「ラスベガス万才」は最高傑作。60年後半の作品のひどさは熱狂的なファンですら、観るに耐えないものがある。
定説になっているエルヴィス映画観です。
ニューヨークタイムスは「音楽、若者、生活習慣がエルヴィス・プレスリーによって大きく変化させられた。26本の映画からは想像もできないことだ。」というコメントを掲載したという。
かくいう僕も「もういい加減にしてくれ!」と思ったスーパーがつくつまらない映画もあります。それこそ「ニューヨークタイムス」のコメントと同じでした。それは愛するゆえに悲しかったのです。なんでこの偉大なロックンローラー(スーパースター)がこんなつまらない映画に?!理解できないものでした。しかもひどくなる一方というのが不思議でした。なによりも「脚本」のひどさには凄みさえ感じます。
それでも言いたいのです。確かにそうですが、人にはそれぞれの感触というものがって、一般的ナ評価で表せないものもあるはずです。
どんなつまらい映画であっても、エルヴィスだからこそ、贈ってくれた何かがあることを。エルヴィスだけにできた贈り物が。
僕にとって「ガール!ガール!ガール!」は成人映画の印象があるくらい刺激的でした。当時中学生だった僕にはそのタイトルと水着美女たちとビートの効いた曲と揃うとかなり当時は刺激的で観てはいけないものを観にいった感じがあります。実際には健康的すぎるぐらい健康的な作品なのですが、第一印象はいまだに変わらず、そのタイトルや場面に触れるといまだに胸騒ぎします。
この映画で「心の届かぬラヴレター」を歌うエルヴィスのインパクトのせいで美女たちの存在は目に入りませんでした。
「ヤング・ヤング・パレード」はシアトルの万国博を舞台にした大好きな作品です。僕の「アメリカの原風景」です。この映画の登場人物はみんな豊かではないのですが、明るさに憧れました。それにブロンド女性の美しさにも。
「アカプルコの海」はその画面の美しさが印象的なのと、子供と自転車に二人乗りで掛け合いで「すてきなメキシコ」を歌う場面が大好きでした。「お金はなくても幸せ」というメッセージが伝ってきたのを記憶しています。エルヴィスも自分の子供時代をだぶらせていたかも知れません。残念ながらレコードではエルヴィスだけが歌っています。
「ラスベガス万才」のアン・マ−グレットの掛け合いは最高です。プールサイドの掛け合いと体育館のダンスシーン見たさにこの映画は30回は観ました。これは純粋に音楽を楽しみました。
「青春カーニバル」は東映映画のノリですね。旅芸人一座の歌手が、一座の困難を救うために戻ってくるという作品。これは当時ビートルズの「ヘルプ!」と正月作品で競合したのですが、その内容は悲惨で気の毒でした。でもいい曲がいくつかあって「駄作」だけど、いまでも楽しめる作品です。この作品の撮影中にELVISが怪我をしました。
「ハレム万才」もひどい映画でしたね。いまもビデオをたまに見ますが何度見てもひどい。この映画製作完了後、ELVISは「かなりおかしな作品だったね。あとでゆっくり脚本を読ませてもらうよ」と製作スタッフに言ったとか。でもこの映画も随分いい曲が揃っています。
最近久しぶりにメンフィスの「ハートブレイク・ホテル」で見ることが出来たのが「フロリダ万才」。これは日本では手に入らないし、テレビでも放送されないので、見ることができなかった。
やっと観れてスカッとしました。これは鮮やかな黄色いジャケットを着てバンドリーダーに扮しました。軽いタッチのすごくいい感じの典型的なアメリカ娯楽青春作品。タイトルバックに流れる「GIRL
HAPPY」という曲が大好きなんです。
この作品では「スイムでいこう!」がシングルカット。相手役のS・フェブレーはTVで人気だった女優さん。
多分同じ意見の方が多く存在していると思います。多分この時代にリアルタイムでエルヴィスファンだった人はそうじゃないかと思います。それは単にエルヴィスが好きというだけでなく、エルヴィスを通じて見ていたアメリカ文化が好きだった人が多いと思うからです。
「ステイ・アウェイ・ジョー」という日本で公開されていないのも、最近ハートブレイク・ホテルで見ることが出来ました。ニューヨーク・タイムスが怒りと悲しみこめてこきおろした作品ですね。いよいよもって考えられないくらいに、ひどい映画でした。本当に悪くなる一方というのがすごいですね。でもこの映画の歌も胸がつまるくらい素晴らしかった。
僕はエルヴィスを通じて「どこにでもいそうな、貧しくても、明るく陽気に、自立心に富んだ男」という極めてアメリカ的なヒーローに触れてきました。そういえば、グレースランドに並んでいたのは、そんな男になりたかった連中ばかりだったように思います。「どこにでもいそうな、貧しくても、明るく陽気に、でも誰かに助けてもらわなければひとりで立っていられない奴ら」そう、みんなELVIS
に助けてもらっているんだ。
1999年のグレイスランドの夜空に流れていた「愛はやさしく」は駄作のひとつ「キッスンカズン」の中の一曲でした。でも「愛はやさしく」にみんなが涙にむせんでいたのですよ。1999年に聴いたその声はいまでも脳裏にはっきりあります。多分10年後も忘れていないでしょう。
ところで、ELVISの日本名は通常(音楽)の場合はエルヴィスですが、映画はエルビスです。これはずっと変わらずいまもってそうですが、特に理由はなく慣習とのことです。