●G.I.ブルース(G.I.BLUES
)
もっともエルヴィス・プレスリー的なもの。それは励ましのこころ
軍隊帰りのエルヴィス・プレスリーが主演した「G.I.ブルース」はミュージカル・コメディの傑作。
その同名主題歌<G.I.ブルース>は、マーチ風の楽しいロック・ナンバー。
エルヴィスの勇気がいっぱい行進している<G.I.ブルース>は聴いて壮快!歌って敬礼。
本国ではシングルリリースもされず、ベスト盤に収録されることもない<G.I.ブルース>
その 誕生のプロセス・・・エルヴィス登場、パッシング、人気絶頂時の召集、入隊反対運動、ドイツ駐留、母の死、生涯の妻プリシラとの出会い、帰国、カムバック・・・に思いを馳せると、そこにはエルヴィスとエルヴィス・プレスリーを愛した人の幸福がいっぱいつまっていて、とってもうれしい気持ちになります。
群集心理を考えても分かるように、人はひとりでは勇気が出なくても、ふたりなら勇気を出せるのです。
だからこそ、ひとりひとりが気をつけて、
すてきに群れないといけない。きっと。
すてきに群れよう、群れたいね。
<G.I.ブルース>を聴いたら、そう思わずにいられない。
エルヴィス・プレスリーのコンサート。。。
イントロが演奏されて・・・ひときわ大きなざわめきと拍手と歓声。
あ、出てきたな。中央に向かって進んでいる。
CDで聴く、それが格別好きです。熱くなります。
エルヴィスのコンサートもいまは遠い昔。
世界中では、ますますいろんなコンサートが開催され、大観衆を集めます。
その規模は拡大するばかりです。
5万人集まった、10万人集まった。数字が支持されるパワーを示します。
ボクはこの国はダメになっていくばかりという危惧から、エルヴィスに絡ませて「共同体」「コミュニテイ」のことを問題にしてきましたが、最近、よく「共同体」あるいは「パブリック」という言葉が聞かれるようになりました。
ようやくという感じで、現代日本は共同体への意識が希薄、あるいは破壊されているのではないかと疑問視する声が大きくなりつつあります。
エルヴィスは「共同体への所属」を強く望んだスターだというようなことを書いてきました。
人の行動には目的があります。
兵役を免れようとすればできたのを、あえて入隊したのもエルヴィスの強い望みが働いたからに他ならないでしょう。
入隊はエルヴィスが何かを達成する手段でした。
あれほど有名になり、愛され支持されても、人気や所得では解決できない思い・・・アメリカ国民であることと、人気も所得も別問題でした。
50年を過ぎて・・・
兵役に就いたことを蔑視する音楽評論家らしい人が少なくありません。
モハメッド・アリの行動や、ジョン・レノンの言葉に影響されたステレオタイプの批判のようです。
ベトナム戦争に反対したアリ、またジョン・レノンは「エルヴィスは軍隊に殺された」というようなことを言ったらしいですが、エルヴィスは自分で選択したわけだし、行為から判断したら、行きたかったのだから、それも筋違いだと言えます。
モハメッド・アリは拒否することで、エルヴィスは承諾することで、それぞれが希求する共同体に所属しました。
とった行為は反対に見えても、彼らが求めたのは、自分に誇りをもたせてくれる居場所でした。どちらも同じく民衆のいる場所です。
人は誰も独りでは生きていけません。
群れを嫌い離れて暮らす者でさえ、群れから離れ距離をおいても、距離をおくことで群れに所属しているにすぎません。
アリの反戦行為もジョン・レノンの主夫的暮らしも根底にあるのは群れへの強すぎる憧れです。
もっとも小さな共同体は二人からなる友人、恋人、法的にも認知された夫婦からです。
少し大きくなると家族、会社やグループ、地域。そして国民。
カナダのホームタウン。
どの家の軒先も同じ花が植えられて統一された光景はとってもきれいでした。
コミュニティを守る姿が美しいのです。
ボクが自由の意味を考えるきっかけになりました。
共同体の価値は数ではなく、心のつながりです。ではないでしょうか?
心のつながりとは、励まし、励まされ。。。
「励まし」に他ならないでしょう。
あなたがいてくれるだけで、励みになる。
心のつながりとは、そういうものでしょう。
客観的に判断すると、決して正しい子育てをしていたとは言いがたい母グラディスだったとしても、
エルヴィスは励ましをいっぱい受けたはずです。
エルヴィスはそれに一生懸命応えることで、励まし返しました。
有名になり、お金持ちになり、母グラディスを幸福にしてあげました。
次に、より大きな共同体に、自分の居場所を求めて、自分をより確かなものにしたかったのでしょう。
兵役に就くことを判断するにあたって、肩を抱きしめ、背中を押してくれたのが、ファンだったのではないでしょうか?
「あなたは必要だ」「あなたはすてきだ」
入隊反対運動をしてくれる励ましは、たいへんな勇気になったのではないでしょうか?
エルヴィスはその幸福を生涯忘れることはなかったのではないでしょうか。
一個人の体験では、こんな幸福な体験ってそうそうあるものではないですから。
皮肉にも、異常な人気と支配的で偏ったマネジメントによって、エルヴィス・プレスリーの世界は限定された世界になっていきました。
ファンとともに生きる場所こそが、エルヴィス・プレスリーの居場所になりました。
エルヴィスにとって主な公共の場は、
スクリーンと観客席、ステージと観客席だけ。
あとはレコード(CD)とステレオ装置。
♪ヒーローに憧れるのに
来る日も来る日も行進ばかり♪
1、2、3、4・・・エルヴィスの仕事。
それが良かれ悪かれ、それがなんであってもエルヴィスはいつでもエルヴィスでした。
とっても田舎くさく、妙に生真面目で、どこかインチキくさく、本気なようで、手を抜いていそうで、だけどどんなにだらしなくても、いつもやさしく、温かく、、、
エルヴィスはエルヴィスでした。誰にも似ていない唯一無二のエルヴィスでした。
ステージ上の表情、動作、それは励ましそのものでした。
1、2、3、4・・・
ファンはその実情を呼吸することで知っている。
人はみんな違うことを認めた心の芯からのやさしさもあれば、
同情することでカタルシスを味わう気質もあれば、ただただ声に魅せられた喜びもある。
人はそれぞれ違い、いろんな感じ方があるので一概にひとつにくくっては言えないけれど、
言葉交わすことも、顔をあわせることがなくても、心はエルヴィスにむずびついていました。
ボクはナニをやってもボクでしかない、よくきてくれたね。
写真撮りたいの、どんどん撮っていいよ。
握手したい?いいよ、キスがいいの?いいよ。
汗のついたハンカチがうれしいの?いいよ、あげるからね、
・・・君は君のままでいいんだからね。
1、2、3、4・・・
ファンサービスという言い方でくくってしまえばそれまでのことです。
それまでなのですが、他者を受けいれ、励ますことで、
エルヴィス自身が励まされ、互いが尊敬しあう共同体として機能していたからこそ、
未だにエルヴィスは大きすぎるアイコンとして存在しているのではないでしょうか?
私たちはナニをしてもあなたが好きよ。元気でうれしいわ。
そんな歌が好きなの?だったら歌えばいい。心込めて聴くからね。
そんな映画に出るの?あまりおもしろくなさそうね?
でもいいよ、あなたが出ているのなら仕事休んで見るからね。
芸能人のファン、ファンクラブという領域を超えたなにか?
それは映画「グレイスランド」を見てもわかります。
劇中、何度も繰り返させる言葉「キングを忘れるな」
それは励まし以外のなにものでもない。
「君にはエルヴィスがついている。君はすてきだ。君はやれる」というメッセージ。
実は、エルヴィスがみんなからもらったメッセージに他ならないでしょう。
もっともエルヴィス・プレスリー的なもの。
それは「励まし」ではないでしょうか?
励ましとは、ただただ相手を見つめ続けて、
なにがあっても、それでも私はあなたを愛していると信じる心を
広い空いっぱいに投げること。
人はみんな誰もひとりでは立てない場所に立たなければならないからです。
コンサートのエンディング・ナンバーとして歌われ続けた
<好きにならずにいられない>
もう、行くよ。
でもね、自分の好きをあきらめてはいけないよ。
その場の最後の励ましとして、戦友との別れにも似て、歌うもの、聴くもの両者の命輝いて素敵です。
居場所があるって、素晴らしいこと。
そして誰にも居場所はある。ないなんてことはない。
きっとだれにも、「あなたがただいてくれるだけでうれしい」と
思う人がいてくれるはずです。
あるいは、去ってしまったエルヴィスのように
「あなたがいてくれただけでいまもうれしい」と思える人がいるはずです。
♪泥と油で濁ったテキサスの
汚い小川がいいんだよ ♪
美しいライン河の眺めより、汚い小川がいいのは、そういうことのはず。
軍が与えてくれた部屋からは
美しいライン河の眺め
軍が与えてくれた部屋からは
美しいライン河の眺め
でも泥と油で濁ったテキサスの
汚い小川がいいんだよ
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
ドイツ風シチューと
黒パンが俺たちの食事
ドイツ風シチューと
黒パンが俺たちの食事
来月の給料が飛んでもいいぜ
テキサス・ステーキが食べれるなら
ヒーローに憧れるのに
来る日も来る日も行進ばかり
ヒーローに憧れるのに
来る日も来る日も行進ばかり
橋から落ちたくらいでは
勲章なんかもらえやしない
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”
うんざりさ
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
花よりきれいなドイツの娘たち
なのに近づくこともできゃしない
花よりきれいなドイツの娘たち
なのに近づくこともできゃしない
だってみんなの胸には
「私の芝生に立入禁止」のサイン
*まいっちまうぜ、1、2、3、4
仕事は”G.I.ブルース”、
G.I.カットのてっぺんからG.I.シューズの踵まで
早いところ、生まれ故郷のアメリ力に帰れなきゃ
頭のヒューズが飛んでじゃうぜ
(嘆きが仕事のG.I.ブルース)
嘆きが仕事のG.I.ブルース
(嘆きが仕事のG.I.ブルース)
ハウディ
すてきに群れよう、群れたいね。
幸福がいっぱいつまった<G.I.ブルース>を聴いたら思わずにいられない。
1、2、3、4・・・1、2、3、4・・・
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