■働きがいのある職場は自立を目的にしている
ライフスキルが不足していると自立ができません。自立していない家族、自立していない人が多い職場。
つまりライフスキルが不足している人が集まった共同体ではコミュニケーションも悪いものです。
コミュニケーションはライフスキルの充足度で全然違ったものになるからです。
ライフスキル 10のスキルは自立にどう影響しているのでしょうか?
そもそも自立ってどういうことでしょうか?
自立と言うと、「自分のことは自分でするから構わないでほしい」
・・・そんなイメージがあるかも知れません。でも、そうではありません。
自立のイメージは大切で、自立がなぜ大切なのかと深く関っています。
自立は、やさしく柔かで、芯に凛としたイメージを含んでします。ここで言う自立は一般に言われる「自立した女」の表面的なイメージと少し違います。
自立は孤立ではありません。
自立は人にやさしくすること。共同体とのコミュニケーションで可能になります。
幼児期の万能感に訣別した後に自立は可能になります。
自分の限界を知り、他者の限界を知る。限界を知って、人と人の間には境界があることを知る。
他者は自分の思い通りになるものではない。思い通りになるのは自分の選択と行動だけ。
それを知って、自分のできることをできるだけしょうと取り組む。
つまり、自立とは、自分を律して、なれる最高の自分になることです。
その終わりのないプロセスこそ人生であって、暮らしとはそのための活動。
そのプロセスは、自分のできることを手抜きすることなく実行する。
自分のできないこと、力不足については、助けを求めていい、サポートを受けていい。
周囲の人に正しく依存していいのです。
自分がそうであるように、他者もそれでいい。
つまり自律、自立は、自分にも他者にもやさしい、コミュニケーション力なのです。
たとえば部下を持つ人は、自分の責任を果たすために、部下に見合った行動を求めます。
しかし.部下は思い通りに行動しません。部下を変えようと指示します。部下に変わる事を求めます。
それで済めば簡単ですが、なかなかそうはいきません。
人間にはできることと、できないことがあるのです。
自分にできることは自分を変えることです。部下を変えることはできませんが、部下が変わるように自分を変えることならできます。目的を羅針盤にして、良い人間関係を創れる力を持った状態が自立です。
言い換えれば自立とは、依存力と言えます。
アサーティブであるために依存心を使う。驚きかも知れませんが、依存は悪いものだけではありません。
上手な依存と下手な依存があることを意味します。
上手な依存には、自律があります。自分と他者の限界を知る。できないこととできることが判った上で、自分で責任を引き受けることを前提に助けを求めることができます。
下手な依存は、まったく逆さまでです。
自分と他者の限界を判らずに、できること、できないことが判らないままに、自分の責任を引き受けることなく、助け、サポートを心理的なコントロールで強要する、あるいは他者が他者の責任ですること、できることを勝手に引き受けます。
なぜそんなことができるのか、幼児期の万能感が影響しています。
万能感とは、「人間は万能の神ではない」の万能です。
自分は万能だと意識して生きている人はいないと思います。そんなことを言えば狂人扱いされます。
しかし、信じがたいかも知れませんが、潜在意識では、「思うことはなんでもできる」
万能感が働いている人がたくさんいます。特殊な人でなく普通の人のことです。万能感が働いているとライフスキルも身につきません。
しかし、日常的に万能でないことを体験するので、挫折感を味わい、自信を失う原因になっています。
たとえば、マネジャーになった人が「マネジャーの言うことを聞かない部下がいることは、マネジャーとして失格だ」と考えます。
「商品が売れないのは、マネジャーとして恥ずかしい」と考えます。
これらは間違った判断で、その背景には、あり得ない万能感が働いています。
マネジャーの言うことを聞かない部下は、部下の資質の問題です。
マネジャーの責任ではありません。
売れないのは自分が悪いわけでなく、自分のスキル不足です。
こんなとき「限界」と「境界」を知って、自分のできることをすればいいのです。
部下の資質をアップすればいいこと、自分のスキルを持てばいいのです。
自分にできることは、自分が思っている以上にたくさんあるものです。
特に、自分を否定する人は、自分はダメだと思うばかりで、自分のできることを考え行動しようとしません。
「自分のできることは、やろう」と思うのが責任を引き受ける態度です。
万能感は、どこから来るのでしょうか?
万能感は成長の過程で、みんな持ちます。
幼いこどもは自分で生きていけません。保護者のケアが必要です。
泣けば親がサポートしてくれます。自分の思い通りになると思い込んでいます。
健全な子育てでは、成長と共に、何でも思い通りにならないことを知ります。
思い通りになるのは、自分の選択と行動だと気がついていきます。
この段階で自分と保護者を含む他者の間には「境界」があることを知ります。
万能感との訣別は、成長に欠かせない大きな節目なのです。
万能感との訣別すると、自分のできることをしようと思います。
自分にできることを重ねるスタイルは、トライ&エラーを繰り返すことで、やがて、もっとできるようになりたい意欲を育みます。
このエラーをどう判断するか、自分を肯定する力が強いほど意欲的になり、克服することで、自分はやれる「自己効力感」が強くなります。
逆に否定感が強いと、エラーを致命的に受け止めて萎縮してしまい、トライを怖がるようになります。トライしなくなるので、否定感がまとわりついたままになります。
しかし、一方では万能感もまとわりついたままです。この矛盾が自分を苦しめます。
万能感は自分には気持ちのいい感情ですので、万能感を維持することは否定的な感情を軽くします。
しかし万能感にはトライで獲得した自己効力感と違い根拠がありません。
トライすれば挫折によって打ち砕かれる可能性があるので、身動きできなくなります。
そこでトライしないように、トリッキーな言い訳を重ねて、ますます自分に否定的なります。否定的になるほど無意味な万能感を強固にしようとします。
葛藤は深まります。負の感情を預金しているようなもので、年齢と共に息苦しくなってきます。やがて引き出すときが来て、大きな挫折を味わいます。
挫折は、女性なら、異性問題、家族、子育てで問題が出ることが多く、男性は異性問題、遊興、仕事で表面化します。
健全な社会で、大人が周囲の人を保護者のように扱えば、周囲の人は閉口します。
日本では、他人の迷惑を顧みない無責任さで、コミュニティーが崩壊する傾向にありますが、自立することを目的にしていないために、自立できない人が増えている証明と言えます。
もともと境界が曖昧だった社会に、誤った自由の意識が入り込んだために生じた結果といえます。社会全体で子育てに失敗していることが最大の原因といえます。
職場は学校ではありません。家庭と違ってライフスキルを身につける場所でもありません。
本人が会社の目的を達成するために雇用されていることを前提に自主的に目的、目標の達成に取り組むのが本来です。
それを教えなければならない状態とは、下手な依存しかできない状態にあることを示唆しています。
厳密に言えば仕事を私物化しています。
働きがいのある職場とは、下手な依存しかできない人を、上手な依存ができるように変える仕組みがある職場です
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