よく「自分探し」とかいいますが、自分を認識できるのはまわりの人が存在するからです。
まわりの人の存在を感じることができるのは、 自分とまわりの人の間に区別する境界があるからです。
自立した人間関係がしっかりとあるほど。自己認識はしやすいものです。
つまり 、自己認識スキルは、依存しない人間関係をつくる力と深い関係があります。
自己認識の基本は自分の感情を知ることができて、対処できることです。
簡単なようですが、なかなか出来ないのが実情で、近年ますます困難な傾向が強まっています。
自己認識ができず、感情に書き込まれると、その不快感に適切な対応をするか、気分転換するか、あえるいは放置したままになります。
適切な対応をするには、自分の感情を知っていないとできません。
気分転換するにも同じことがいえます。放置したままになるのは、どう対処していいのか判らない、つまり自分の感情を認識できないことに起因します。
自己認識の処理はひとによって違い、次の3タイプに分類できます。
自己認識ができるタイプ
自分の感情を知り、対処方法を身につけているひと。自律心が強く健全で活発な人生観を持つことができます。
状況が悪く不快感を持つ場面に遭遇しても、根気と意欲で迅速に脱出し、本来の自分のペーズを取り戻せことができるタイプです。ライフスキル全般の力を活用できるタイプの基礎的な力になります。
受け身タイプ
自分の感情を認識できるものの、自分でコントロールできず、感情に流されてしまうタイプ。
極端な表現をすると活発なタイプと憂鬱な感情に浸るタイプがある。
呑込まれタイプ
自己認識ができないので、自分の感情をコントロールできず、感情に翻弄されるタイプ。
状況に適切に対処できず自分の感情に圧倒される。ライフスキル全般の力を弱めてしまい。場合によればライフスキルがほとんど機能しないことも起こってきます。
普段 使うことのない言葉ですが、「自他境界」という言葉にどんなイメージが浮かびますか?
「自他境界」という言葉はなんだか難しい感じがしますが、 ここでいう境界とは、自分と他人とを分けるラインのことです。
境界がないと自分もまわりの人も区別がなくなってしまいます。
どんなに親しい関係でも、境界は必要です。
境界には心の境界と、身体、モノ、空間の境界があります。
たとえば、親子や親友同士でも。好みが違うことはあるでしょう?
干渉してほしくないと思うことは。どんなに親しい関係でも、起こることです。
何でも干渉したくなる。何でも同じ感じ方をしてほしいというのは境界がない状態です。
自立した人間として生きるには、境界を求めめるものです。境界があるから自己認識できます。
もし、 境界がない状態は自他の区別がない状態ですから、お互いのプライバシーお浸食していても気づかないことが起こってきたり、他人の言うなりになったり、他人を自分の思い通りしょうとします。
たとえば「自分のモノに勝手に触ってほしくない」ということがあります。
「ノックもなしに部屋に入ってほしくない」「自分の着る物に干渉してほしくない」も同じことです。つまり自分の世界に勝手に入ってほしくないと
感じることがあります。
それが境界なのです。
境界に壁を作るのはいいのですが、高い壁を作ってしまうと、外の世界が見えなくなり、まわりの人は入れなくなります。
低すぎるとまわりの人が勝手に入り込んできてしまいます。
境界は自分の気持ちに応じて、自由自在に変化するものでいいのです。
危険な人がやってきたら、思い切り境界のレベルを上げて侵入禁止にもするし、逆に大好きな友だちの近くだと低くしたくなるものだし、自然と低くなる。
考え事をしていたり、疲れていて口をききたくないときには、壁の高さを少し上げておく。
このように、自分で決めて調整することが大切なのです。
「それって、わがままではありませんか?」と聞かれたりしますが、そうではありません。お互い様だからです。
自分が境界を自分で決めるように、まわりの人も自分の境界は自分で決められるのです。
それを認め合うことが大切なのです。
境界は、人によって違います。あなたが「ここまでならOK」と感じるところ、それがあなたの境界です。
同じように、まわりの人にも境界があり、その境界線は人によって違うことに気をつけましょう。
そして、境界には心の境界と身体を含めた物理的な境界があることに注目しましょう。
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身体を含めた物理的な境界
体の境界には、持ち物や空間の境界・性的な境界も含まれます。
自分の持ち物、カバンなどに勝手に触ってほしくない、ロッカーや、カフェ・レストランなど公の場にも自分の空間があります。これも大切な境界です。
たとえば満員電車でなどでストレスを感じるのは、身体の境界を侵されているからです。
肩をポンと叩かれて、イヤだなと思う場合もあります。
私たちは他人があまりに自分の体に近づくと、不安・不快になりますが、イヤだと思うときは、境界を侵されているのです。
イヤと思う境界は人によって違います。境界を引くかは、自分自身で決めることです。
なかでも性的な領域は、心と身体が複雑に混じり合った境界ですので、特に大切にすることが望ましい領域です。
性的な問題は、人間としての尊厳、安全にダイレクトに関わっています。
たとえば身体的な特長を言われて不快感を強くもつのは、許可もなく境界を侵されたからです。
あなたに彼や彼女がいても、あなたに対してどこまでの接触を許可し、受け入れるかは、あなたが決めることです。
特にセックスには妊娠のリスクや性感染症の危険がともないます。
相手の「ノー」を受け入れない関係は、境界を踏みにじっています。
とてもではなけいれど、 愛情のある関係とは言えません。
よく、「自分のことだからどうしようが私の勝手でしょう」と言う人もいますが、 それは身体以外への影響に気がついていないことがあるから言える言葉ではないでしょうか?
気がつくことは少ないけれど、心へ与える影響が想像以上に大きいのです。
心へ与える影響が想像以上に大きいことに気がつかないまま、「自分のことだからどうしようが私の勝手でしょう」が間違っていないと錯覚してしまうのですが、
領域内に乱れが生じるということは、逆に境界ラインにも乱れが生じるということで、境界ラインの乱れは自分だけの問題ではなく、まわりの人にも乱れを要求することなのです。
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はっきり伝える
自己認識スキルは、自分と他者の境界を認識して、相手の感情を取り込まず、自分の感情や意見を相手に伝えるライフスキルです。
@自分の気持ちや考えを抑え込んでしまうのは、相手の感情を尊重しすぎることと、それに比べて自尊感情が低いことにあります。
その点からして、相手に伝えることが、どれほど大切なのか、いくら言ってもキリがありません。
きっばり断る
相手の要求に応じることばかりを優先していたら自分を見失うことになります。
相手との関係を破綻させずに。受け入れられない要求はきっぱり断ることは生きていくうえで必須のスキルです。
断る場面では、主に3種類の方法があります。
・断りたいのに我慢する
・怒りながら断る
・相手の気持ちにも配慮しながら、自分の意志を主張した形できっぱり断る
この内、断りたいのに我慢する」のと、「
怒りながら断る」は、その根本は同じで、自分が我慢するか、相手が我慢するかという対立的な処理方法です、
しかしもともと、どちらかが我慢するものではなく、互いの主張は認め合った上で、自分の主張を伝えればいいだけのことなのです。
相手の気持ちにも配慮しながら、自分の意志を主張した形できっぱり断るようにしましょう。
許可のない侵入を防ごう
身体の境界をしっかり守りましょう。
相手が近づきすぎたり、身体に触れてきてイヤだなと感じたら、どうしていますか?
たとえ相手が善意であっても、自分がイヤなことはイヤと表明していいのです。
表明の具体的な行動として以下のような方法があります。
- はっきり
「触らないでほしい」と言葉にして伝える
(善意である意味のことを相手が言ったら、ありがとうございます。でも私の場合は触られるのが好きじゃないので、ごめんなさい。)
- スッと一歩うしろに下がって距離をとる
- 相手に手のひらを向けて、近づくのを阻止する
- 正面ではなく横を向く
(接近しても正面で向き合うより、肩を並べた位置のほうが、不快感は少ない)
- その場から立ち去る
自分の 考え方を押しつけたり、あなたを自分の思い通りにさせようとする相手に対しては、
- 電話やメールなども含めて相手に接触する回数を減らし、境界を超えて侵入されない距離をとる
- 儀礼的に礼儀正しくして他人行儀にする。
といった心理的な境界のレベルを上げていることを態度で示すことで相手に気持ちを伝える方法もありますが、相手によっては分っていても分らないふりをして境界を超える場合もありますので、
アサーティブ・トレーニングを参考にしたり、訓練して以下のような方法で境界を守りましょう。
- はっきり言葉で「ノー」と言う
- 自分を尊重してほしいとはっきり伝える
- 自分の考え方を、相手がわかってくれるまで、説明して主張する
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心の境界
心の境界とは、考え方や気持ちの境界です。
目には見えないので、未熟なこどもには、心の境界はほとんど存在が確認できず、ひっくり返したおもちゃ箱のように、周囲と自分とが一体となっています。
思春期は、自分と相手とは別の人間だということがはっきりわかるようになる時期です。
初恋、親離れ、親友など、そのどれもが自分とまわりの人の区別を強化助ける役目を果たしています。
つまり必死になって、 自分と相手とは別の人間だと認識しょうとしているわけです。
その必然で、とても 孤独を感じるようになります。
この孤独がつらくて、親友といつも一緒にいて何もかも同じにしようとしたり、感じたいと思います。また恋人にいつもそばにいてほしいと願ったりします。また親にもう一度甘えたくなったりします。
この孤独に対する反応の仕方が男の子と女の子では、かなり違ってもきます。男らしく、女らしくと社会の目も違います。
しかし 結局は、相手と自分とは違うのです。
どんなに仲のよい相手でも、いつも自分と同じように感じることはなく、考え方も違うものです。結局まわりの人といることは孤独をより強く感じることを助長します。
孤独感こそ自他認識スキルに他ならないのですが、スキルではなく、感情として認識させるほうが強いようです。
そこで 楽しくないのに相手に合わせて楽しいふりをしたり、「つまらない人」と思われないようにしょうと話をとりつくろったりします。
しかし、自他認識スキルだと分っていたら、そんなことをする必要がないことに気づくものです。あなたは、あくまであなただからです。
逆に、あなたが大好きなことに、友人が興味を示さない場合もあります。友人でも、恋人でも、親子でも、同じことが言えます。
仲がいいことと「相手と一体化する」のとは、全く違うことなのです。
恋愛して、身も心もひとつになりたいと願うことはあります。
しかし、その実体は孤独からの逃避であって、依存です。
「アルコール依存症」といいますが、その依存と同じ意味です。
本当に親密な関係の基本は「応援する」ことにあります。
つまり、お互いの自分のままでいいのであって、それは「私は私」に他なりません。
応援は、それを積極的に認めた上で行うことです。
むしろ「あなたはあなた」だからこそ応援が必要なのです。
と、いうのは現実は 世の中には自分の思うように支配したいと思う人がいるのも本当だし、「私は私」「あなたはあなた」でいるには、それ相応の根気とエネルギーがいるからです。
たとえばあなたがダイエットしたくし。適切な食事を心がけていたとします。
一方、お母さんはあなたにおいしいものを食べさせてあげたいと思い、カロリーや成分を気にせずにごちそうを用意したとします。
こんなとき、どうしたらいいいのでしょうか?またどうしてそんなこのが起こるのでしょうか?
あなたにはあなたの考え方があっていい。
先生の言うことがすべて正しいと思う必要はないし、親だって同じことです。
でも ここで、気をつけてほしいのは、正しいと思う必要はないので無視してもかまわないということではないこと。
正しいと思う必要はないという意味は、自分を尊重していいんですよという意味ですので、裏返すと自分を尊重するように、相手も尊重するという意味です。
つまり「私は私」「あなたはあなた」の意味は「わたしもOK,あなたもOK」という意味で、「わたしもOK,あなたはNO」ではありません。
だから境界をきちんとしていくには10のスキルが必要になります。
自己認識 共感性
効果的コミュニケーションスキル
対人関係スキル
意志決定スキル
問題解決スキル
創造的思考 批判的思考 感情対処スキル ストレス対処スキル
以上10の技術のことです。
スキルを磨いていないのに、ひとつのスキルからの視点で、強調すると矛盾が生じてきます。
でもスキルが不足していると、自分も気がつかないのです。
「あなたの主張は単なるわがままでしかない」といった矛盾が起こらないようにしたいものです
自己認識スキルを育んでいくと、育むために以下のようなことが必要になったり、できるようになります。
- 私は私のままでいい……
相手に合わせて、決していいことなのに、いいふりをしたり、相手のために無理をせず、そのままの自分でつきあう。
そうすることで、まわりの人のことももっと分ってくるようになります。
なぜなら 相手に合わせて無理している間は、実は相手のことを考えているというより自分が相手に嫌われないかと自分のことばかり見ているからです。
自分を自分のまま表現することができるようになると、お互いの弱さを受け入れることができ、より親密な関係が築けます。
また自分の長所を認識することができ、自信が持てるようになります。
- 自立心ができる……
相手に引きずられて決めるのではなく、自分がどうしたいのかを自分で決めるようになる。選択は自分でしている。自分で選択できる実感が責任感を強めます。そして責任をとれるようになりたいと思うようになります。自分のことは自分でできるようになれば、自分のことは自分でしたいと思うようになります。
決めたことがうまくいかなくても相手のせいにしない。自分のことは自分でできるようになります。
- 共感できる……
一緒にいても、相手に合わせているのでは、一緒にいただけのことです。
私は私のままだから、共感することが可能になります。
すると一緒に過ごす時間を持つことで、その機会を通してお互いに大切にすることができるようになります。
- 価値観を明確にして、別々でも楽しめる……
寂しさに飲み込まれずに、自分と相手は別なのだと意識できるようになると、相手の時間や考え方など、相手の自由を束縛しなくなる。
お互いの価値観を率直に認めることができて、別の友人と過ごしたり、一人で楽しむこともできるようになります。
- お互いの権利や責任を意識して話し合う……
なにごとか、あるいは関係に問題が発生したり誤解が生じたとき、感情的にならずに、客観的に率直に話し合える。互いの権利や責任を認識した上で話し合うこともできます。
- 成長を認め合う……
自分の短所を認識して、否定して終わりではなく、自分の能力に対して現実的な期待することができるようになります。
同じくまわりの人の成長を心から応援し、喜ぶことができる。お互いに新しいことに興味をもったり、考え方が変化していくことを認めることができるようになります。
- 応援する……
相手がつらいときは、そばにいてあげたり、自分のことのように真摯に話を聴いてあげる。
自分の価値観を押しつけずに、いま相手がどうしたいのかを聞いてあげて、実行を応援する。
これらの変化によって、空想や妄想ではなく、自分の短所を具体的に知って、どうすれば改善できるのかと具体的に対策を検討、実行できるようになります。
現実的な自己イメージに基づいて、自分の能力いっぱいの範囲のことはやったらできるとの意識のもとに意志決定をすることができるようになります。
大切なのは、小さなこどもと違って、毎日ささやかなことから重要なことまで、いつでも選択は他の誰かがしているわけではなく、自分がしているんだといういう事実を意識をはっきり意識することです。
その上で 自分で決めるということが大切です。
自分の決めたことは、結果がうまくいかなくても他人のせいにしない。自己責任なんだと、これも大切な心の境界です。
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相手への侵略
私たちは、つい自分の都合ばかり考えて相手の境界を超えて相手の領域に侵入してしまうことがあります。
また、善意のつもりで。気がつかないまま、境界を踏みにじって、相手の領域を勝手に歩き回ってしまうこともあります。
知らず知らずに境界を侵略していないか、たとえば友人、恋人に対して、次のようなことをやっていないか振り返ってみましょう。
- 相手の持ち物を自分の物のように扱っていないだろうか?
ノートを勝手に見る、断わりなくカバンの中身を見るような類似行為はないか
- 相手の時間を占領していないだろうか?
都合を聞かずに自分のペースで長々と話す、自分の用事ばかりにつきあわせるなど。
- 相手がやるべきことまで、あれこれ世話をやいていないだろうか?
「こうしなさい」「こう言いなさい」「私が代わりにやっておいてあげるから」と、相手より先走ってどんどん自分が決めてしまうようなことは境界を超えていますので慎みましょう。
- 知りたがり屋さんにになっていないだろうか?
彼の携帯のメールを読む、昨日誰とどこへ出かけたか、テストの成績はどうだったかなど、友だちや恋人なら、すべて報告して当たり前だと思っている。
- なんでも期待通りにしてほしいと思っていないだろうか?
たとえば自分の気持ちを汲み取って行動してほしがったり、あるいは自分以外の別の友人と出かけたことを怒ったり責めたりする。
- 好みを押しつけていないだろうか?
自分が夢中になっているものに同じように相手が興味を示さないと、不満を感じて、機嫌が悪くなったりバカにしたりすることはないか。
- 考え方をおしつけていないだろうか?
「そんなふうに感じるなんて絶対ヘンだよ」「どうせあなたには無理」「男ならそうするのが普通でしょう」など、決めつけて自分の考えを押し通す。
どうですか?どれも自分と相手の境界がないですよね。
どの行為も相手の領域を侵犯しています。
そういう傾向の強い人ほど不思議に自分の領域に無断で入ってこられると機嫌が悪くするものです。
共感性に乏しい面があるからですが、「自己否定、まわりの人否定」あるいは「自己否定、まわりの人肯定」の構えが強いからです。
つまり自己認識が弱い、自己アイデンティティが弱いからです。
その原因は自分とまわりの人の間に区別する境界を曖昧にしているからですが、自分よりまわりの人を尊重しすぎている傾向が強いのです。
ライフスキル(自己認識スキル)を使い、感情に注目して、共感するようにします。
自己認識スキルを育てて、「自分もOK,まわりの人もOK」の構えを身につけるようにしましょう。
自己認識を健全に育む方法として、親がこどもの感情に共感することはとても有効です。
しかし、多くの親はこどもの感情より行為に注目してしまうため、こどもの感情に鈍感になることが少なくありません。親は注意したいものです。
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ライフスキル
ゲンキポリタンとライフスキル学習
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