ルイジアナ・ヘイライドに於けるエルヴィス初期の風景を聴いていると
”ボーイズ”たちに強く支持されていることが分かる。
その光景は”モダンジャズ”の風景と似ている。
こんな風に支持されるミュージシャンは
クラプトン、ジェフ・ベックらがそうだろう。
あるいは日本の昔の高校生にとって文明の神様だった
ベンチャーズの”Live in Japan”を思い起こさせる。
飾りもないテクニカルなインパクトに
”ボーイズ”たちが心を揺さぶられているのが小気味いい。
エルヴィスはもともとそういうミュージシャンなのだ。
テクニカルな面から見ればバラードにも、ゴスペルにも、
エルヴィスの際立った才能と温かい気性を発見できる。
しかしそれ以上に機械いじりが好きな”ボーイズ”の
ハートに届くような、とてつもないオリジナリティな表現の可能こそ
エルヴィスの最大の魅力だ。
<ALL SHOCK UP>にYeah,Uun,などのかけ声
が一番多いレコードだと言ったポール・マッカートニーをはじめ
多くのミュージシャン予備軍は
エルヴィスの思いがけないプレーに心奪われた。
映画『TRUE ROMANCE』のエルヴィス・クレージーな主人公も同じ線上にいる。
すべてはエルヴィスから始まった。
エルヴィス登場後、
”金のなる木”になったティーンエージャーは
マーケティングのターゲットになっていく。
・年下の子供は年上の子供が見るものなら何でも見る。
・年上の子供は年下の子供が見るものは見ようとしない。
・女の子は男の子の見るものなら何でも見る。
・男の子は女の子の見るものは見ようとしない。
・よって大多数の支持者をつかむには、十九歳の男性に照準を定めるべし。
エルヴィス現象にはこの条件がすべて揃っていた。
現代では男性以上に女性のインパクトが強くなったがいまも大きく変わらない。
これら原理原則によって、
増え過ぎた女性ファンにいい気がしなくなった”ボーイズ”は
エルヴィスに距離をおくようになる。
”バイバイ・バーディー”はそんな情景を切り取ったハッピーなコメディだった。
エルヴィスの入隊騒動を題材に、
エルヴィスをパロったバーディーはちょっと間抜けで嫌味な奴だった。
ボーイズにはガールズが戻ってきてくれるように、
そうであってほしい願望が投影されたのだろう。
ボーイズは自分たちが発見したものを
女性に占領されて追放されていくようなものだと考えたら少し可哀想だ。
自分達のヒーローを拒否して別れを告げ、新たな発見に出かけて行く。
エルヴィス以降、先の方程式はますます鮮明になっていくが、
やがて女性が見放したら、
どうしょうもない「スター」は逆に危険な条件にもなっていく。
ベイシティー・ローラーズなどはその代表だろう。
使い捨て覚悟のスター・ミュージシャンは数えきれないが、
音楽産業がビッグ・ビジネスになるにつれ、
マーケティングはますます巧妙になっていく。
エルヴィスの場合には
人為的でなくインパクトの強さから自然発生的に起こった
アンチ・エルヴィス・キャンペーンだったが、
結果的に効果は絶大だった。
金に変えられないその効果はロックシーンでの
マーケティングでは必然となった。
パブリシティー効果を狙ってように
わざと大人たちが眉をひそめるような既成の価値観への反抗を
人為的に仕掛けた。
コロラドのハイスクールに於ける大量殺傷事件の遠因になったと物議をかもした
マリリン・マンソンなどはその典型という見方もある。
エルヴィスの持ち味は本来ビターなチョコレートノ味わいだったが、
『やさしく愛して』の公開プロモーションなどに見受けられるように
女性ファンが増えるにつれ、女性をターゲットに加速させる。
やがてエルヴィスの持ち味は
きれいなパッケージに包まれたミルク・チョコレートに変わって行くがーーー。
入隊中にチャートインした<冷たい女>は、
エルヴィスのロック・スピリッツが炸裂した曲だ。
ディキシー仕立ての快調なロックナンバー。
よくこれだけ忙しく口が回るなと感心するほど滑らか淀みなく快走する。
ここではすでにキングの風格を漂わせている。
エルヴィスにとって映画第4作、
パラマウント映画第2作『闇に響く声』の挿入歌。
パラマウント・スタジオ・オーケストラをバックに
ニューオリンズ・ジャズ・バンドの中に
ロック爆弾を投げ込んだようなボーイズ好みの仕上がりは、
ブライアン・セッツアーの原風景ともいえる。
頑固な女にお人好しの男の組合せは
この世の始めからトラブルの元なのさ
*そうさ、大昔からずっと変わってない
頑固な女は男の苦労の種なのさ
アダムはイヴにこう言った
「りんごの木の回りをうろつくんじゃないぞ」ってね
*2回くりかえし
サムソンはデリラににこう言った
「その汚らしい手でオレの髪に触れるな」ってね
*くりかえし
イスラエルの王様の話を知ってるかい
性悪のイゼベルをめとるまで楽しく暮らしてた
*くりかえし
オレの彼女は石のように頑固
でもいなくなったらオレは一日中粒くだろう
*くりかえし
頑固な女は男の苦労の種なのさ
ア、ハ、ハ
キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)が語るように、
当時友人との間で交わした「おい、あれ聴いたか」は
エルヴィスが何者だったのかのすべてを表現している。
歌であることをキープしながら、
縦横無尽に自分の声を楽器のように扱い、
身体を動かす。自然な発露と鋭い感性によってのみ可能となる
計算された感情へのアプローチ。
それは”発明”だ。
エルヴィスの音楽は”
ボーイズ”を”ロック小僧”にした音楽だった。
没後25年を過て、なお支持される基本はそこにある。
男の子は女の子の見るものは
見ようとしないというわけにはいかないのだ。
「おんな、こどもに分かってたまるか」と
口走りながら、ボーイズは聴き続ける。
Well a hard headed woman. soft hearted
man
Been the cause of trouble ever since the world began
Oh yeah, ever since the world began
A hard headed woman been the thorn in the side of man
Adam told Eve "Listen. here to me
Don't you let me catch, you mess:n 'round that apple tree
*Repeat Twice
Samson told Delilah loud and clear
'Keep your cotton-pickin' fingers out of my curly hair"
Re peat
l heard about a king who was doing swell
Till he started playing with that evil Jezebel
Re peat
l got a woman, a head like a rock I
f she ever went away I'd cry around the clock
Repeat