等さんの場合 禁煙、そして隠された問題
等さんの場合、問題は夫婦仲と妻の病気でした。夫婦仲は、自我を抑えることでなんとか持続していました。その一方で不満を解消するかのように、社内不倫にのめりこんでいました。そこに不満が渦巻き感情的であっても永年連れ添った妻の病が降りかかってきました。乳がんの摘出と術後の不安と不調。
長い間、「夫婦仲」という核心の問題は暗い傘のようなもので、その傘のもとで間題行動が繰り返し起こっていた。しかし今や、それ自体、意味を持ち、活気に満ちた生活に前進するため、まさにこの問題を活用するチャンスになっていました。
不倫、タバコ、アルコール、嗜好品、あらゆる消費・・・神経系統を曖昧にして集中力を奪うものは、体脂肪のように余分なストレスとなって、生活を鈍くする役割を達成していた。
力を取り戻すには、遺伝学的、生理学的、心理学的な弱さを考えた上で、自分の姿勢を正しく保つ暮らし方に注意深く関心を持つことが必要だ。
必要なことを忘れて、不倫、あるいはどうでもいいことに時間を費やせば、現実から逃げることはできる。しかし現実が消えてなくなるわけではない。現実はいつも寄り添うように側にあり続ける。それは等さん(仮名)が現実の存在だからだ。
毎朝、眠りから覚めたとき、今日という一日を全部使い果たしても片付きそうにない毎日、すべてを消化するために生きるような気がする毎日、そこに希望を持てなくても不思議ではない。どんなに努力しても、どこにも行き着くことのない気がする毎日、どんなに歩いても一歩も進んでいないような気がする毎日。
等さんが「ライフスキル講座」に参加してきたのは、生き延びるためだけの生活にきっぱり訣別して、本当にやりたいことに挑戦する毎日を実現するためでした。
しかし実際には、なにを求めているのか解らない、なにをしていいのか解らない、
惰性で暮らしている毎日にピリオドを打つことから始めることでした、そのために、まず惰性と縁を切るために目標を持つことでした。
等さんは「禁煙」したい意向で「ライフスキル講座」に参加してきましたが、本当の問題は、不倫と奥さんとの不和、さらに奥さんの癌とどう向き合うか、つらい課題でした。
不倫の原因は、奥さんとの不和でしたが、本人は不和と考えていないようでした。習慣になったふたりの独特のコミュニケーションのスタイルが、第三者に不和に見えるだけで、実際にはそれで納得していました。しかしそれを等さんは喜んでいたわけでもなく、ただ我慢していただけです。
我慢が不思議なのですが、我慢できてしまう背景には「依存」がありました。妻のいいなりになっていることで夫としての責任から解放される気がしていたのです。
等さんがそれに気がついたのは、講座のなかでも重要な「感情」について学んでいたときでした。
そのときに奥さんが乳がんの告知を受けたのです。すでに不倫をしていましたが、妻が恐怖と戦っている姿に、不倫を継続することはできないと感じて交際相手に別れることを求めました。
妻の病の一方で、禁煙することを決めましたが、進みません。イライラして吸ってしまうとのことです。イライラする心情は理解できます。癌と戦う妻、別れがすんなりいかない交際、その一方で裏腹に交際相手と会えない寂しさ、等さんはこの段階で、交際相手と会えない寂しさという「感情」に逃げ込んでいたのです。
もともと不倫のきっかけも現実の夫婦生活、さらに会社で起こっている人員整理の不安。等さんが、「禁煙」という軽いテーマを成功させるには、習慣化している
「依存」体質にストップをかけて、現実に向き合うことでした。
それは癌と戦う妻を、心から愛してサポートする力を自分の内側に呼び起こすことでした。
「99日間プロジェクト」で結果を出したいと思いながら、「感情」について学ぶほど感情についてなにも知らなかったことを痛感していたのです。
自分は感情とどのようにうまくつきあえるか、とても自信がなさそうでした。
99日間プロジェクトは、ライフスキル講座のひとつです。