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Elvis As Recorded At Madison Square Garden |
カナダのナイアガラにエルヴィス・プレスリー・ミュージアムがあって、それは奇異なものに写った記憶がある。高級でないショッピング・ビルの一角に設けられたそれは、日本流に言うなら温泉地にあるような見世物小屋という雰囲気でしかなかった。車や衣装が展示されていて、それは偶然に、しかも私がはじめて見た「エルヴィスそのもの」だっただけに、驚嘆は寂寞との裏表で複雑だった。 それはハードロック・ハーブティー&アップルティーのL.A店にバイクが展示されていたり、ハリウッド店に柔道着が展示されていたりしているのとは、意味が違っており複雑な思いにかられる。 ジョン・レノンの遺品を公開するミュージアムが日本にあるのも、奇異な感じがする。夫人の里で、ジョンも日本を愛していたからということなのだろうが、私個人には馴染めないし、イギリスあるいはアメリカの人はどう感じているのだろう。石原裕次郎館が小樽にあるのとは全然違うと思うのだが。(あくまで個人の感情)と、言ってもジョンも裕次郎も夫人の手によって建造され、少なくともナイアガラのそれとは全く違い「ミュージアム」と呼ぶにふさわしいものであろう。 「エルヴィス・プレスリー・エンタープライズ」という会社はエルヴィスがなくなった時点では赤字会社だった。それが現在では世界有数の優良企業に転じている。ギネスになったいるほどだ。この裏にはカナダのミュージアムや、かき集められた様々なテイクで制作されたCD、そしてグレイスランドの一般公開などの貢献があるのだろう。 いずれにしてもエルヴィスの『魂』は大切にしてあげたいものだ。 |
というわけで、今週はマディソンスクエア・ガーデンに於けるエルヴィス本気の音源。 そのエルヴィスが復活のライブとしては取り組んだ『NBC TV スペシャル』では、「声の強さ」が失われていないことを証明、このライブ・パフォーマンスを皮切りに、ロックナンバーで構成、シンプルなサウンドがかえって新鮮な印象の『イン・パーソン』、<ワンダー・オブ・ユー><リリース・ミー>などを紹介したカントリー色の強い『ON STAGE 1970』、映画『エルビス・オン・ステージ』のサントラとなった『THAT'S THE WAY IT IS』、全世界に衛星中継をした『アロハ・フロム・ハワイ』と続いて、このアルバムがリリースされたことになる。このライブこそが正規にリリースされた音源としては、これまでのものの集大成と言える充実した内容のものとなっている。ライブの内容そのものを洗練していき、ひとつの形を完成させた時期のものであると同時に渾身のエルヴィスがいる。映画『エルビス・オン・ツアー』で映像が紹介されているように、『エルビス・オン・ステージ』で紹介されているラスベガスのショーとは雰囲気も違っている。 このアルバムのスピード感とノリ方は違う。それは周囲が「彼のキャリアで最高のパフォーマンスをみせた」と語っているように、汗が飛んできそうな勢いなのだ。ジョン・レノンやボブ・ディランが観客として座っていたら、本気にもなるだろう。自分のアイデンティティを賭けたライブと思えば「やってくれ、見せつけてくれ」と思いたくなるのもファン心理なら、それに見事に応えてくれてるのも流石エルヴィス。 |
エルヴィスの死後にリリースされた音源は、記録でしかない。生前にリリースされたものが、出来が良くても悪くても、プロフェッショナルとしての仕事であり、それが「作品」だ。若い時に<ミステリー・トレイン>のようにサン・レコードのオーナー、サム・フィリップスが惚れ込んで独断でリリースしてしまったような特例のものや、1954〜1955年の黎明期の音源は別として、死後本人の承諾なしにリリースされたものは「仕事の記録」なのだ。したがって「仕事の記録」は評価するものではなく、「作品」で評価するのがマナーだろう。 ただアルバムによっては、どれが「作品」で、どれが「仕事の記録」なのか、全く分からないというようなものがあるのは問題なのだが。 「エルヴィス、今夜も見果てぬ夢をありがとう。」 ------------------------------------------------------------------------ |
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