WHEN MY
BLUE MOON TURNS TO GOLD AGAIN
ブルー・ムーンがまた輝けば
わが国に於いてロックンロールがロックであるための条件は、エレキギターである。勿論声の重要さは最大のはずなのだが、無意識にエレキギターがトップの座にあるように思われる。
その意味で、現在この曲を誰もロカビリー、ロックンロールと思わないかも知れない。
第一この曲はC&Wである。それでもやっぱり、これはロカビリーだといいたい。楽曲が素敵で、パフォーマンスが素敵なら、それがどのようなジャンルに属するかはどうでもいいのだが。
56年7月2日にすでに<冷たくしないで>が録音されているので、1956年9月2日のこのパフォーマンスは特筆するようなものでない。しかしこのステキは、エルヴィスの声と歌唱方法と”エルヴィス・バンドの実にキレのいい演奏”にある。とても気持ちがいい。
アルバム『ELVIS』の中でも、この曲はどちらかというと抑え気味の歌唱で、ともすれば熱情に乏しく聴こえがちだが、その分とっても自然で、おそらく昔からエルヴィスがこの曲をシンプルに好きだったのではないかと思う。
で、そのC&Wをバンドと共に自然にロカビリーしている点が嬉しい。しかしここではそれまでと違う、エルヴィスのオリジナリティを感じる。ここではヒーカップ&マンブリン唱法を聴くことができるが、これまでのものより弱くなっている。
ロカビリーつまりサンレコードから離れて、エルヴィスが違う方向へ歩き出した瞬間に思える。ここから感じ取れるのは、エルヴィスのロックンロールがエルヴィスの音楽に白人音楽と黒人音楽、つまりロカビリーを吸収したものだということ。
それは将来の南部音楽を基調に余計な音を削って、シンプルなギターサウンドをコアにしたサザン・ロックへの出発点のような気がする。また60年代の映画用の楽曲に通じるエルヴィスを発見できる。
以下は『ワークス・オブ・エルヴィス』から抜粋。
ブルー・ムーンがまた輝けば
WileyWalker ワイリー・ウォーカー GemSullivan ジーン・サリバン
ワイリー・ウォーカーとジーン・サリバンの41年のカントリー作品。最初に作者のふたりがデュオでレコーディングしている。エディ・アーノルド、ジミー・ロウス、ウェッブ・ピアスらに曲を提供している、シンディ・ウォーカーが44年に大ヒットさせて知られるようになり、48年にはグリフィー・ストーンでリバイバルしている。エルヴィスのソフト・タッチなボーカルによるこのナンバーは、EP『:Elvis,Volumel』からのカットとしてスマッシュ・ヒットしている。エルヴィス・バンドが実にキレのいい演奏をしているのがとても印象的だ。77年にマール・ハガード、85年にマイネス・ブラザーズ・バンドでリバイバルしている(エルヴィス・バージョン以外はすべてカントリー・フィールドでのヒット)。ビル・モンロー、ジェリー・フォスター等多くのカントリー・アーティストがレコードにしている。