包装紙
ボブ・ディラン、ジャニス・ジョプリン、エルヴィス・プレスリー・・・彼らの声には歌詞や楽曲を越えて、メッセージしてくる力がある。あったこともないのに友人の声をしているからたまげる。
とは言うものの 、本当のところ、その程度ではまだまだ驚かない。
声には、言葉の意味とは別のことを伝える力がある。それが愛する人の声なら特によく聞こえる。
しかし時には、声がなくても、行為とは別のことを伝える力がある。
寒い朝。★ちゃんは包装紙を持っていた。声もなく、ただ持っていた。
自分は彼女が何を言いたいのか、分かった。
それは静かだけど、身と心をひとつにした精一杯の叫びだった。
心配しなくていいんだよと、ハグしてあげたくなった。
誰かを愛することは、自分の愛する能力を集中することだと思う。
そしてキャンパスに絵を描くように、愛する能力を自分の気持ちの上に形にすることだ。
山や川の名前を知らなくても、一生懸命に絵にすることができるように、名前も年令も何も知らなくても、自分の命をこめて、愛することができる。
話すことが出来ずに、ただ見ているだけの状態は、ほとんどの人はつまらないと思う。
しかし、 つまらないとか、うれしいとかの問題ではない。愛しているのだ。
愛する能力を集中すれば、それを自分の気持ちの上にはっきりと形にできる。
自分はそれを ★ちゃんに与えてもらった。クリスマスの出来事だ。
紙一枚で伝えることもできる。紙一枚で受け取ることができる。
この包装紙は宝物だ。