モチベーションを引き出す7つのルール
共同体・他者期待・価値要因
共同体・他者期待・価値要因
人は、一人で生きていけない性質の生きものです。さらに人は自分の存在を認めされたい欲求があります。つまりひとり自分のためにやる気を出すには限界があることを意味しています。
共同体や他者からの期待は、自分の存在を肯定的に認められている証明ですから、意欲のきっかけ、支えになります。その一方で、自分が想像できる対応範囲を越えると重圧に変わることもあり、責任回避に走る場合も少なくありません。
責任の重さから責任回避に走った事例をご紹介します。
愛し合って結婚、やがて子供が授かります。この頃からご主人に微妙に変化が起こります。仕事の責任が重くなる一方で、育児、さらに将来を考えた責任感のストレスから胃潰瘍になります。その反動で浮気に癒しを求めます。やがて浮気がばれて離婚。
決して無責任でなく、責任にこだわったために、無責任になってしまった事例です。
万能感が未解決だったために、一歩一歩、責任をクリアしていくことにつまずいた事例です。この場合、相談などして、不安を安心に変える作業をこまめにしていればよかったのでしょうが、全部自分で背負ったことが裏目に出たと言えます。
このように、共同体・他者期待・価値要因は、自分の内側から起こるモチベーションアップというより、外側から入ってくる要因ですので、インセンティブの性格が強いモチベーションアップの要因です。
ですから影響を与える側のこまめな配慮が必要です。当人の状態を把握する必要から心通わせるコミュニケーションが必要です。
特に「あの人と一緒に働きたい」「あの先生に学びたい」と思わせるモチベーションを引き出せるリーダーの存在は効果的です。特に現代のようにポストや金銭的な報酬で返しにくい状況では、その存在の効果には大きなものがあります。
「あの人と一緒に働きたい」「あの先生に学びたい」と思わせる力は、リーダーの能力も大事ですが、なにより伝えたいことの価値と伝える思いの強さ、コミュニケーション・スキルが影響します。
ところがこれが、すでに「自分のためにやる気を出すには限界がある」を意味しています。
次に、ある事例をご紹介します。
平社員のときからの頑張りが認められて、課長になった時は、水を得た魚のように奮起。仕事も趣味にも目覚ましい活躍を続けます。その甲斐もあり、部長に昇進。誰もが認める昇進でした。ところが、その途端、体の不調を訴え出社拒否が始まります。得意のゴルフも拒否、病院で診察を受けますが原因不明のまま「ストレス」と判定。日を追うごとに生気がなくなり、別人としか言いようがない状態にまで変わってしまったのです。
その後、再び会社に戻ることも、以前のようなエネルギッシュな人に戻ることもありませんでした。
上司の影響力を受け活発に楽しく仕事していた人が、自分が部門の長になったことで、支えを失い、重圧だけが残った状態になったのです。
「自分のためにやる気を出すには限界がある」だから「あの人と一緒に働きたい」気持ちは支えになり、意欲になります。しかし、「あの人」がいなくなった時、時には自分が「あの人」のなり、周囲の人の支えになり意欲の源にチェンジしていくことが必要になります。
それを重圧と思うか、励みと思うかは、ちょっとしたスイッチチェンジ、物の見方を変えることでできます。
しかし、急激な変化は難しいので、日々少しずつシフトしていくようにしておけば、対応できるのです。この事例のように、これほど力のある人でも、心の在り方で崩れてしまうことがあります。
しかし、それを性格、心の弱さと考えず、技術だと割り切って知識と実行を心がけるようにすることをおすすめします。
それには「価値観」の整備が大きな役割を果たします。先にお話したように、人は、一人で生きていけない性質の生きものです。さらに人は自分の存在を認めされたい欲求があります。つまり価値観は自分ひとりで納得できるもので終わっていたのでは、意味を為さないとことを意味します。あるいは限られたグループ内でのみ共感する価値観であってはいけないのです。
本来、価値観は個人的なもので、共同体に迷惑をかけないものであれば、認められるべきものです。しかし他者と協調して生きて行く場合、それだけでは共感、共有できません。
共感には、同じ価値観が欠かせません。迎合するのでなく、同じ価値観に立とうとしたとき、その基準になるのが、普遍性のある価値観、つまり良心に立脚した価値観が必要なのです。
「私の価値観はあなたを幸福にするものだ。それはあなただけでなく、隣のあなたにもそうだ。」と言えるものです。その価値観を生きる目的、働く目的に反映していることが、自分と他者、共同体とのコミュニケーションを充実したものにして、互いにモチベーションとなってフィードバックされるのです。
人は何も背負わないより、背負った方がエネルギーになります。この共同体・他者期待・価値要因は両者ともに使い方で良いストレスにも、悪いストレスにもなります。相手への気持ちを大切にして、使い方を間違えないようにしたいものです。