【7】ライフスキルと7つのゴールデンルール
ライフスキルと7つのゴールデンルールから、「自分と周囲の人を尊重し励ます」を抜粋。 |
■自分と周囲の人を尊重し励ます/効果的コミュニケーション ・対人関係スキル
●コミュニケーション
一口にコミュニケーションと言っても違いがあり、関係を悪くするものもあれば、良くするものもあります。
もし、否定的な構えをとっているとしたら、構えを変えるように意識すれば、徐々に改善され、良好な関係づくりができるようになります。
「このカップを洗っておいてください」
「はい、洗っておきます」
これはコミュニケーションではありません。
コミュニケーションとは価値観のぶつけあいです。
ぶつけあいというと戦闘的ですが、主体性が強いほど当たり方も強くなるものです。
自分に主体性があるように、周囲の人にもそれぞれ主体性があります。
ですから意見のくい違いは、自分と相手を肯定しあう機会なのです。
互いに傷ついたりしないように、柔らかく上手にぶつけあうのがコミュニケーションの本分です。
ですから、「意見がくい違うから話できない」というのは、まことに奇妙な話であって、コミュニケーションの前提がなっていないのです。
●自分や周囲の人を否定せずにいられない人たち。
意識している人は少ないのですが、コミュニケーションの基本的なスタイルには次の4つがあります。
・自己肯定、他者肯定
・自己肯定、他者否定
・自己否定、他者肯定、
・自己否定、他者否定
自分も相手も肯定できる<自己肯定・他者肯定>コミュニケーションは人間関係に励まし、勇気づけを注ぎます。
元気になれる関係は、自分の存在価値を確かめずにはいられない人間の本能に大歓迎されます。
反して、<自己否定、他者否定>に代表され否定的なネガティブな構えに支配されたコミュニケーションをする人がいます。
俗に「性格」で片付けられがちなコミュニケーション・スタイルですが、自分がどんなスタイルをとっているのか、意識すれば変えることもできます。
まず知る、意識する、変えるように目標化する。行動を繰り返して習慣化で実現します。
●知る→意識する
自分のコミュニケーション・スタイルを知るには、自分を客観的に観察することかた始めます。
平行的なパターンが多いか、少ないか、あるいはこじれるパターンが多いか、少ないか。自分の言動、相手とのコミュニケーション状況を観察します。
自分が分かりづらい場合、影響を受けている可能性の高い近親者のスタイルを観察するのも参考になります。
早口で思い浮かぶことを次々に話していたら認識ができません。
本当なら準備して、ゆっくり落ち着いて話すようにしたいものです。
自分と相手の間に庭があって、そこに繰り広げられる考えや感情の交換をゲームでもするかのように注目してひろいあげていく感じ。
自分の考えや感情を認識できる客観的な立場に立てる力はとても大事です。
自分を客観的に認識出来るようになれば、次に相手の考えや感情を認識するようにします。
日々、体験を重ねて深めるようにしていくと、自分がどんなスタイルをとっているか、そのせいで相手がどんな反応をしているかが見えてくるようになります。
コミュニケーションの基本は言葉ですが、ボディランゲージにも留意しましょう。
最近の若い人はボディランゲージの理解が苦手なようですが、目は口ほどにというように態度、表情もコミュニケーションで大きな役割を果たしています。
発信する立場では、しっかり言葉にすることが思い違いを防ぐ方法であることを意識して、なるべく相手に判りやすいコミュニケーションを心がけましょう。
●「通じていない」を前提にする
どんなにしても、通じ合えないのがひとのコミュニケーションです。
それはひとりひとりの体験の違いからくるイメージ違いがあるからです。
「お母さん」という言葉のイメージは同じように思えても、体験もイメージひとりひとり違います。お母さんを何人も持った体験した人はいません。
ほとんどの人はひとり、多くても数人の体験しかしていません。それを「お母さんというものは・・・・」と最大公約数で語っても、実際にはイメージは個人的なもので限定的です。
それが「会社」なんかになると、同じ業種でも、ひとつひとつ違い過ぎるほど違います。だから「会社勤めと言うものはね・・・・」なんて言っても話すほうも聞く方も、全く違うイメージで話し合っているのです。
万事がこんな調子です。
違うのが当たり前ですから、なかなか分かり合えないのを前提にして熱意をもってコミュケーションすることがコミュニケーションといえます。
また、通じ合えないからこそ、自分もOK、他者もOKと互いに肯定することがとても大切なことになります。
違うからこそ認め合おうというスタイルを基本にしたいものです。
どんなに言葉、態度、表情が通じなくて、あなたは大切なひとですと相手を思う気持ちは、直感で通じるものです。
「自分のことが分からない」というように、自分が意識できる考えや感情は氷山の一角です。
分かり合えないものがあるのは仕方のないこと。
生まれた時から世話してきて一番分かっているはずの親の立場でも同じです。
どんな愛しても心配してもどうしても越えることのできない一線がある・・・それはある意味、とても寂しいものです。
でもだからこそ裏返せば、思う気持ちが尊いと言えるのです。
分からないのに一生懸命に自分のことを考えてくれる、思ってくれる。それがひときわ輝くのは境界を越えられないからです。
越えられないから、身代わりになれないから、励ますしか出来ない、勇気づけることしかできない。その限界を精一杯やってあげる。それでも自分の無力、非力を思い知らされる。
そんなときに、本当に自分が相手にしてあげられることって、最良の励まし方、勇気づける方法を編み出すしかないことに突き当たります。
たとえば、誕生日を祝ってあげたい。気のないお祝いやお金にまかせたお祝いで済ますのではなく、どのようにして驚かせてやろうか。オリジナルで心動かすことをプランして実行する。こんな楽しみが光るのも人の間には境界があるからです。
●なぜ、ゴールデンルールなのか?
「自分と周囲の人を尊重し励ます」がなぜ、ゴールデンルールなのか?
人は他者との関係性のなかで生きているので、「自分と周囲の人を尊重し励ます」スキルそれ自体尊いものであることは言うまでもありませんが、身につけるプロセスにも深い意味と価値があります。
どうすれば、「自分と周囲の人を尊重し励ます」ことができるのでしょうか?
痛みが分からない人に、他者の痛みは分かりません。
他者の痛みを理解するには、想像力が欠かせません。
まず自分が痛みを経験することが基礎的な力になります。
ところが、万能感に支配されたまま、万能感をキープするために、完璧主義を志向し挑戦と失敗を避けている限り、痛みを感じることはありません。
●失敗しない最大の失敗をしている大人になれない人
人間は万能でないから失敗するものなのです。
そして失敗しても乗り越えていくものなのです。
それを知る、知った後も、行動を続けることが大人への脱皮、つまり自立であり、「自分と周囲の人を尊重し励ます」最初の一歩なのです。
つまり「自分と周囲の人を尊重し励ます」ことができるには、失敗が必要なのです。
物事は、一度で成功することは、まずありません。試行錯誤の連続から、活路を見出し、少しづつ進化していくのが普通です。
困難と克服のプロセスを通じて、自分にも他者にも完璧を求めることが、いかにつまらないことかを学ぶのです。
目的、目標を持てない人は、自分にやさしくなれません。同じく他者にもやさしくなれません。
やさしくしているつもりでも、自分を受け入れてもらうためのやさしさなので、自分を受け入れそうにない、受け入れていないと感じる相手には近づこうとしません。
その判断も自分の行動を持ち前の完璧主義で判断した結果なので適切とは言えません。
頭のなかで同じことがグルグル回っている感じで、行動が乏しい。
傷つかないメリットを最優先するので、傷つくことで得るメリットを手にできません。
プラスチックのピカピカのままで、石や木のように使うほど痛むけれど味わいが出てくる生き方をしていないのです。
●すでに心は目的を知っている
自分や周囲の人を肯定的に受け入れない状態、つまり「自分にはできない」「君はできない」と感じてしまうからと言って、したい生き方やしたいことが消えてなくなるわけではありません。矛盾が起こり、矛盾が自分を責めます。
少し考えていただくと分かることですが、人間が生きるために繰り返しているすべての消費は、安心と幸福のためのものです。
目的がない、目標がないと言っても、安心して暮らしたい、幸福になりたい欲求が消えるわけではありません。そのなかにはひときわの強さで自分を認めたい欲求があります。
すでに心は目的をしっかり知っているのに、自分ですくいあげられないだけのことです。
食べ過ぎたり、恋愛にのめりこんでコントロールを失う、酒飲んでアルコール依存症になったのも、安心への希求からです。
安心のためにやっていることだから、本人の好きにさせたらと言っても良さそうなものですが、これを悪癖とするのは、安心につながらならないこと、より大きな不安になることを繰り返してやっているからなのです。
安心と幸福、不安と不幸は、それぞれ似ているようですが、実は随分違います。
人は不幸より不安に弱い。なぜなら不安はまだ起こっていないことだからです。
現在より未来が怖いのは、現在を生きていないからです。
すでに心が知っている目的をすくいあげられないのは、まだ起こっていない未来に恐れて、現在を生きようとしないからです。
まだ起こっていないことを巨大化して、自分が想像した未来を乗り越えられそうにないと想像している、失敗を恐れずぎるからです。
万能感に支配されたまま、大人に脱皮できない自分を放置している。つまり失敗しないことが最大の失敗ともいえます。
●目標化→習慣化
現在を生きる大人の自分をしっかり育てるために、ゴールデンルール「自分と周囲の人を尊重し励ます」を日々の暮らしに落としこみましょう。
まず自分を大切にして励ますことがルールです。
自分を大切にするとは、目的、目標を持って自分を使いたおすことです。
使いたおす理由は「自分の最大の味方は自分」にするためで、次にあげる態度などがそうです。
・ 変化を積極的に受け入れる
・ 状況をありのまま認識する
・ “こうあるべき“という決めつけ、思い込みを捨てる
・ 自分の素質や才能を信じて、仕事の場で生かす
・ 周囲の人との率直なコミュニケーションで、互いの学習、意欲、信頼を交換する
これらのスキルは達成と同時進行で育まれるもので、どれをとっても失敗から立ち上げるために必要な態度です。
特に「変化を積極的に受け入れる」「“こうあるべき”という決めつけ、思い込みを捨てる」に注目してください。
失敗することを恐れることはありません。致命的な失敗は誰だって怖いものです。
だからと言って、小さな失敗まで恐れる必要はないのです。
挑戦しない人は、とかく「致命的な失敗」を持ち出しますが、取り返せる失敗のほうが圧倒的な数で多いものです。
小さな失敗を克服する経験を重ねることで、致命的な失敗を乗り越えるスキルも身についていきます。
失敗したら、もうそれ以上続けないようなことを繰り返していると負け癖がついて、マネジメント能力も育ちません。
達成できるようになれば最高ですが、できないからとあきらめることはありません。
どこが悪くてうまくいかないのか、料理や自転車の失敗と同じでうまくできない原因を発見して直せばいいのです。
自他肯定のポリシーに支えられた「自分と周囲の人を尊重し励ます」生活習慣は、あらゆる行動の土台になります。
どんなにお金持ちになっても、有名になっても、自他肯定の交流パターンを自然な状態で身につけないでいたら決して幸福にはなることはありません。
●習慣化で否定的な態度を断ち切る
行動したいけれど行動しない。
あきらめるから生まれる得体の知れない不満、不平は怒り、妬み、恨みに姿を変えることで、自分の内から率直、誠実、対等、責任を追い出します。
その結果、壊れてしまった自尊心が依存心になって残ります。
自立できるはずの自分にとって変わる悪魔の王、それが依存です。
万能感に支配された依存心は、こども時代に使って来た手法を使います。
ふくれる、いじける、反対する(注意をひく)などで相手の関心をひき、相手が察して手を貸す、代行するなど依存によって、自分の願望を充足しょうとします。
習慣化して繰り返すほど、じぶん力を弱め、心の力を衰弱させてしまいます。変化は難しいと決めつけずに、日常とは変化のかたまりであると知って、積極的に自分とのコミュニケーションを強めます。
すでに目的を知っている自分の心とコミュニケーションするには、できるまでやり続ける習慣を身につけることです。
できるまでやり続けることがコミュニケーションする方法です。
目標を立てて、取り組む力が、自分と周囲の人を尊重し励ます力になり、習慣になります。
自分と周囲の人を尊重し励ます力、スタイル、その他のゴ?ルデンルールを身につけるのを阻止するのは自分自身だということに強い関心を持ってください。
しかし、強い関心と自分を責めるのは同じでないことにも留意してください。
できないからと言って責める必要はありません。
責めるのではなく強い関心によって技術を身につけるようにします。