ALL SHOCK
UP
恋にしびれて
エルヴィスに大きな影響を与えた作家、オーティス・ブラックウェルが遂にエルヴィスの許に発った。
<冷たくしないで><悩まされて>に続いて取り組んだオーティス・ブラックウェルの作品<恋にしびれて>は、ビルボード・トップ100、8週連続トップ、かつ30週滞在の最長を記録、R&Bチャート(4週)と、カントリー・チャートでもナンパーワンを記録。
恐れて何かをしない退屈を蹴飛ばしてくれる歌だ。なぜエルヴィスがロックンロールのキングなのか、その意味が分かる歌だ。
ねえ、神様一体
どうしたんだろう
体中がムズムズしてたまらない
友達には様子が変だと言われるし
これは恋!恋にしびれてるのさ!
Mm-mm-mm,mm-mm,Yeah,yeah,yeah
手はふるえ、膝はガタガタ
立ってることもできやしない
幸せすぎる時は誰に感謝するの?
これは恋!恋にしびれてるのさ!
Mm-mm-mm,mm-mm,Yeah,yeah,yeah
何を考えてるかなんてきかないで
ちょっと混乱してるけど気分は最高
大好きなあの娘の側にいると
ドキドキしちゃって怖くなる!
*手に触れられてピリッときたよ
火山みたいに熱いあの娘のくちびる
自身を持って言える、俺の彼女だと
これは恋!恋にしびれてるのさ!
Mm-mm,mm-mm,Yeah,yeah-ye!!
*くり返し
この他愛のないように思える歌詞、それが音と声を持った時に、この歌詞は生き物のように蠢き出す。これこそがロックンロールの素敵なのだ。
オーティス・ブラックウェルはエルヴィスの人気と才能に強く惹かれ自作をエルヴィスが取り上げることを望んだ。
その最初の作品が<冷たくしないで>で、初めてエルヴィスのために書き下ろしたのが、セカンド・アルバム『ELVIS』に収録された<悩まされて>だった。それに続くこのR&Bナンバー<恋にしびれて>は、オーティス・ブラックウェルが1956年に作って、同年デビッド・ヒル、ヴィッキー・ヤングがレコーディングするも不発だった曲。
57年にエルヴィスがレコーディングし、大爆発のメガ・ヒットを記録した。
エルヴィス・バージョンに於けるライター・クレジットはエルヴィスとオーティス・ブラックウェルコンビの作品の形になった。やはりエルヴィスならではの、ライブな熱血アレンジが名曲に名曲本来の生命を吹き込んだ。
パーソネルはギター/エルヴィス、スコッティ・ムーア、ベース/ビル・ブラック、ドラムスD.J.フォンタナ、ピアノ/ゴードン・ストーカー、コーラス/ザ・ジョーダネアーズ。
エルヴィスと素晴らしい仲間が遺した大傑作は、ビートルズの運命を決定づけた初期のメガヒット<SHE
LOVES YOU>に影響を与えたと言われていて、ポール・マッカートニーは、いまもって「いつ聴いても幸せになれる曲」と語り、自らも念願のカヴァーをやってのけた。
74年にイギリスでスージー・クアトロが、リパイバル・ヒットさせる。
その他一流のパフォーマーが好んでチャレンジ。ジェフ・ベック、ロッド・スチュワート、ビリー・ジョエル、ライ・クーダーも録音をやってのけ、世界がほほえんだ。
A-well-a, bless my soul
What,s wrong with me?
l'm itching like man on a fuzzy tree
My friends say I
'm acting wild as a bug! l'm in lovel
l'm all shook up!
Mm-mm-mm, mm-mm. Yeah yeah. yeah
My hands are shaky and my knees are weak
l can't seem to stand on my own two feet
Who do you thank when you have svch luck?
l'm in lovel l'm all shook up!
Mm-mm-mm, mm-mm, yeah yeah. yeah
Please don't ask me what's on my mind
l'm a little mixed up but l'm feelin' fine
When l'm near that girl that I Iove best
My heart beats so it scares me to death!
* When she touched my hand. what a chill I got
Her lips are like a volcano that,s hot!
l'm proud to say that she's my buttercup
l*m in lovel l'm all shook upl
Mm-mm, mm-mm. Yeah-yeah-ye!!
* Repeat
幼くして、すでに脳天気な私生活を送っていなかったエルヴィスだが、冗談が好きで不思議なまでに明るく輝く太陽のような側面を持っていた。そんなエルヴィスにふさわしいコミカル風味の傑作を提供してきたオーティス・ブラックウェル。
エルヴィスも深く尊敬していた。<恋にしびれて><冷たくしないで>などのエルヴィスと彼の協同作業は「天真爛漫な若さに満ちたコミカルな名曲」で語られ尽くされてしまいそうだが、そこにはいままさに体験する者が、体験する者にしか体験できない、言葉にして表現しきれない不安、希望、失意、興奮、落胆など人間の心理、感情を確かにとらえた鋭さがある。それはエルヴィスのように生々しいライブな表現をポリシーとする者によって表現されてこそこそ可能となる複雑な情感だ。
エルヴィスは魅了された。なにより、すべての人のすべての暮らしのなかに潜む可能性を肯定したエルヴィスの美学と一致した。いまもって聴くたびに新しい発見に驚かされる素晴らしい音楽にこめられた奥深い謎のような愛情と敵意。
おそらく<ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス><マイ・ベイビー・レフト・ミー>などでエルヴィスが発揮した嬉々とした表現を聴いであろうブラックウェルは興奮を隠せなかっただろうと推測できるのだ。
60年代、エルヴィスの活動は映画中心になったものの、<こんなにやさしい問いなのに><破れたハートを売り物に><心の届かぬラブレター>などの痛みを恍惚と自嘲してマゾ的に拒絶することで、人間の自由を貫徹する、実は満身創痍の痛みのアーティストだからこそ表現だった、ちょっとイカレた、アメリカ野郎ぶりは健在だった。それへのふたりの男の柔らかな視線が織りなす不思議なまでに極彩色の世界。このコンビでなければ出来なかっただろう傑作は、世界をゴキゲンにした。
70年代、エルヴィスはステージでオーティス・ブラックウェルの作品を「本気」で歌うことは少なかった。決して軽視したわけでなく、エルヴィスは過去のヒット曲に甘んじることなく、前進したかったからだし、常にいまの人だった。
エルヴィスは「人間」をテーマにした数々の胸うつ楽曲に、かっての複雑さよりも、実直に取り組むことを好んだ。
しかし、その原点にあったのが、言葉にして表現しきれない心を楽曲にしたオーティス・ブラックウェルとのコンビによる作品に表明された、あらゆる肯定の前に、あらゆる痛みは砕け散るという心情だったとも言える。
<恋にしびれて><冷たくしないで>などが世界中の若者に熱狂的な支持を受けたのも、人間ーーー特にこの場合、大人になっていく若者の言いようのない胸騒ぎがしたからだろう。限界突破こそ自分の生きる場所であることを教えてくれた-----世界はこんな素敵な歌を口ずさみながら進んで来たのだ。
エルヴィス&オーティス・ブラックウェルは永遠だ。
<恋にしびれて>を「いつ聴いても幸福な気分になれる」と語るポール・マッカトニーのように聴いてほしいと、悲しくなるほどそう思う。
エルヴィスのためではない、他人のためでもない、もう少しいまより自分にやさしくなれるはずだと思うからだ。もう少し自分勝手になるのは自分いじめでしかないが、自分のためにやさしくなれることは素晴らしい。そうだ、生きることにどうかしてしまおう、熱病にかかったように、楽しくクレージーになってみよう。
恐れて何かをしないより、何かして傷ついた時にこそ、聴いてみたい。
「なんてことないさ、やっただけえらいよな」って言ってくれる歌だ。
Unn,Yeah!の数だけ、肩を叩いてくれる、背中を押してくれる、