■いまと未来がワンセットの楽観主義者
日常的に大事な選択を行うとき、自分を最も多くあるいは強く、主に支配している態度は、
悲観的な態度ですか? あるいは楽観的な態度ですか?
その時々で、いろんな顔を持っているものだと思いますが、 たいていの方は楽観的な態度、楽観主義が望ましいと考えているようです。
でも実際は悲観的な考え方をするほうが多いようです。
さて楽観主義、楽観的な態度とはどういうものでしょうか?
よく誤解されますが、楽観主義は、決してノー天気ではありません。
あらゆる困難に立ち向かうことができる態度を、自分の方針として身につけているのが楽観主義です。
たいていの方が、楽観主義を望ましい態度と考える理由は、そのたくましいイメージが原因でしょう。
どんな状況でも気が滅入ることなく立ち向えるって、ハリウッド映画のヒーロー、ヒロインみたいで、カッコいいですね。
楽観主義者は、どうして困難に立ち向かえることができるのでしょうか?
あるいは、どうすれば困難に立ち向かえるのでしょうか?
楽観主義のメカニズムを知っておくと分かりやすいと思います。
楽観主義は、いま目の前の現実のことと、未来に向かって行動する目的志向とワンセットになっています。
自分が望む未来の状態を想定して、いま現在の自分の行動を規程したり、制限することで、未来に対して自信を持っているからです。
つまり最悪に備えた必要な準備をしている態度によって、困難に遭遇してもきっと乗り越えることができるという自信につながっているのです。
自信とは自分を信頼できるということです。
必要な準備をしていることで、自分を一番信頼できる支援者に仕上げています。
未来に備えて準備をしているので、目の前のいまのことに不安を感じない態度が恒常的になっていて、精神状態も安定しているのです。
精神的な安定によって、不測の事態にも対応できるため、ますます自分を信頼することができるようになります。
楽観主義者には、未来があって、いまがあります。
ですから 、いま行っている行動について、どうして、それをしているのかをはっきり説明ができます。
これが悲観的な人にはない際立った特長だと言えます。
一方、悲観的な人には、未来と過去があって、いまがありません。
行動しているはずの「いま」は、いつも「気をもんでいる時間」です。
悲観的な人から、「もちろん」「しかし」、「もし」が出てきてしまうのは、未来と過去だけを見ていて、いまを見ないからです。
自分で必要なことを拒絶しているために、何をしたいのか、どうするのかを具体的に言えなくなります。
こんなことでは、ますます自分を信頼できなくなりますが、本人は因果関係に気がつきません。
気がついている人から見ると、つじつまの合わない考え、解釈、行動と感じますので、この上なく不思議に見えます。
楽観主義の場合には、目的を達成するために、必要な準備をします。
出来る、出来ない、好き嫌いという感情に支配されずに判断をします。
それが必要なら行動しますので、「しかし」「もし」が出てきません。
■人はみな対等の楽観主義者
人は対等とは思えない悲観的な人
楽観主義の特長は、勇気があること、つまり自分を信頼していること。
他者(ひと)への信頼があること、他者(ひと)との関係に対等感があることがあげられます。
悲観的な人には、この対等感が欠けています。
人より上位に立つか、下位に置くか。
異性であれ、後輩や部下であれ、先輩や上司であれ、相手構わず、無意識の内に、差と比較で判断し、競争的です。
競争的といっても、他者(ひと)に勝つために努力をするということではありません、
何でもいいから、何かで、他者(ひと)より優位に立ちたいだけで、同じ土俵で努力して優ることをめざすわけではありません。
言葉の上で、人は平等だ、対等だと言ってはいても、心の底で対等だと認められないのです。
楽観主義は、なぜ他者(ひと)との関係に対等感をもてるのでしょう?
やれば誰でもできると思っているからです。
物事の成就は、特別な才能のせいではなく、準備を具体的にしたおかげと考えます。
ですから、 やりたいことができるように準備して行動すれば、目標は達成できると考え行動します。
そのおかげで自分はやりたいと思うことが出来ている。
それは誰にでもあてはまることだと考えています。
ですから、他者(ひと)と協力して物事を達成していくことが苦になりません。
みんな、やればできると思っているからです。
時間がかかることも自分の体験で、知っているので辛抱強く取り組みます。
それを知っているからこそ、横道にそれてムダ足を喰わないように注意しながら、集中するようにします。
この状態がコツコツと行動をしている状態です。
この経験から、 協力しあうことで、 自分と他者(ひと)の間に生じる共同体的な感覚を身につけます。
これも楽観主義者の際立った特徴です。
悲観的な人はそうは思いません。
なにかにつけ差と比較で判断するので、自分には才能がないと考えます。
最初に自分にはできないという考えがでてきます。
できるか、できないかについては何の根拠もないのですが、最初から脳の動きを停止させるようなことします。
脳が停止すると身体は動きませんが、同じように行動が起こりません。
競争的な気質であるのに、競争を正面きってしないのは、そのためです。
結局、嘘からでたマコトのように、できなくなります。
思ったことは現実になります。
その悔しさや屈辱を認めるのが苦痛になるので、なにかにつけて他者(ひと)に厳しくなります。
ケチをつけます。
差や比較をするために、 気になってしかたなくなりますので、相手の価値をこき下ろすことに神経が集中してしまうのです。
本来、気にするべきは、他者(ひと)のことではなく、自分の行動なのです。
いくら他者(ひと)をこき下ろしても、自分の目標ややりたいことが達成できるわけではないので、ストレスが増えるだけで全く無駄な作業なのです。
そんな態度なので、自然に、協力して目標を達成することが苦手となってしまいます。
共同体の感覚が乏しくなります。
悲観的な人は、恐怖心が強いこと、劣等感、不信と疑惑、敵意が特長です。
なぜ、こんなに違ってしまうのかというと、あるがままの現実を受け入れているのと、受け入れない違いです。
よくも悪くもありのままの現実を受け入れていると、 自分も他人もOK と思えます。
なんでもOK、何かが起これば起った時に起こったことに対応するという姿勢はどうなってもやっていける(解決できる)姿勢そのものなのです。
おもしろいことに、どうなってもやっていけると考える人ほど、いざというときの準備を怠りません。
当然です。
なぜなら、自分が解決するつもりだからです。責任を引き受けようする者にとって、準備したり、計画したりするのは、物事を進める上で有利だし、後々が楽だからです。
これが他ならぬ自立心であり、自尊心なのです。
悲観的な人の人は、最初から、対応する気がない、あるいは気をもんでいるばかりなので、責任を引き受けることなど忘却の彼方です。
ですからいますぐに行動を起しませんし、いざという時のための行動も起しません。
行動する必要性を感じないままですが、気をもんでいる状態をもってして行動していると錯覚しています。
足元もお先真っ暗になります。
ですから不安は大きくなり、依存心が強くなり、反比例して自尊心は低くなってしまいます。
ますます自信を失いますが、自尊心を辛うじて守るための競争心だけが強いため、助けてくれと言えません。
これがさらに悲観的な態度と、依存心を強めますが、秘密主義になります。
周りの人には「超然」として見えますが、本人はお先真っ暗の状態です。
自尊心はますます低くなり、競争心はますます強くなります。
自尊心が傷つくことを防御するために、他者(ひと)をこき下ろす歪んだ気持ちが競争心(敵対心)なのです。
競争心が強くなるほど対等感は失われ、協働意識は崩れます。
チームワーク(自分の役割)は果たせなくなります。
実は自分が作り上げたシステムなのです。
その目的は身を守るためのものであったにしても、無力で依存するしかない子どもだからこそ通用する仕組みであって、成人した現在では、信用を失うシステムでしかありません。
楽観主義者と悲観的な人。
この両者を大きく分けてしまうのは、いったい何だと思いますか?
悲観的な人は、感情で判断します。
楽観主義者は 合理的に判断します。悲観的な人も、自分では合理的な判断もできるし、できているのですが、感情の波に流されてしまうのです。
何事であれ、感情に支配されていいことはありません。
私たちはほとんど合理的に判断して行動しているつもりです。
しかし、よくよく冷静になって考えると、感情的な判断を土台にして、合理的な判断をしている場合が少なくないことに気がつくはずです。
自分にはうまくやれる自信がない。
つまり挫折して嫌な気分になるのを想像して感情的な世界に浸って、 準備も計画もしないので、うまく出来ることがありません。
結局、やっぱりダメだったと感じるようになるのですが、やればできることを避けているために出来ないだけです。
やり遂げる気構えが欠如しているため、やることがなにかにつけて本気でありません。
部下に対しても、無頓着になります。
手順だけは伝えても、できるかどうかには関心が薄く、訓練も教育も乏しいままです。
それで「やっているんですけどね」となりますが、何事も本気でないので、効率の悪さは改善されません。
うまくいかないように、うまくいかないように、行動しているわけですから、うまくいくわけがありません。
しかも、それを他者(ひと)に相談するわけでもないのですから、変わる機会さえありません。
■競争ではなく協力に喜びを見出す
競争よりも協力に喜びを見出すことができるようになるには、
1)比較と差で人を見るではなく、それぞれ人には良さがあり、欠点もあっていいのだと事実を受け入れる。
2)楽観主義をこころがける。自分が望む未来の状態を想定して、いま現在の自分の行動を規程したり、制限することで、未来に対して自信を持てるように目指す。
3)感情で判断せずに、合理的に判断するようにする。。
4)感情を表現してもいいので、自分も他者(ひと)も感情を表現することを認める。
5)感情的な行動は、互いに慎むように心がける。
6)助けを求めていいのだと考え、困った時や、相談したい時には助けを求める。
7)いまと未来を大切にする。
8)人はみんな対等だと考え、互いの言い分、考え、行動を尊重する。
9)自分も責任をとれるのだ、とっていいのだと考える。
13 人を幸福にする仕事の仕方は「しかし」「もし」を言わないことから始まる。
●まず自分を励ませることが先決です。
●自分を励ます力を身につけましょう。
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