■加点主義
親・教師・上司は教える立場にありますので、どうしても高い位置から見ることになります。
少々努力しても天狗にならないように「まだまだ」という目で見がちです。
大変さを強調して、減点主義になってしまい、知らず知らずの間に、勇気をくじいてしまいます。
加点主義は減点主義の反対です。
教育・訓練・指導ありきで、「知らないこと、わからないことは出来なくて当たり前。学習すればどんどん進歩する」と目線を低くし、肯定的に相手に関心を持つことで、成長を楽しみ共感できるようになります。
「結果を変えるには行動を変えるしかない」というのが鉄則です。
結果も大事ですが、結果が思わしくなくても、まずは好ましい変化の数、数が増えれば変化の質というように難易度を考慮しながら変化に注目すれば加点主義は効果を発揮します。
■プロセス重視
達成に向かって行動するプロセスで、適切な行動をしているかどうかを重視します。
「結果を変えるには行動を変えるしかない」のが鉄則です。
結果で相手をほめたりしません。
プロセス重視をする人の価値観で相手の価値を決めるのでもなく、相手の価値観でもなく、プロセスでの行動に変化を見つけ励まします。(◆プロセスに注目する)
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人格重視
重視と評価とは違います。
評価は評価する人の価値観で、評価される人にレッテルを貼ります。
一方、重視の場合は決めつけません。
人格を重視するとは、プロセス重視と同じく行動に着目します。
「頑張っているね」「よくやった」ではなく、具体的な行動を表現して共感を示します。
人格重視とは行為を主役にするので、行動が不適切であっても人格の問題にしません。
■聴き上手
■ヨイ出し
ヨイ出しはプロセスにおける建設的な行動に着目して励ますことでモチベーションを引き出す方法のひとつです。
ダメ出しが、非建設な行動に対して批判的な言葉を投げかけるのとは対極にあります。
結果を求めるがゆえに気になる点に着目しすぎてダメ出しが多くなってしまいがちです。そのため意欲をそぐ言葉が自然に多くなります。
それにしても、人の行動の大半は、建設的な行動が占めているという事実に注目します。
ヨイ出しの実行は、積極的に好ましい行為と変化の発見を積極的に行います。
どん欲に発見する目線が重要ですので、ある意味本人の努力以上に、管理者の発見する努力によって、火のないところに煙が出ることも起こります。
「結果を変えるには行動を変えるしかない」というのが鉄則です。
ライフスキル(自己認識スキル)を使い、感情に注目して、共感するようにします。
自分にも他者にも、ダメだしに偏りすぎる傾向がないか気をつけましょう。
■ 共感的態度
共感は他者との差ではなく、その人の長所や個性を尊重する態度です。
自分は自分、他人は他人と、ひとには境界があり、独自性があります。
いい意味でひとりひとりの人格を尊重できる態度で主体性を重んじます。
人にはそれぞれ得手、不得手があります。
小さなことでも光ることがあれば大切にしてあげようと心すれば、ひとつひとつの好ましい態度や行為を励ますことができるようになります。
そしてなにより重要なのは「感情」に注目してあげることです。
どのような関係であれ、愛情の本質は「励まし」です。励ましのない愛情というのは、相手に対する愛情というより、自分への愛情です。結果に関心を持つより、プロセスに関心を持つのが共感の際立った特長です。
ほめたり、叱ったりはプロセスに無関心でもできますが、信賞必罰の限界にもなります。
こどもの芳しくない成績を知ったときに
「もっとがんばって勉強すれば、できるようになる。テレビを見てないでもっと勉強しなさい。」という助言は、子どもの自尊心を傷つけるだけで効果的ではありません。
しかし、成績よりも感情に注目した言い方に変えると、こどもの反応は変わってきます。
「算数の時間がくると、早く終ってほしいと思うでしょう?」
「わたしたちをがっかりさせてしまうのが心配なんでしょう?」
「問題が解けなかったら、自分は馬鹿じゃないかと思う時ってあるでしょう?」
「もっとがんばればできるのに、自分はがんばっていないと考えたりしているの?」
成績が良いか悪いかは子ども自身が知っていることです。自分の子どもはそんなことも知らないと思いますか?そうではないですね。子どもは、そのときに不安になっています。そして孤独です。
こんなときに子どもに必要なのは困難に立ち向かう勇気です。
親の励ましは、勇気の源泉になります。
「もっとがんばって勉強すれば、できるようになる。
テレビを見てないでもっと勉強しなさい。」こんなひとことは勇気を与えてやれると思いますか?まず、ないでしょう。
ある男の子は、小学校3年になってしばらくして、勉強に自信をなくしていました。
明らかに1年生、2年生のときの成績と比べて低くなっていたからです。不安とあせり、迷いが生じていましたが、芳しくない成績表を持って帰ったとき、父親に理解のある言葉をかけられたことが転機になりました。
父親「自分が思うような成績をとれていないようだけど、
困っていること、つらいことはないのか?」
息子「僕は馬鹿なんだよ」
父親「どうしてそう思うんだ?」
息子「分らないけどバカなんだ。」
父親「だったら苦しいことがあるんだろ」
息子「ううん、そんなことないよ。」
父親「先生にしかられたり、みんなに笑われたりしたのか?
息子「ううん、そんなことないよ。」
父親「じや、そんなことにならないか、心配するときがあるのか?」
息子「たまに。」
父親「いいかい。お父さんの目には、おまえはがんばっているように思える。
だけど、おまえは自分自身を別な見方をしているように思えるんだ」
息子「どういうこと?」
父親「 お父さんもお母さんも おまえは自分を信じてがんばっているように思ってきたし、
いまもがんばっているように思える。
だけど、おまえは自分を信じられなくなっていないかってことだ。
自分で自分をバカだと決めつけて、
がんばってもどうにもならないのではないかと思い始めていないかってことだ。」
息子「そうだよ、一生懸命聴こうとしてもうまくいかないんだ。」
父親「 結果を気にするのでなく、先生の話していることだけを聴いたらいいんだ。」
息子「でも、よく分らないんだ。」
父親「 だから、事前に勉強しとくんだ。それで分らないことがあったら、
特に集中して聴くようにするんだ。
いいかい、1年生、2年生のときに、なんでいい成績だったと思う。」
息子「簡単だった。」
父親「 そうかも知れない。それにしてもなんでだと思う。
先生の話を聴く前に、もう知っていたんだよ。
でも、だんだんと進んでいくうちに知らないことがどんどん増えてきて、
それまでの調子では分らなくなってきたのかも知れないな。
もっと真剣に集中しないとよく分らないことが増えたんだ。」
息子「そうかな?」
父親「どうしたらいいと思う?」
息子「もっと真剣に聴く。」
父親「 そうだね、それは重要なひとつの方法だ、でもそれでいいと思うか?」
息子「分らない」
父親「 さっきヒントを言っただろう。
1年生、2年生のときには、先生の話を聴く前に、もう知っていたって。」
息子「そうか、先に知っておくようにしたらいいんだ。」
父親「そうだよ、それで分らないところを先生から聴くんだよ。
もし先生が授業でそれを話さなかったら、質問したらいいんだよ。」
息子「うん、分った」
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以上、コーチングのあるかたちです。
●プロセスに関心を持ち
● 孤独感に共感し、
● 安心させて、
● ヒントを出し、
● 気づかせて、
● 気づいた後にフォローのティーチングをしています。
こどもにとって痛みを知ってもらう嬉しさは格別で、
気づきによって自分で道を開いた実感は勇気に変わり、
ティーチングを励ましとして受けとめています。
教えた側の主体性は後方へ引っ込んでいて、こどもは自分の主体性を奪われることなく自分の足で歩んでいる実感を獲得しています。
コーチングには共感が前提にあり、共感にはアサーティブの自然な手助けが含まれています。
競争的な性質から共感は生まれません。
競争的とは自分への不信、劣等感から他者との差を比較して優劣を判断する態度です。
競争意識が働いていると、助け合う関係にありながらも、競争意識が災いして協力しあえないようなことが起こります。
先に説明した「共同体」の4つの輪が作れなくなります。
■ 失敗を容認
やる気を必要とするのは、多少なり困難があるからです。
「困難があるだろうけれど、やりたいと思うなら、やってみることだ」・・・相手に投げかける基本姿勢です。
モチベーションを維持したり、高める上で失敗を容認する姿勢はとっても大切です。
そして「やってみよう」と思ったときに、「自分がついているからやってみろ」と語れるほどに、相手は勇気がわいてきます。
「結果を変えるには行動を変えるしかない」というのが鉄則です。
以上、加点主義、プロセス重視、人格重視、聴き上手、ヨイ出し、共感的態度、失敗を容認するなどモチベーションを引き出す技術は、どれも独立したものではなく、因果関係があります。
それぞれモチベーションを高める技術の背景には、尊重・信頼、共感、自分の価値観を押しつけない、サポート、励まし・・・どれひとつとして外せないものばかりです。
人に要求したいことがある場合でも、ついつい「まあ、いいか」と伝えきらないまま勝手に妥協することが多い人、自意識が強い人の場合は、周囲の人へ注ぐ愛情の大半が自分に注がれてしまい、相手に愛情が回らないので、注意したいものです。
尚、愛情とは特定の誰かに向けるものだと思っている方がいるかも知れませんが、それだけが愛情のかたちではありません。
■ 発想の転換
■ 励ましのエコー効果
■ チームワークを使う