ブルー・ハワイ
BLUE HAWAll
ディスニーの『リロ・アンド・スティッチ』がようやく公開された。アカデミー賞作品賞候補にもなっている。
一方でキースとミックがやってくる。
ロック一筋、還暦を迎えたと言う。転がり続けて前人未到の偉業だ。称えずにはいられないから、心にシャンパングラスを用意して、コンサートに出かける。なによりキースがそこにいる空間に身をを置くのは幸福だ。
「おれたちもやっていいんだ」とキースが思ったようにR&Bへの道を開いたのはエルヴィスだ。思えばエルヴィスはもともとポップな存在というよりはヘビーな存在だった。
第二次世界大戦に勝利し、繁栄をものにしていたアメリカ人の表面の明るさとは裏腹に、広島・長崎への原爆投下による圧勝は、裏を返せば恐怖と虚無の世界を自国民に思い知らせ、冷戦の構図は勝利した父や母から自信喪失にも誘導した。
エルヴィス・プレスリーはそんな息子、娘たちに支持された。
軽々とバリアを超えて行く姿は、音楽を超えて勇気を与えたのだろう。
ジョン・レノンは、「あの瞬間から生き方が変わった」と語り、ボブ・ディランは「脱獄した気分だった」と語る。
彼等がどのように語ろうが、日本人にはこの興奮は分かち合えないのだろうと思う。エルヴィスを聴いていた背景があまりにも違う。それを無理に理解しても意味のないことのように思える。なぜ?エルヴィスなのか?『リロ・アンド・スティッチ』に於けるエルヴィスの存在感は、到底理解不可能なのだ。
ジョン・レノンやボブ・ディランが感じたそのヘビーな感覚は料理にたとえたなら、重量級の本格料理だ。
とんでもない料理を開発した一流の料理人が、自らファストフードにして、誰でも簡単に食べられるように、作り直したのが「エルビス映画」である。ハル・ウォリスというプロデューサーの案であったにしろ、「なにもそこまでしなくても」という思いはいまもって消えない一方で、これこそがアメリカという国の素敵なんだと思える。
ミック・ジャガーは「ジャンク・フード」は絶対に口にしないと語る。あれだけ激しいパフォーマンスを還暦を迎えても行えるのは、彼らローリング・ストーンズについて離れなかった「ドラッグ&セックス」の印象とは裏腹な健康管理の賜物であり、健康優良児の見本である。
しかし身体に決して良くないはずのジャンク・フードによってのみビーフを食べられる人がたくさんいる。読み書きもできない人も多くいる。時給200円程度の人々が、それでもあの国で人間としての暮らしを保障されながら暮らしていけるのは、そういう食べ物であったり、それを供給する企業が数多くあることである。健康と引き換えに心の充足を満たしているとは淋しいが、なにもないより幸福であることは間違いない。
ある冬の日のロスアンゼルス、早朝。スーツを着たひとりの男性がホームレスの男性を手招きした。何用かと怪訝な表情のまま、近付くと、ハンバーガー・ショップに連れて入った。銃弾が飛ぶ一方で、これもアメリカの真実である。
もちろんきれいごとばかりではない、企業犯罪もある。
それでもウォル・マートがエブリデー・ロープライスをコンセプトにあらゆるものを取り揃えられるというのは偉業である。
このような小売業は社会システムの違いからまだ日本に存在しない。そこには安く供給しなければならない環境と、安く提供しょうとする叡智が生み出した産物が機能している。戦争はひとときの悪夢、片方で柔軟な社会の魅力が世界を魅了しているのも事実である。
エルヴィスはジャンク・ムービーで世界に人々に、超えることの素晴らしさを教えてくれた。
アメリカ南部の脂ぎった音も大平洋の水に浮かせば魅惑のハワイアンになったし、スパイスのようにロックンロール、リズム・アンド・ブルースが多種多様な音楽に使われた。それはまるでなにもかも超えようとする魔法の粉のようだった。
超えるべきものは、世界中に氾濫しているが、「超える」という自意識を超えれば、すべて超えていけるのだと、エルヴィスはその生涯で語っていた気がする。
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『リロ・アンド・スティッチ』は地球人と宇宙人の垣根を超えて家族になる物語。
背中を押すのは互いの孤独と思いやり。6才の女の子が<ハートブレイク・ホテル>を口ずさむ感情は痛みが爆発して強烈だ。アニメといえど、リロにはエルヴィスの魂が息づいている。
使用された楽曲はいずれもストーリーに絡んで、いわゆるBGMになっていないのがうれしい。残念なのは字幕が出ないこと。ただエルヴィスの歌が響いているわけではない。エルヴィス・ファンならニンマリするであろう、場面にマッチした見事な曲の使い方が曲の意味を知らない人に伝えられないのが残念。<本命はおまえだ><悲しき悪魔>など拍手喝采したいほどツボにはまっている。
<好きにならずにいられない><バーニング・ラブ><アロハ・オエ>がエルヴィス以外のアーティストによって歌われたが、いずれも楽曲が話を語っていて巧い使い分けだ。
BGMらしい使い方をされているように思われそうな<ブルー・ハワイ>でさえ、この一曲と場面でここはハワイ、恋人たちの島のダメ押しだ。曲は同名映画の主題歌。エルヴィスとロックをファスト・フード化したエルビス映画の中でもターニング・ポイントになった作品から選ばれた。
月の光と波の動き、ウクレレはそれを形にしたようで、果物の色と香り、多彩な姿と色の魚たち、命の尊さと、なにものにも動じない雄大な自然、フラダンスはハワイという島と家族する人間の知恵のようでもあり、それらを集約したのがアロハ・シャツのようでもある。
アロハ・シャツはこの島に鍵をかけずに暮らす者の家族着であり、アロハを着たエルヴィスの写真とアロハを着たスティッチがすでにリロには家族になったことを意味しているようである。
さすがにディズニー作品、エルヴィスが何だったのか、ツボを抑えた品質の高さは、畏敬の念がにじみ出ていて爽やかだ。
ディズニーとエルヴィス・・・ピース印のスマイルなアメリカが世界に誇る最強タッグである。
ホワイト・デーのデートには、この映画はイチ押し!
最強タッグの応援を受けて、「ボクたちも家族になろうよ」を言ってあげたら?
夜と君とブルー・ハワイ
今宵はまるで夢のよう
そして君は僕の天国
美しい君とプルー・ハワイ
これほど素敵な場所ならば
きっと愛も芽生えるはず
*おいでよ、僕と
月明かりが海を照らす間に
今宵、そして僕らの恋も
たった今、始まったばかり
夢が叶うブルー・ハワイ
今夜、僕の夢もすべて叶う
君と過ごす魔法の一夜
*くり返し
Night and you and blue Hawali
The night is heavenly
And you are heaven to me
Lovely you and blue Hawaii
With all this loveliness
There should be love
*Come with me
While the moon is on the sea
The night is young
And so are we, so are we
Dreams come true in blue Hawaii
And mlne could all come true
This magic night of nights with you *
* Repeat