DRUMUS OF THE
ISLAND
ハワイアン・ドラム・ソング
現在行われているUSJのイベント『ロック・フェスト2002』は、ラスベガス、ハワイで人気のそっくりさんのパフォーマンスの一部をもってきたもの。マドンナ、マイケル・ジャクソン、ブリトニー・スピアーズなどのそっくりさんが熱演。そっくりさんの言葉で片付けるのは彼等に気の毒と思う程の力量を見せるのはアメリカのショービジの層の厚み、厳しさの表れ。残念ながら今回エルヴィス、モンロー、リトル・リチャード、ロイ・オービソンなど”クラシック”がいない。彼等が参加してこそ『レジェンド』なのだがーーー。
この10数人のパフォーマーが登場する本場でのショーのメインはラスベガス、ハワイともエルヴィスで、ショーの総時間のおよそ1/3はエルヴィスが占めている。ともにエルヴィスが活動の背景として印象に残る地でもあった。ハワイでのショーのクライマックスになっているのが<ハワイアン・ドラム・ソング>だ。この曲が使用された映画の雰囲気そのままに、フラダンスを踊る女性たちと出演したパフォーマー全員が揃ってステージ狭しと華やかなクロージングを演出する。
<ハワイアン・ドラム・ソング>は、エルヴィスのハワイアン・ムービー3部作とも言える『ハワイアン・パラダイス/PARADISE
HAWAIIAN STYLE』のクライマックスで歌われる人間と自然の賛歌といえるような曲だ。
『ハワイアン・パラダイス』はエルヴィスにとって21本目の映画。『フランキー&ジョニー』と『カリフォルニア万才』の間の作品。いまでこそ結構気軽なハワイ旅行だが、当時はまだ1ドル360円の世界でハワイは遠く、エキゾチックな風景を見るだけでも楽しめた側面があった。エルヴィスのハワイアン・ムービーは『ブルー・ハワイ』がクルマから見たハワイ(陸)、『ガール!ガール!ガール!』がボートから見たハワイ(海)、『ハワイアン・パラダイス』がヘリコプターから見たハワイ(空)となっていて、それぞれ風景が違って立体的に楽しめる。ここではハナウマ・ベイでの撮影がうれしい。
桜のうわさも聞こえる週末の夜、三本立ホームロードショーを楽しむのも一興。
ピエロとしては、エルヴィス映画のクライマックスの素晴らしさで筆頭にあげたいのが『ハワイアン・パラダイス』と『ヤング・ヤング・パレード』だ。ともにそのタイトル通りのシーンを豪華絢爛に見せて楽しい。
東京ディスニーランドでもパレードが人気だが、やはり人はハレの場面が好きなようだ。西洋でも東洋でもないポリネシアの抜けるような青い空と笑顔、初期のエルヴィスの印象とは遠くかけ離れた世界で不思議なくらいにエルヴィスが輝いている。こんなに華やかなシーンにエルヴィスの笑顔が似合うのは、本人が楽しいこと大好き人間だったからのような気がする。ここでは少し太っているのも快楽主義のポリネシアン・ワールドとマッチして悪い気はしない。
先にあげた『ヤング・ヤング・パレード』の方では、時折身替わりさんが目につくが、それが気にならないのは、自由自在、バネのように伸び伸びと歌う<ハッピー・エンディング>がエルヴィスのステキを存分に引き出して楽しいせいか。
それ以上に圧巻のクライマックとなった<ハワイアン・ドラム・ソング>はスケールの大きさ、人間の素敵を感じさせてうれしい。個人よりも全体のつながりを愛するポリネシアの文明はどこかでエルヴィスの心にしっかり繋がっていたような気がする。この曲には70年代に聴かせた雄大な楽曲の基本となる力が伺えるのも楽しい。
作者は『フロリダ万才』のスマッシュ・ヒット<僕はあやつり人形>や『ハレム万才』の<キスメット>など、エルヴィス持つ包容力のステキを知っているシド・テッパー、ロイ・C・べネットのコンビ。
エルヴィスのサントラに共通していえることは、デュエットやライブ感が魅力な曲はレコードバージョンより映画バージョンの方が、素敵だと感じるものが結構ある。<ハワイアン・ドラム・ソング>もそのひとつ。
ビデオがリリースされていない時というより、ビデオそのものが高価で手に入らない時代にテレビ放送された時にはテレビの前でテレコを持って録音に呼吸を止めて奮戦した。ハワイの海が映るテレビの前で素もぐりしていたようなものだ。
時代はDVDで貴重な映像や音源が簡単に手にできるようになってきたが、便利さと引き換えに『パラダイス』に気がつかなくならないように、自分の感性に注意したいものだ。
太鼓から伝わる野性と人間のあたたかさが融合した楽曲は、思い出とともに明日のことをふと思わせる。