職務を達成したか、どうかによって行うべきであって、映画がよかったかどうかの最終は、ハル・B・ウォリスの責任であるということなのだ。
この点をエルヴィス映画を観る基本として押さえておきたい。
そして本作ではエルヴィスは「作品の出来栄予測」をめぐって監督ジョン・リッチと口論に至っているのだ。ジョン・リッチとは『青春カーニバル』でも分業した間柄。エルヴィスは自分の責任、つまりハル・B・ウォリスの願いを全うすることに燃えていたのだ。その意欲はバラエティ誌などで「エルヴィスは巧い役者だ」という称賛で掲載されている。エルヴィスは好調だったのだ。
さて、この『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』ハル・ウォリス・プロダクション製作のエルヴィス・プレスリー主演映画としては異色作である。
これはエルヴィス映画でない!これは『エルヴィス版ゴジラ対キングコング』である。(バタッ!)
この映画のすごいのはサブ・カルチャーのキング、エルヴィスがカウンター・カルチャーと激突。エルヴィスがカウンター・カルチャーの傍観者として走り回っている点だ。
ハル・B・ウォリスが指揮をとってきたエルヴィス・プレスリー主演映画は一貫して、サブ・カル・キング、エルヴィスをバ〜ンと前面に押し出し、そのままハワイやアカプルコ、あるいは軍隊に投げ込んで、エルヴィス・プレスリーあるいはロックンロールという若者文化のそれらを切り取ってみせるもので、絶対的な主役を期待され、それに応えてきた。それが”エルヴィス映画”のたまらない豪華絢爛の醍醐味であり、エルヴィス映画というジャンルを成立させている条件なのだ。それを築いたのがハル・ウォリス・プロダクションの作品だ。
しかし、1966年製作の『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』では異変が起こったのだ。
ヒッピー、コミューン、前衛アート、フラワー・ムーヴェント、サマー・オブ・ラブ・・・。公民権運動からベトナム戦争へのうねりに端を発したカウンター・カルチャーと、その風を受けてとんがっているガール・・・いままでとんがっていたのはエルヴィスだったのが、なんと入れ替わっているではないか!エルヴィス映画に出てくる定番の脇役である金持ちのバカ娘ではない、我が道を往く突っ張りガールの出現なのだ。おかげでエルヴィスは『青春カーニバル』や『ガール!ガール!ガール!』でのとんがり返上して「まる」。
海洋アドベンチャーという形をとりながらも、人間のバカさが生んだ「カウンター・カルチャー」対長い歴史と自然な営みから発生した「サブ・カルチャー」の対決がこの映画の魅力である。
21世紀のいまや死に体となったサブ・カルチャーの概念は50年代にロックンロール、ビート族、黒人など、小集団、マイノリティーの特有の文化が社会的な階層とリンクしたところからマス・カルチャーを上位、サブ・カルチャーを下位文化としてとらえたもの。
エルヴィスはサブカルチャーの先駆者であり、当時真新しいマーケティング用語であったティーンエージャーという概念とともに、サブカルがサブカルとして光り輝き、その使命を真実全うしたもっとも素晴らしい事例である。
一方カウンター・カルチャーはマスへの対抗文化だが、いまではサブカルチャーの1要素である世代間対立と合流してサブカルと同義語になってしまった。その微妙な波間に泳ぐエルヴィスが本作では楽しく、エルヴィスの「サブカルト映画」として愛ピのお気に入りの一本なのだ。
ジェリー・ルイス、ディーン・マーティンの底抜けシリーズの生みの親であるハル・B・ウォリスは昔ながらの大衆文化を脅かす新興カルチャーに遂に面倒くさくなって、気楽にいこうぜとばかりに、エルヴィスごと海へ投げ込んでしまったのかと思うのだが、どっこい沈んでたまるかとペンギンと間違えるほどのエルヴィスの頑張りに、「沈まないよね。キッキッキィ」と深夜にビデオ見ながらひとりこっそり喜んでいる次第なのだ。
ハル・B・ウォリスの願いは達成しますぜと走るエルヴィスだが、エルヴィス陣営は楽曲でエルヴィス・プレスリーをバックアップ。もうほとんど高田純次化してしまったエルヴィスのすごさは反戦を超えて無戦状態、天晴れ、無敵。
ダルマも驚く<ヨガ修行>、水兵さんの興味はスリーサイズだけとやってしまう<恋のルーレット>"Sing
You Children" フラワー・チルドレンも青ざめる<みんなも歌おう>、"I'll
Take Love" 取るならなにより恋、ベトナム戦争をアッチのおいて決定的な<恋がいい>・・・みんなまとめて<気楽にいこうぜ/Easy
Come , Easy Go>。
1966年9月12日のクランクイン。
なにしろアメリカがカンボジア侵攻した後だ。国内では、白人若年層のモラル低下が著しく、ハイウェイと共に成長して来たアメリカのシンボルともいえるロードサイド・ビジネスの典型であるドライブ・インが相次いで閉鎖に追い込まれるほど治安が悪くなり、ベトナム派遣拒否兵裁判、黒人暴動など暗雲が覆っていた。中国では文化大革命が起こった。
公開オープニングは反戦デモが全米各地に吹き荒れる67年3月22日だった。
その最中にこれですから、『GO! GO! GO!/ゴー!ゴー!ゴー!』・・・これほど過激な反戦活動はないカモ〜ン!?これがブッシュ政権だったらグレイスランドにミサイル撃ち込まれたカモ〜ン!?
気楽にいこうぜ
得やすいものは失いやすい
どこもかしこもそこらじゅう
あたりはいかれた愛だらけ
夜の、mmm,夜のとばりがおりる
どこの港にも溢れる娘たち
だけどすべてはおまえさん次第
グズグズしてたらとっ捕まるぜ
Oh year,oh yeah
*得やすいものは失いやすい
北も南もそこらじゅう
町から町ヘキッスの嵐
おいしいよ、mmm,栄養満点
気をつけな、あせらずにそうさ、
得やすいものは失いやすい
女の子をひっかけたい時は
なんと言っても軍服か一番
どんな嵐もへっちゃらだい
あの娘からの風当たりが強くとも
*くり返し
気をつけなよ、あせらずに
そうさ、得やすいものは失いやすい
得やすいものは失いやすい
得やすいものは失いやすい
得やすいものは失いやすい
得やすいものは失いやすい
得やすいものは失いやすい
Easy Come , Easy Goの意味は「悪銭身につかず。」
ベストセラー・エッセイ「アホでマヌケなアメリカ白人」の著者であり、映画監督のマイケル・ムーアがアカデミー長編ドキュメンタリー賞をゲットした自作『ボーリング・フォー・コロンバイン」で狂気を記録した映像に対峙する人間の声としてルイ・アームストロングの<ワンダフル・ワールド>を持ってきたように、エルヴィスは狂気の時代を歌い飛ばして痛快、ペンギン遊びなのだ。さすが、サブ・カルのキング!<おしゃべりはやめて>の大ヒットで思い知らされた凡人を超えた超感覚と先見性がここでも光っているのだ。
画像がきれいなDVDで、エルヴィスと海底散策しながら、宝さがし。隠し味である奇跡の連続性?にも驚かされるぞ。間違い探しの発見はDVDならではのお楽しみだ。
さてあなたは何を見つけるかな?
「エルヴィス映画とは何か?」を考えたり、おちゃめでカッコいいエルヴィス・プレスリーの新境地再研究は楽しい。
共演はドディー・マーシャル、パット・プリースト、パット・ハリントン、アカデミー賞に2度ノミネートされたエルサ・ランチェスター(マダム・ネヒーリナ役)や本作が遺作となったフレッド・マクヒューらベテランが重みを加える。
イギリスでは6曲入りEP盤から<恋のルーレット/ストップ>がシングル・リリースされ、チャート・インした。黒ずくめのエルヴィスはやっぱりかっこいいぞ!
本作はエルヴィス・プレスリーその人、エルヴィスが活動していた社会状況などをある程度理解したエルヴィス上級者向けといえる。
エルヴィス初心者には、次回からご紹介する『ブルー・ハワイ』『アカプルコの海』『G.Iブルース』などから入るのが愛ピのおすすめ鑑賞法。
モノクロだが『闇に響く声』は先取の精神をもった若い方には、エルヴィスが好き嫌いを超えて、是非見ていただきたい作品だ。きっと何かを得るはず!
GO!
GO! GO! /ゴー!ゴー!ゴー!
商品番号 PDA-170
販売価格 3,980円(税抜)
DVD発売元 パラマウント
ホーム エンタティメント
7月25日発売予定
■英語音声:5.1ch サラウンド ■片面1層
■復元版(英語):モノラル ■字幕:日本語/英語 ■複製不能
■カラー
■94分(本編)
■スクイーズ16:9(ビスタ)
DVD 問い合わせ先
電話 03-3486-5885
パラマウント ホーム エンタティメント ジャパン株式会社(マーケティング部代表)
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