白か黒か、その一方に決定したい心理は、
程度の差こそあれ誰にでもあることです。
その最大理由は「安心」を求めるからでしょう。
しかし現実は算数のようなわけにはいかないのがほとんどで、「灰色」がほとんどです。
なぜ灰色が多いのかというと、キモチは刻々と変わるからです。
「これを必ずやり遂げたい」
「あなたを一生愛します」 そう思う時には、そう決意したり、発言したりします。
しかし、その5分後にはキモチが変わっているかも知れません。
だって「やり遂げられるだろうか」「こんなあなたは好きじゃない」
そう思うと、それまでのキモチはぐらつき変わります。
しばらくすると
「いや、きっとやれる」
「やっぱりあなたが大好き」となります。
こんなふうに揺れ動いているキモチを
白か黒かと決めつけれないのが本当ではないでしょうか?
ある意味、それを知っているから、心変わりがいやで、 白か黒かはっきりしたい欲求も強まるともいえます。
しかし、いくら決意しても、揺れるキモチは止められません。
それでも、揺れ幅を小さくする方法があります。
それは白か黒かではなく、灰色が普通なんだと考えましょう。
そして「いまこの瞬間も継続する」ことです。
ところが・・・・ 「白か黒か」はっきりしないと気がすまないという方に、
「白か黒かではなく、灰色が普通なんだと考えましょう。」
では解決策にならないと思います。
しかし、白か黒かの区別をつけようとする習慣は、 どうしてついたのかを知ると気が楽になると思います。
私たちは、自分の感情を左右する影響力を持った相手に対して、 相反する2つの感情を持つものです。
特に、より影響力が強い人、より機会が多い人に対してほど、 相反する2つの感情も強く持ちます。
相反する感情とは、受け入れたい思いと、否定したい思いを持ちます。
その根底には自分を受け入れて欲しい感情が、より強くあるからです。
達成したいという願いが強い重要なことほど気になるもの同じ理屈です。
人は子ども時代に、非力なので、自活する力がなく、その分不安も強いため、 自分をケアしてくれる親や先生、親しい友人などには、
必然的に依存心が高くなります。
依存心が強いほど束縛感を持ち、相反する2つの感情も強くなります。
たとえば「好きだけど嫌い」「行きたいけれど行きたくない」 というようなことが起こってきます。
それは自然なことです。
束縛を受けてしまうので、自分のキモチと行動のバランスが保てないからです。
ところが、自分自身を含めて、周りの人に支配する力を持った立場にある人ほど、
それを認めない傾向があります。
私たちは子ども時代に周りから白か黒かの選択を要求される機会を持ちます。
「はっきりしろ」「そんな考えはよくない」と決めつけます。
そういう理由を考慮すると 「愛情のあるところには必ず憎しみがある」のはとても自然な状態です。
引き裂かれた感情を持つことについて、 人生を通して葛藤を克服していくものです。
ところが、そう思っていない方が多いのです。
「おまえはおかしい1
「したいの、したくないの?どっちなのか、はっきりしなさい」
と物事を白か黒かのように正反対の区別することを、 当たり前のようにしていると混乱が激しくなります。
他人ばかりか、実は自分がそうである場合が多いのに、 そう感じるべきではない、
そう思うべきではない、それは恥ずべきことだと教えます。
このように白か黒かの見方を強要するのは支配といえます。
無意識であっても身近にいる目上の者が白か黒かの選択を迫ってくるために、 白か黒かの発想を習慣として身につけます。
知識も経験も情報も乏しい子どもたちは、 生々しい感情を整理できないまま、知識、情報、だけが増え続けますが、
生々しい感情は抑圧したままですので、有意義な経験が伴わないまま 誤った経験を重ねるようになります。
こうして知らず知らずの間に間違った習慣を身につけます。
しかし現実を素直に受け入れられるようになると、 愛情は高まり憎しみは減るようになります。
すると対人関係は楽になります。 自分のなかに相反する感情を持っているとしたら、
白か黒かではなく、また否定せずに認めてやるようにしましょう。
穏やかに認めてやると揺れが小さくなり、 自分のキモチがはっきり見えてきます。 混乱した感情でもいいんだ、思うことができるようになるからです。
これはすごく大切なことです。
混乱を受け入れられると、混乱はやわらぐからです。
その経験を数多くするほど、 混乱はあってもおかしくないと受け入れることができるので、 混乱は混乱でなくなります。
すると周りの人がはっきりできずに揺れていても 「それでいいんだよ」というまなざしで見るようになります。
たとえば結婚してパートナーが他の異性に関心を持っても許せるようになります。
つまり感情が動くのは仕方のないことだと思えるようになります。
しかしそれを行動に移すと感情的な行動になります。
これは許せないキモチになるでしょう。
だからそうならないように、感情は認めても、行動に発展しないように、 自分が、この瞬間も励ましをベースにした
愛情のある表現と行動をとるようにします。
この繰り返しが大切です。
「灰色」だからこそ、いつも、励ましをベースにした愛情のある表現と行動をとるのです。
するとパートナーも他の異性に関心を持つことが少なくなります。
自分が尊重されていると実感するからです。
励ましの愛は本当の愛ではありません。
白か黒かではなく、灰色が普通なんだと考えましょう。
「あの人のこと、好きだけど、時には嫌いなときもある」
「花子さんのこと、がんばっていてえらいなと思うけれど、 いやだなって思ったりすることもある」
このような感情が正常で自然なものだと、 口に出して言うことで、 自分や周りの人が持つ罪の意識や不安を取り除いてやれます。
自分も周りの人も同じなのです。
それを放置しておくと、自分の感情をどう受け止めていいのか分からずに、 感情に支配されてしまいます。
すると整理できないため、 自分がその事実をどう受け止めたらいいのか分からないまま、 苛立ち、感情的な行動をとるようになってしまいます。
事態はさらに複雑になります。
大事なことや人ほど、白か黒かをはっきりしたいものですが、 大事なことや人だからこそ灰色が普通です。
いい関係を継続できるように、相手のことを考えて行動しましょう。