イケてるぜ!キング、もっとやってくれ!
カントリーはいつの時代もアメリカ・ポップシーンの中心にあり、現在のそれを支えているのは人気、実力ともに最高のGarth
BrooksやGeorge Strait、美貌の歌姫Shania Twainなどのビッグ・アーティストたち。チャンピオンGarth
Brooksの観客と一体になったコンサートは見事。ビリー・ジョエルなどもゲスト参加し、創造的なサウンドを披露していて、カントリーは進化し続けている。そのニューカントリーの原型とも言えるのが、この『エルヴィス・カントリー』
70年代、ロック・ティストのカントリーのことを『レッド・ネック・カントリー』と呼んでいた時期がある。エルヴィスは多くのカントリーを歌っているが、何を歌ってもエルヴィス・ティストにしてしまう。まさしく『エルヴィス・カントリー』なのだ。したがってアメリカ人の感覚には彼がカントリーを歌っているという意識は薄いように思われる。何をやってもエルヴィスはエルヴィス、彼のサウンドなのだ。さてこのアルバムは歌にカムバックしたエルヴィスがノリに乗ってる感じが伝わる快作!
尻尾の先まで餡がつまったようなアルバム。う〜〜〜ん。なるほどノン・ストップ、曲間にまで一曲を切り刻んで詰め込んだ贅沢さなのだ!
そもそもカントリーはマッチョな連中が好んで聴いているカテゴリー。NBC-TV
SPECIALでステージにカムバックする直前にシングル・リリースされたカントリー・ロック<U.S.MAIL>のイントロ部分のナレーションにもあるように「オレはミシシッピーが合衆国になった日に生まれた。だからアメリカの男だ」というような調子こそが、カントリーの基調。Garth
Brooksも同じように「アメリカ男」を強調している。つまりアメリカ人がアメリカ人であるために欠かせないのだ?!
そういうこともあってか、ここでは甘さ控え目、ビターなエルヴィスがいろんなバリエーションで堪能できる。決して単調にカントリー・ティストにまとめているわけではなく、曲ごとに様々な変化を出していて見事!!お見事!エルヴィス万才!やっぱりキングだ!
2歳のかわいいエルヴィスが収まったジャケットに包まれた逸品、ナッシュビルで録音された『エルヴィス・カントリー』へ旅立とう!<スノーバード><ホール・ロッタ・シェキン・ゴーイン・オン>の2曲が1970年9月22日の録音。それ以外は6月4〜8日に録音している。
ミディアム・テンポの<スノーバード/Snowbird
>で始まる。この曲はアン・マレーがスマッシュ・ヒットさせたナンバー。カナダの広大な大自然を思わせるさわやかさは、<GOING HOME><STAY
AWAY>などの延長線にあるような「自然と人」を歌ったもので、気負いのない自然体が哀愁を際立たせている。
<明日は来ない/Tomorrow Never Comes>はハワイライブの<そして今は>を思わせるようなドラマチックでダイナミックな曲。
徐々にテンションをあげていく歌い方はいかにもエルヴィス、名人芸を聴かせる。分っていても、すっかりひきこまれるのは「また、やられた」と悔しい気になるほど。
と、思えば打って変わって<ひとりぼっちの山小屋/
Little Cabin on the Hill>は本格的なブルーグラス。山の中のコメディ『キッスン・カズン』が脳裡を駆け抜ける。なつかしい<ブルームーン・オブ・ケンタッキー>のビル・モンローの楽曲をカヴァーしている。ここではバンジョーが冴える。この曲は1956年の『THE MILLION DOLLAR QUARTET』の13曲目にも収録されている。
ドラムの響きが胸騒ぎなイントロで始まる<ホール・ロッタ・シェキン・ゴーイン・オン/Whole Lot-Ta
Shakin' Goin' On>は「いかすぜ!親分、もっとやってくれ!」と叫びたくなるほど気持のいいノリ。それもそのはず、サンの暴れん坊!ジェリー・リー・ルイスがミリオンセラーさせた曲。エルヴィスはキングはオレだぜといわんばかりの実力を見せつけてくれる!歌ってるエルヴィスの絶好調な口元がやけに気になる。いあはや!死ぬまでに必聴お願い。どうでもいいけどこのバックのリズム、矢沢永吉さんの曲にそっくりなのがあったような気がするのは気のせいか?ハワイ、メンフィスのライブにも収録されている。
一転してギターの音色も哭いている。お次は、『エルヴィス・オン・ツアー』で印象に残るシーンにして見せてくれた<時のたつのは早いもの/Funny How Time Slips Away>
『レッド・ネック・カントリー』ブームの立て役者ウィリー・ネルソンの作曲、エルヴィスはバラードにこそ真価が伺えると思わせるのも無理のない見事さ。
その見事さは次の曲で遺憾なく発揮される。
<知りたくないの/I
Really Don't Want to Know>は日本でも大ヒットしたC&W で、どこのカラオケにもある。が、同じ曲とは思えないほど男臭さに満ちた熱唱をには胸の奥がジーンと熱くなる。シングル・リリースされている。
<淋しき足音 /There Goes My Everything>はまっすぐな歌い方のきれいなバラード。『エルヴィス・イン・メンフィス』の<恋はいばらの道を>のダラス・フレイジアーの作品。<知りたくないの>裏面でシングル・カットされている。
<イッツ・ユア・ベイビー/It's Your Baby,
Rock It >はエルヴィスのオリジナル。エルヴィス特有のもっともいい味がでている曲と言い切ってしまおう。8ビートの曲はさすがエルヴィス!
<ザ・フール/TheFool>は、このアルバムの特長でもある伴奏のよさが、光っている。R&Bのブラッキーなムードが混じって快調。
<色あせし恋/Faded
Love>は過ぎ去りし恋を想って淋しさに耐えている痛みを歌った曲、「夜空が★を失ったように---」と秋の空気。ここは饅頭でも食べながら聴くのが一番よさそう。
<マディ・ウオーター(泥まみれの手)/I Washed
My Hands in Muddy Water>のピアノは誰?アイツの顔が浮かんでくるよ、このノリはどうだ!ロックンロール・オーケストラがやってくれます。エルヴィスはオーケストラの大軍引き連れて進軍するような勢い。姿を見なくても、「エルヴィスは生きていた!」と、しっかりその気になる大迫力は涙モノ!
その勢い覚めやらぬうちにビデオ『ロスト・パフォーマンス』でティシュ−なしでは聴けないほどにクラクラさせてくれた熱唱<想い出のバラード/ Make the World Go Away >でフィニッシュ!ビデオ『ロスト・パフォーマンス』をご覧になっていない方は是非必見、全身を使った熱唱は鳥肌ものです。
曲間に切り刻んで詰め込んだ一曲<おいら何でも見ちゃったよ/I
Was Born About Ten Thousand Years Ago>は1972年リリースの『ELVIS NOW』に完全な形で再収録された。
秋の夜長は月とカントリー。エルヴィスの声がぴったり決まりすぎて?・
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