エルヴィス・プレスリーが公に遺した楽曲は全部聴いているつもりでも、抜けているかも知れない。
さらに一度は聴いたけれどほとんど聴いていないものとなるとかなりあるはず。
<ザ・ガール・アイ・ネパー・ラブド>も何度聴いたが、繰り返し繰り返し聴いた記憶がない。
<ザ・ガール・アイ・ネパー・ラブド>が挿入された「ブルー・マイアミ」も熱心に観た映画ではい。
DVDボックスでリリースされたのを期に購入したが、いままで開封していなかった。
「ハワイアンパラダイス」はともかく、激しくワクワクしすぎた「フランキー&ジョニ−」から記憶が曖昧になった。
ジェットコースターがついらくするようなめまいのせいで「カリフォルニア万才」「ブルー・マイアミ」「スピードウェイ」は脳のなかであるべきシーンが抜けてしまい、いきなり違う場面にジャンプしまくって、どれがどの映画かずっと長い間分からなかった。
いま、こうして、使われなかった映画を見て使われなかった思いを考えている。
話は飛ぶが、“グラインドハウス”好きの監督の同志、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが組んだ「グラインドハウス」が面白い。
クエンティン・タランティーノが監督した「デス・プルーフ」とロバート・ロドリゲスが監督した「プラネット・テラー」の2本からなり、アメリカではその名の通り2本立上映された。
「デス・プルーフ」にはコンビニのレジにエルヴィスが登場した。
「グラインドハウス」とは、B級映画専門のチープなB級映画を2、3本立で上映する映画館のこと。
全米同時公開されるような代物ではないのでプリント数が少なく、フィルムが劇場を回って行くうちに消耗して損傷する。
そのため雨が降ってるように映ったり、音がかけたり、時にはフイルムを紛失することもある、「デス・プルーフ」「プラネット・テラー」は、それを故意に再現している。
なかでも「プラネット・テラー」のフィルム一巻粉失のため、あるべきシーンが抜けてしまい、いきなり違う場面にジャンプするのは最高。こういうことって日本の場末やローカルの三番館、四番館ではよくあったこと。
記憶に鮮明にあるのは」二十四の瞳」。
幼すぎて内容はなにひとつ分らないのだが、画面に降る激しい雨だけははっきり覚えている。
途中が飛ぶ映画は多かったように思う。
だから「プラネット・テラー」でその感触に接したとき、鳥肌がたつほどうれしかった、
日本ではB級の新作を2本立上映する劇場があり、ウエスタン、蛮族もの、ホラー、SF、ディスニーの実写版が印象的。そこで上映された映画とA級の作品を組み合わせて二番館、三番館で再上映、再々上映していましたね。
あるべきシーンが抜けてしまい、いきなり違う場面にジャンプするのは三番館あたりでした。
幼い自分は眠くてたまらなかった「ベン・ハー」、分らないなりに面白そうな雰囲気が記憶に残った「リオ・ブラボー」などを観せられた。
封切館と違って2番館、3番館は五社協定に関係しない立場にあったので、東宝・東映・大映・日活・松竹からなる五社の日本映画3本立と洋画3本立に分かれていたが、時には日本映画と洋画の組み合わせもあった。
エルヴィス・プレスリーの存在を知ったのもそういう劇場で。「恋のKOパンチ」だった。同時期に「ガール!ガール!ガール!」をロードショー館で観た。
ロードショーという表現はA級作品を1本だけ上映する劇場だけが使っていたと思います。
「いかすぜ!この恋」「ハレム万才」あたりが公開当初から2本立上映。
エルビス映画はテイストはB級だけど、エルヴィスの存在が超A級。そのアンバランスが不思議なテイストこそエルビス映画の特長だ。
最近はDVDでくり返しみることができて、ようやく「カリフォルニア万才」「ブルー・マイアミ」「スピードウェイ」の物語も整理できた
すると、永年ぼくが使わなかった場面と楽曲があることを知った。
エルビス・プレスリー主演映画「ブルー・マイアミ」のポスター
失意のエルヴィスが浜辺でひとりで歌う、それを陰でシェリー・フェブレーが見ているというベタベタなシーン。でもエルヴィスのハートフルな歌声は胸に来ちゃった。
<ザ・ガール・アイ・ネパー・ラブド>です。
これはCDで聴くより映画で聴く方がいい。この映画では<快適な家>も同じくいい。
歌が終わってシェリー・フェブレーと会話しているときのエルヴィスの表情もとってもいいです。
愛する機会のなかった娘は
ぼくの気持ちを知る二ともないだろう
彼女を思い見た夢は
決して分かち合われることのない夢
あの娘がまぶしくてたまらない
もしかしたらってこともあったかも
でもこの恋、始まる前から終わっていたのさ
僕が交わすことの出来なかったキスは
他の誰かが交わすだろう
たてる二とのなかった二人のプランは
他の誰かがたてるだろう
ああ、寂しくて寂しくてたまらない
僕の心の中にはあの娘だけでも
彼女はいつまでたっても
僕が愛する機会のなかった娘
(翻訳:川越由佳氏)
<ザ・ガール・アイ・ネパー・ラブド>を聴きながら、
せいぜい使わなかったものを使うようにして暮らしたいと思う秋です。
エルヴィス大好き人間にも、使わなかったエルヴィスの魂があると思います。
特に使えなかった愛にいつまでもこだわっている人、
しかも日頃、そんな話をしたことがなく素振りも見せなかった人に出会うと 胸キューン。
体験にこだわっている映画があれば、
体験にならなかった過去にこだわっている人がいる。
使われなかった思いや人生が路上にあふれている。
THE GIRL I NEVER LOVED
Will never know I care
And all my dreams of her
Are dreams I'll never share
Oh, I want her and I need her
And I know it might have been
But it ended long before it could begin
The kiss I never got
Somebody else will take
The plans I never made
Som8body elBe wili make
Oh, l'm lonely, l'm so lonely
Cos it's her l'm thinking of
But she'll always be the girl
l never loved, never lovBd, never loved