エルヴィス・プレスリーの音楽
エルヴィス・プレスリーのDVD
エルヴィス・プレスリーの本
まずはできれば<天の主を信じて>などを厳かに聴いていただけたら思う。
その上での2003年一発目の<今週ノおススめ>であります。
元旦であるからして、初日の出を拝むのが一般にあるべき姿なのだ。
しかし中にはこういう奴もいるのだ。「お日様?そんなもの、どうだっていいぜ!」
<お日様なんか出なくてかまわない>は1949年のディズニー映画『シンデレラ』のために作られた楽曲。映画には使用されずにいたが、パティ・ペイジが1950年に録音。TOP100で8位にチャート・インした。
エルヴィス盤はサンレコードで<今夜は快調!/Good
Rockin' Tonigh>のB面としてシングル・リリースされた。
デビュー2枚目だが、前作<ザッツ・オールライト><ブルームーン・オブ・ケンタッキー>以上にロッカー、エルヴィスの輪郭が鮮明だ。
以前、それも比較的最近に書いたことだけど、エルヴィス・プレスリーほどまっすぐに歌っている人は少ない。テクニックを用いず、それでも他の誰のパフォーマンスよりも胸を打つものが多い。
大半がそうなのだが、それではハートで歌うから努力は不要かと言うと、それほど単純でなく、明らかに努力がほどこされているのはアウトテークを集めた『エッセンシャル・シリーズ』を聴けば明らかである。特に50年代のエルヴィスのそれは情熱と意志に塗りたくられていて、聴きごたえがある。
エルヴィス自身は決して『エッセンシャル・シリーズ』などは出してほしくなかっただろうが、エルヴィスが努力と工夫の人であることを証明する意味では貴重な記録だ。
<愛しているって言ったけ>などが顕著な例だと思うが、最初はエディ・コクランかと思うほどだが、同じテークの途中からエルヴィス色に染まっていく。何回目のテークではすっかり変わってしまっている。
エルヴィスは試行錯誤する間に自分の現実と空想と架空を交叉させ、その中からもっともふさわしい”エルヴィス・プレスリー”を見つけてくる。
見つけたら最後、楽譜のなかに置くのではなく、思いきり奔放に音楽の中に投げ込み躍動させる。
音楽の激流の中で誰にも邪魔されずに”エルヴィス・プレスリー”は自分の神に心を開いているようである。
同じようなことが数々の曲で伺える。
歌も伴奏も最終的に選ばれたテークとあまりにも違いすぎるものが珍しくない。
完成されたものへまとめていく姿はエルヴィス・プレスリーの真実を語っているだけでなく、エルヴィスと彼等がチームであったことを証明している。
それはサン・レコードのオーナー、サム・フィリップスの躾であり、サム・フィリップスの流儀だったのかも知れない。
その意味で<お日様なんか出なくてかまわない>は、サンで録音した楽曲の中でも特長のない仕上がりで、「標準」レベルに留まっていて物足りない気がする。
しかしエルヴィスにもサムにもこれで十分だったのかも知れない。
逆に言えば他の曲があまりにも凄すぎるということである。と言うものの叩みかけるように一途にドライヴするエルヴィスならではの強い声と熱さで彩られたパフォーマンスはこの歌詞のままである。
愛はお日様とどこかに行ってしまったようで、ここではひたすら熱くただただ夜に向かっている。
ガラスの靴でも柔らかな足に変えてしまいそうな勢いである。
エルヴィスは聴きやすいパフォーマンスで楽しませる。
* Well, I don't care
if the sun don't shine
l get my lovin' in the evening time
When l'm with my baby
Well, it ain't no fun when the sun's around
l get going when the sun goes down
When l'm with mu baby
** Well, that's when we're gonna' kiss and k kiss
And we're gonna' kiss some more
Who cares how many times we kiss
Cause at a time like this, who keeps scores
and kiss and
* Repeat
** Repeat
* Repeat
And it don't matter if it sleet or snow
A drivin's cozy when the lights are low
When l'm with my baby
Makes no di~erence if the rain comes down
l don't notice when she's around
Oh boy, what a baby
*** Well, that's when we're gonna' kiss and kiss and
klss and kiss
And we're gonna' kiss some more
One kiss from my baby doll
Makes me holler more, more, more more
* Repeat
*** Repeat
* Repeat
*お日様なんか出なくても構わない
夜になってからたっぶり愛を語るんだ
僕のベイビーと二人の時に
お日様なんか出てたらつまらない
日が落ちてからが本当のお楽しみ
僕のベイビーと二人の時に
**そしたら二人はキスして、キスして、キスして、キスして
もっといっぱいキスをする
何回キスしようが関係ないさ
だって一体、誰が数えてるっていうんだい?
*くり返し
**くり返し
*くり返し
みぞれだろうと雪だろうと構わない
夜のドライブは楽しいものさ
僕のベイビーと二人の時は
雨が降ろうと構わない
彼女さえいれは気づかない
ああ、なんていい娘なんだろう
***そしたら二人はキスして、キスして、キスして、キスして、
もっといっぱいキスをする
愛しいあの娘が口づけくれれば
僕は叫ぶよ、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、ってね
カラオケ屋さんで偶然手にした楽曲ブック。”ピックアップ・アーティスト”としてエルヴィス・プレスリーが取り上げられていた。
その短いコメントに身体が震えた気がした。
エルヴィスの歌の巧さ、声の良さ、ドラマティックな人生などについ隠れてしまいがちであるが、それこそ愛ピエロが一貫して伝えたいことであり、聴くほどに確信することなのだ。
彼の後に出た者は皆彼のコピーに過ぎないと言う者も多いが、私はそうは思わない。
没後25年経った現在でも、誰も彼の音楽の内に潜む核の部分を模擬しきれないでいると思うからである。
彼こそが、ロックンロールの中に「孤独」を表現し得た唯一無二の存在だと思うからである。