エルビス映画は最初、ジェームス・ディーンに代表されるタイプの『ティーン映画』だったが、61年の「ブルー・ハワイ」から『ビーチ映画』に舵をとる。
その頃、20世紀ファックスはパラマウントとは、ジャンルを変えて「嵐の季節」「燃える平原児」のような”ティーン映画成長版”を撮る。
最終的にエルビス映画はパラマウントのスタイルが主流になるが、このパラマウント、20世紀フォックのスタイルの違いには当時の事情がある。
弟二次世界大戦も終わり落ち着きを取り戻すにつれ、若者をターゲットに主に1954年から1969年までマーケットして製作されたティーン向けの映画。
その主流となったスタイルが、ジェームス・ディーンに代表される怒れる若者スタイル。
しかし60〜61年までの間、ティーン向けの映画は不発。
「嵐の季節」「燃える平原児」はこの時期の作品だ。
ティーン向けのマーケットに活路を開いたのが、『ビーチ映画』だった。
1959年、ジェームス・ダーレン、サンドラ・ディーが主演したコロンビア映画「ギジェット」が大ヒットしたのがはじまりで、シリーズ化された。
61年の大ヒットした「ブルー・ハワイ」は、「ギジェット」にヒントを得て、贅沢に製作したような作品で『ティーン映画』に方向性を示した作品ともいえる。
『ビーチ映画』は63年から66年の間に集中した。
時はケネディ大統領、リーゼントと打って変わってクールカット、歌、踊り、恋、海、サーフィン、そしてなにより親がでてこない、『ティーン映画』と違い家庭不和も離婚もない。若さは永遠。
このジャンルにはフランキー・アバロンが有名。
次々とテレビからスクリーンに登場。かってのベテラン俳優が脇に回って作品に重みを加え、フレッシュな女優が観客動員に貢献した。コニー・スティーブンスやラクエル・ウェルチらもそうだが、なかでもパメラ・ティフィンは最高だった。
エルヴィスのガール・フレンド役で登場しなかったのが不思議だった。
日本でも同じ現象が起こっていて、「太陽の季節」から明るい「若大将シリーズ」に変化したのと同じだ。若大将に登場する星由里子扮する澄ちゃんには家庭がまったく匂わない。また若大将には母親は登場せず愉快なおばあちゃんが登場する。ここでも 登場人物全員に家庭の匂いがなく家庭不和も離婚もない。
62年からサーフィンが映画に押し寄せて、65年まで続いた。
トレンドのコアにはサーフィン・カルチャーがあり、その伝達方法として、サーフ映画と音楽が市民生活に浸透、広がりをみせことになる。
1966年にはサーフィンの古き良き時代を記録した映画「エンドレス・サマー」が公開される。カメラ技術の進歩を得て、サーフィン映画が続々と製作された。
しかしドラックとセックスが解放された社会の到来で、エルビス映画、ビーチ映画など永遠の若さを看板にしたB級映画はその役目を終え、終焉を迎える。
ベトナムへ駆り出される現実、夢を見るには明日は遠くなった。
プロデューサー、ハル・ウォリスにすれば、「GIブルース」はハル・ウォリスのためにエルヴィスが軍隊に行ってくれたようなもので、「ブルー・ハワイ」は唯一プロデューサーの手腕が光ったヒットだと思う。
映画においてエルビス映画はトレンドに乗ろうとしただけで、革新性は全くなかったといえる。革新性がなかったのは人種差別、ベトナムを除けばニュースな時代ではなかったからといえる。
もし革新性を求めるなら映画づくりにおける技法に求めるしかなかったのではないかと思うが、それでエルヴィス自身が輝いたかどうかには疑問が残る。
1969年「イージー・ライダー」は予想もしない大ヒットを記録した。
その背景にはアメリカの現実があった。つまり「イージー・ライダー」はニュース映画だったのだ。
一方、エルヴィスはエンターテイナーとしてラスベガスに向かう。。。
10年後・・・1979年には、「ビッグ・ウェンズデー」「地獄の黙示録」が公開された。ベトナムの傷を背負った映画だ。
あのフランシス・フォード・コッポラ監督&マーロン・ブランドの狂気の映画「地獄の黙示録」に「イージー・ライダー」の監督デニス・ホッパーが出演。ドラック中毒だったは頻繁にコッポラ監督と衝突したのは象徴的だ。
しかし、それ以上に象徴的だと思うのが、ベトナムの海でサーフィン場面が登場することだ。
思えばエルヴィスが麻薬やドラック問題に言及、ニクソン大統領と面談したことが奇異でないことが見えてくる。
俺は言ったよ「頼むぜベイビー、
俺は一日中仕庫して足が鉛のように重いんだシャツのすそははみ出してるし
額には玉の汗」
彼女は君ったよ「ボサ・ノヴァ・ベイビー、止まってはだめよ
今は休んでる場合じゃないの」
彼女は君ったよ「ボサ・ノヴァ・ベイビー、踊り続けるのよ
せっかくノッてきたんだから」
ボサ・ノヴァ
ボサ・ノヴァ
俺は言ったよ「ちょっと座って
飲みながらバンドの演奏でも聞かないか」
彼女は言った「お酒を飲んでバンドですって
私ならお酒を持ったまま踊れるわ」
彼女は言ったよ「ボサ'ノヴァ・ベイビー、止まってはだめよ
お酒なんて飲んでる場合じゃないの」
彼女は言ったよ「ボサ・ノヴァ・ベイビー、踊り続けるのよ
考えてる暇などないんだから」
ボサ・ノヴァ
ボサ・ノヴァ
俺は冒ったよ「ねえベイビー、ここは暑いけど
外はすごく涼しいよ
1ドル貸してくれれぱガソリン入れて
ドライブにいかないかい」
彼女は言ったよ「ボサ・ノヴァ・ベイビー、止まってはだめよ
ドライブなんてしてる場合じゃないの」
彼女は官ったよ「ボサ・ノヴァ・ベイビー、踊り続けるのよ
でなければ他の人在見つけるわ」
ボサ・ノヴァ
ポサ・ノヴァ…
ボサ・ノヴァ・ベイビーはカッコよかった。
ひたすらカッコよかった。
なぜか自分には植木等がかぶってみえたが、それがカッコよかった。
エルヴィス・プレスリーというと、シャンプスーツより、
白いジャケット、黒いネクタイ、黒いパンツ が真っ先に浮かぶ。
それほど<ボサ・ノヴァ・ベイビー>はカッコよかった。
I said "Take it easy
baby, I worked all day
And my feet feel just like lead
You got my shirt tails flying all over the place
And the sweat popping out of my head"
She said "Hey, Bossa Nova Baby, keep on working
For this ain't no time to quit"
She said "Go, Bossa Nova Baby, keep on dancing
l 'm about to have myself a fit"
Bossa Nova
Bossa Nova
l said "Hey, Iittle mama, Iet's sit down
Have a drink and dig the band"
She said '"Drink, drink. drink, oh, a-fiddle-de-dink
l can dance with a drink in my hand"
She said "Hey, Bossa Nova Baby, keep on working
For this ain't no time to drink"
She said "Go, Bossa Nova Baby, keep on dancing
Cause I ain't got time to think"
Bossa Nova
Bossa Nova
l said "Come on baby, it's hot in here
And it's oh so coo outside
If you lend me a dollar, I can buy some gas
And we can go for a little ride"
She said "Hey, Bossa Nova Baby, keep on working
For I ain't got time for that"
She said "Go, Bossa Nova Baby, keep on dancing
Or l'll find myself another cat"
Bossa Nova
Bossa Nova....