<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>は、なによりブルースへの愛情が聴くものを心地よくさせる。
自他肯定、音楽のなかに本当の自分を築き上げたエルヴィスの真髄を見る想いがする。
<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>は、「エルヴィス・イズ・バック」に収録された。
軍隊帰りのエルヴィスが音楽活動を再起動させた記念すべき復帰第一作となったアルバムだ。
楽曲そのものに目新しさはないが、当時のエルヴィスにとっては新境地で、エルヴィスが歌っていることとbブーツ・ランドルフのサックス・プレイとの絡み、フロイド・クレイマーのピアノとのバランスに新境地がたまらない出来上がりになっていて、特に男性ファンから支持が高い。
このアルバムには、アップテンポな ブルージー・ナンバー<すさんだ気持>が収録されているが、こちらも傑作だ。
それはこの曲からあふれる潔さに尽きるのでhないか。<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>には、生涯変わることのなかったエルヴィス・プレスリーという人と音楽の本質が分りやすさに触れることができるからだ。
唯一無二の存在として。
黒人と白人、アメリカ人と日本人。感性も感覚も情念も違う。
しゃがれた声でブルース魂を前面に押し出せば、ブルースを歌えるかというとそうはないらない。滑稽さだけが目立つ。
そのフィーリングはどこから来たのと思わずにいられない、猿真似的ブルースが巷にあふれる。
その一方でリズムやメロディだけを使い、心はまんま白人・・・パットブーンが歌った<トゥッティ・フルッティ>について黒人ミュージシャン、リトル・リチャードが怒りを隠さなかったのは、尊厳を無視したからだ。
タローとジローの「南極物語」をリメイクしたディズニー版「南極物語」が大した話題にもならなかったのと同じだ。同じく「七人の侍」をリメイクした「荒野の七人」が愛されるのは、オリジナルを尊重しながらオリジナルを創造したからだと言える。
それは私たちが暮らしている地球の生態系の仕組みと同じだ。
音楽の世界でも同じことが起こっている。
エルヴィスが数多くのカバーをこなし、そのどれもがオリジナルを創造したところに、物まねではない感性、感覚、情念、価値観が息づいていたからだ。
エルヴィスが白人から支持され、黒人が黙らざるを得なかった理由もそこにある。
その逆が白人からも支持されたチャック・ベリーだ。
そしてその成功した事例のひとつとして、支持が高い楽曲のひとつが<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>なのだ。
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たとえば<イマジン>のようなことを考えるタイプの人間とはどんな人だろう。
非難を恐れずステレオタイプの回答をすれば、お金があり時間がある人たちではないだろうか?ひとことでいうなら生活に困っていない裕福な層である。
エルヴィス主演映画「青春カーニバル」で愚弄して、叩きのめしたアイービーリーガーと呼ばれる層がその例だ。
考えてみると、このときすでにエルヴィスはその後ジョン・レノンを支持することになるであろう、ある層とはっきりと決別していたのだ。
いまなら「負け組」と呼ばれる層の考える最大の幸福とはボーイ・ミーツ・ガールであって、失恋の悲しみさえ、その最後の一滴までもが享受するべき快楽なのだ。
そんな彼らにとって恋愛歌は情念メラメラでないと納得できない。
カレッジ・パーティーでの軽いノリのようなわけにはいかない・・・「そんなに軽く歌ってもらっては困るんだよね、おれらには生活そのもの。仕事みたいなもんなんだから」となるわけだ。
エルヴィスが受けた理由のひとつはそこにあったのではないだろうか?
初期のバラードのほとんどが蛇のようにねっとりと執拗に、ビブラートやりまくり、普通の家庭の娘なら怖がって逃げ出しそうな危うさが、それでも受け入れられたのは、マーロン・ブランドのような風貌に、どこか頼りない甘えるまなざしとこどものような清潔感。恋愛命みたいな気弱な子が精一杯強がっている微妙なバランスの危うさのおかげだろう。
<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー> は、「女以外に他になんにも楽しみありまへん」みたいなところから歌われている楽曲だ。
そしてエルヴィスがオリジナルであるほど、実はミュージシャンとして帰る場所を失うことになっていた楽曲でもある。
自分には <考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>へのアンサーソングが<私は誰?>のように思えてならない。
アルバムタイトル「ELVIS IS BACK」がどこか悲しくなる<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>である。
しかし、その一方で、<雨のケンタッキー>にエルヴィス・プレスリーの進化を知ることになる。
それも含めて、その功績への勲章はとてつもなく大きいのは周知の事実である。
エルヴィス・イズ・バック
[Limited Edition] [Original recording remastered]
1. 君の気持ちを教えてね
2. フィーヴァー
3. 奴の彼女に首ったけ
4. きっと帰ってくるからね
5. すさんだ気持
6. 恋のスリルに比べれば
7. 固い枕の兵隊暮らし
8. サッチ・ア・ナイト
9. いかすぜ,この恋
10. 隣のあの娘
11. ライク・ア・ベイビー
12. 考えなおして
<考えなおして/リコンシーダー・ベイビー>の切なさが心の旅路へ誘い、旅往けば、その果てに日本映画「愛を乞うひと」を観るのもいい。 |
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