エルヴィス・プレスリーの<サレンダー>。
スリリングなイントロ、そのままバラの花を胸に飾った白いタキシードのショーン・コネリーの007が出てきてもおかしくない。なんとこの華麗な恋歌のイントロはジェームス・ボンドのテーマそっくりでないか。
もちろん60年10月30日に録音したエルヴィスの<サレンダー>が先だ。
When we kiss my heart's on fire
Burning with the strange desire
And I know each time I kiss you
That your heart's on fire too
So my darling, please surrender
All your love so warm and tender
Let me hold you in my arms dear
While the moon shines bright above
All the stars will tell the story
All the love and all it's glory
Let us take this night of magic
And make it a night of love
Won't you please surrender to me
Your lips, your arms, your heart dear
Be mine forever, be mine tonight
スリリングなイントロは恋の狂気に身を投げつくす男の波乱にふさわしい、どうせ恋は正気の沙汰でないのだから、それなら一層華麗に燃え尽きたほうが正しい。本当に口から火を吐きそうな歌声、倒れるかと思いきや、悪魔の力を得て狂い咲きの爆裂ぶりは満開の桜の花のよう。
エルヴィス・プレスリーの壊れ方の美しさよ。壊れ方の正しさこそエルヴィスの真骨頂なのだ。悪魔軍団に魅入られた男の破滅への末期を豪華絢爛にレビューして快感だ。
誰も説得も拿捕もできない力強さ。ディーン・マーティンの酔いどれ優雅は別世界。本気熱情、エルヴィスはクロスロードを越えて満天の星空の下へ疾走している。
イタリアンの脳天気にメンフィス仕込みの劇薬を混ぜれば、世界に名高いアメリカ人の有望性も哀れ、エンタメ満杯、恋に身を滅ぼしてこれほどの単純にこれほどのエネルギー。ゆらゆら揺れてビートする火の玉のようなギターも魔法の一夜に泣かせるほどに素敵。エルヴィスの強さを抑圧するだけの力はないが、迷わず地獄の底に堕ちるようにエルヴィスにまとわりついて離れない、恋の灼熱地獄の釜の蓋は開いている。もちろん迷わず一直線、エルヴィス・プレスリーは地獄の釜に向かって疾走している。
チーム魂はここでも健在、もう全身恋の病、ブーツ・ランドルフのサックスがさらに火をつけて威勢をあげる。
”サレンダー、サレンダー”のコーラスも救出不可能な恋の悪夢へ誘って最高。
エルヴィスが魔界へ陥落していくようなフェイドアウトをクライマックスに仕上げて歓喜。男声コーラスから女性コーラスへ移っていく”降参だ!”の大合唱は悪魔の勝鬨、エルヴィスは二度と帰って来れないと想わせて、これ以上なく最高!
口づけでハ一トに火がともる
不思議な気持ちが燃え上がる
俺がキスをするたびに
お前のハ一トも燃えさかる
だから、もうあきらめて
お前の愛を渡しておくれ
この腕で抱きしめたい
月が明るく輝く下で
星が全てを語ってくれる
愛の素晴らしさを
この魔法の一夜を
愛の夜へと変えるのさ
だから、もうあきらめて
その唇、腕、ハ一トの全てを
永遠に、今夜俺のものになっておくれ
白いタキシードにバラの花はもちろんエルヴィス、百花撩乱、美女たちが戯れる花園、風光明媚なソレントはどこにある、伝説のMGMミュージカルさえ星のもずくにして、ここはひたすらにエルヴィス・ワールド、光りを放って水しぶきをあげる大滝の前では、”さいざんす”のトニー谷がジプシー・ローズと踊れば、憧れのマドンナはピチカート・ファイブの紅一点かジャンプスーツのブリちゃんか、ぺレス・プラード、ハリー・ヴェラフォンテも腰をふるS盤アワー総出演の祝祭感動、ラインダンスのハレ・ロック、総極彩色の妄想がキリなく舞うように噴出、聴いてるこちらもますます壊れていく。
どうかみなさまもお熱くお好きに妄想どうぞ。たとえ釜の底、いかなる妄想をしょうが、リスクと隣合せも唇ゆがめて笑えば青空、エルヴィス・プレスリーこそは賞味期限なし、いつの時代も五つ星マークの同時代の人である。
エルヴィス・プレスリー公認のミュージカル『エルヴィス・ストーリー』が赤毛のアンの国からやってくる。地獄の釜の蓋が開くことを期待してときめきはとまらない。
<サレンダー>
ひたすら美しい。
ELVIS 30#1 HITS
全米初登場第1位、3週連続1位!
1. Heartbreak Hotel/ハートブレイク・ホテル
2. Don't Be Cruel/冷たくしないで
3. Hound Dog/ハウンド・ドッグ
4. Love Me Tender/ラヴ・ミー・テンダー
5. Too Much/トゥー・マッチ
6. All Shook Up/恋にしびれて
7. Teddy Bear/テディ・ベア
8. Jailhouse Rock/監獄ロック
9. Don't/ドント
10.
Hard Headed Woman/冷たい女
11. One Night/ワン・ナイト
12. A Fool Such As I/ア・フール・サッチ・アズ・アイ
13. A Big Hunk O' Love/恋の大穴
14. Stuck On You/本命はお前だ
15. It's Now Or Never/イッツ・ナウ・オア・ネヴァー
16. Are You Lonesome Tonight/今夜はひとりかい?
17. Wooden Heart/さらばふるさと
18.
Surrender/サレンダー
19. His Latest Flam! e/マリーは恋人
20. Can't Help Falling In Love/好きにならずにいられない
21. Good Luck Charm/グッド・ラック・チャーム
22. She's Not You/あの娘が君なら
23. Return To Sender/心のとどかぬラヴ・レター
24. Devil In Disguise/悲しき悪魔
25.
Crying In The Chapel/クライング・イン・ザ・チャペル
26. In The Ghetto/イン・ザ・ゲットー
27. Suspicious Minds/サスピシャス・マインド
28. The Wonder Of You/ワンダー・オヴ・ユー
29. Burning Love/バーニング・ラヴ
30. Way Down/ウェイ・ダウン
Bonus Song: A Little Less Conversation (Radio edit)/
ア・リトル・レス・カンヴァセーション(ラジオ・エディット)
ボーナス・エンハンストCD 収録ビデオ
1. A Little Less Conversation (Original)
ア・リトル・レス・カンヴァセーション(オリジナル)
2. A Little Less Conversation (Extended Remix) ア・リトル・レス・カンヴァセーション(JXLリミックス)
3. A Little Less Conversati! on (Music Video) ア・リトル・レス・カンヴァセーションMTVビデオ・クリップ