ARE YOU LONESOME TONIGHT
今夜はひとりかい
沖縄本土復帰から30年、
その5年後の8月16日。
ニュースがニュースらしい語り口で悲報を伝えていた瞬間。
悪夢のような朝から25年。25年は4半世紀。
いまだに生きているかのように錯角をするのは、日常的に音楽・映画のシーンに露出するからだろう。
かって黒沢明監督が名作『天国と地獄』で<イッツ・ナウ・オア・ネヴァー>の使用を熱望したにもかかわらず版権使用料が高すぎて断念したように、版権使用料の都合で映画で、エルヴィス自身によるパフォーマンスそのものが、目立って露出するのは最近。
それでもイギリス・ヒットチャートナンバー1に送り込んだ<おしゃべりはやめて>を使用した『オーシャンズ11』をはじめ『ブラックホーク・ダウン』『キャスト・アウェイ』『スコルピオン』『メン・イン・ブラック』『リーサル・ウェポン』『夢の涯てまで』『ザ・エージェント』『普通じゃない』『グレイスランド』『オーロラの彼方へ』『34丁目の奇跡』ーーーディズニー・アニメ最近作『Lilo&Stitch』と数えきれない。
楽曲が使われる以上にセリフとして”エルヴィス”あるいは”ザ・キング”の単語が登場したものを数え上げたらきりがない。
むしろこのような使い方にこそ、エルヴィスへのアメリカ人の心が強く感じられる、
コワモテ、トミー・リー・ジョーンズが「エルヴィスは死んでいない。宇宙に帰ったんだ」と語った。
『メン・イン・ブラック』を筆頭に『ロスト・ワールド』『コン・エアー』『フォレスト・ガンプ』『ダイハード2』『ゴジラ』『マスク』『ビートル・ジュース』『ミステリー・トレイン』『パルプ・フィクション』『トゥルー・ロマンス』『ザ・ファーム/法律事務所』『ハネムーン・イン・ベガス』『コミットメント』『ラストレター』『クイズショー』ーーーー名作、大作、ヒット作、問わず並ぶ。
それらはすべてあの日から始まったエルヴィス慕情。
関わり方もグレイスランドを訪れる人から様々なら、好きな曲も様々。
出演した映画は概してつまらなかった言いながら、くり返しビデオで見る始末。
一方では25年も昔のことは知らないけれど、ふと耳にした楽曲、ふとテレビで見たパフォーマンスに衝撃を受けて、20数年も遅れてきたファンも後を断たない。
50年代、60年代、70年代とこれほどまでに、くっきりと違う印象を残したのも不思議なくらいだが、どの時代のエルヴィスをとっても、エルヴィスそのものでありながらも、そのどれもが奇異である。
いわゆる”良識ある大人”に”悪魔の歌”とレコードを燃やされ、”身体振動の罪?”の逮捕状を用意した警官に包囲されながらも、自分のスタイルを守り抜いた56年〜58年。謙虚に”アメリカ人の誇り”に生きた2年間の軍隊暮らし。
活動の殆どを”エルヴィス映画”というジャンルによってハリウッドに費やした60年代。
激情と気まぐれをひきずりながら、日々をステージ活動で埋め尽くして暮らした70年代。
その生涯の大半を他者と違うことの尊さを語り続けたエルヴィス。
自身の大ヒット曲<TOO MUCH>はエルヴィス自身のテーマ曲のようなものだ。
が、それにしても記憶が薄れないのも、やりすぎた、
そのせいか。今頃お茶目に笑っているかも?宇宙で。
ステージとステージの間に打たれたピリオド。打ったのは誰か?誰が打ったのか?
25年、そのことを考え続ける人たちがこの世界にはたくさんいる。
まるで恩返しするかのように、考え続ける人たち。
本当は考えることで、こう言ってもらいたいのだ。「今夜はひとりかい?」
今夜はひとりかい
今夜、僕がいなくて淋しいかい
別れたことを後悔しているかい
僕らの思い出が甦ることはあるかい
あのまばゆい夏の日に君に口づけをして、
愛しい人よ、と曝いたことを
君の客間の椅子は空っぽで、
がらんとしていないかい
戸口を見つめて、
僕の面影を探し求めることはあるかい
*君の心は悲しみでいっぱいじゃないかい
もう一度、戻ろうか教えておくれ、
今夜はひとりかい
今夜は、君はひとりなのだろうか
どこかで、こんな話を聞いたことがある
この世は、芝居の舞台のようなもの
それぞれ、勝手に役を演じているのだって
運命の糸で、僕は君の恋人役になった
第一幕は、僕らの出会い僕は、君に一目ぼれする
君は、セリフを見事に読みあげ一つのミスさえしなかった
やがて第二幕の幕が上がり
君は、心変わりしたように見えた
行動もおかしかった
僕には、その理由さえ分からない
ダーリン、僕を愛しているって言った
君の言葉は嘘だったのかい
僕には、君を疑うすべもなかった
でも、君無しで生きていくぐらいなら
嘘を聞きつづけていたほうがましだ
いま、舞台は人気もなく
虚ろな空気のなかで僕がひとり立ちつくす
もしも君が再び現れないなら
幕が下ろされるのを待つばかり
*繰り返し
誰でもがエルヴィスのオリジナルと思っているのは無理もない。
なにせリリース当時だけで500万枚は軽く販売したビッグヒット。
当時まだ第3回だったできたてホヤホヤのグラミー賞の最優秀曲、ベスト・ボーカル、ポップス部門ベスト・パフォーマンスの3部門にノミネートされたのだから。
しかし実はアル・ジョルスンのものが最初の録音だ。
それにしても、なぜか、自分としては、この曲。夏の印象が強いのはコンパクト盤のせいか?
併せて収録されている<夏に開いた恋なのに>という名曲、
そのタイトルの素敵(?、悲劇?)
さらに、いかにも、いかにもウェスタン映画という、
それっぽさが泣ける程シブイ<燃える平原児>、
このジャケットが楽曲が、映画が娯楽の王様だった時代を匂わせて素敵。
いまどき映画がシネマ・コンプレックスの導入で復調だが、満員電車並みにギューギュー詰めにしていた時代にこそ、エルヴィスの青春があったのかとしんみり哲学してしまう。
世の中はどんどん変わって行くが、良いもの、意味のあるものは残して行こうというアメリカ魂と愛してやまない世界中のファンの心情がひとつになって受け継がれて行く<ワンダフル・ワールド>。
人々は、エルヴィスが1956年〜58年にかけてまき散らした文化を体験しながら生きた。
エルヴィスが好きであれ、嫌いであれ、興味があってもなくても、触れても触れなくても、人々は、エルヴィスが発散した文化を享受し、エルヴィスが変えてしまった1956年以降の世界を生きるしかなかった。
それを不幸と思う人もいれば、幸福と思う人もいれば、それを知らずに<これが暮らしだ>と暮らす人もいる。
その2年間の自分へのケジメとして、それが<ワンダフル・ワールド>であったことを、最後まで懸命の汗で証明しょうとした律儀。
この世界には”壊れた心”が溢れている。
それに向けられた眼差しと許容、そこから生まれる再生へのぎりぎりこそがエルヴィスが創造したロックンロールの本質であり、それこそがエルヴィスの音楽であり、エルヴィス映画だった。
とりわけ”ひとり”の人間の心に優しく忍び込んだ。孤独の痛みを知る者ならではの技である。
エルヴィスは自分を守るために歌った。
やがてそれは自身を体現することで、共感、共鳴そして精神の解放が世界中に起こった。
遂に許容され、感謝に生涯を投じた。
全仕事こそエルヴィス・プレスリーその人である。名曲も良ければ駄作もまたよし。
壊れしものへの愛こそエルヴィスそのもの。金色のスーツ、イミテーションの宝石をちりばめたジャンプスーツ----奇異なまでに華やか衣装に身を包みスターという虚飾の大看板を背負いながら、これほど裸で、生身で、ありのままの人はいなかった。
こと音楽に関しては、技術に走らず質素なまでに魂にこだわった。だからこそ、残したもののどれもが温かさに満ちている。
人はみなそれぞれに素晴らしい。エルヴィスの残した全仕事がそれを語っている。
ありがとう、キング。今夜もひとりだよ。
Are you lonesome tonight
Do you miss me tonight
Are you sorry we drifted apart
Does your memory stray
To a bright summer day Whon I kissed you and called you sweetheart
Do the chairs in your parlor
Seem empty and bare
Do you gaze at your doorstep
And picture me there
* Is your heart filled with pain
Shall I come back again
Tell me dear. aTe you lonesome tonight
I wonder if you're lonesome tonight
You know someone said
THat the world's a stage
And each must play a parl
Pate had me playin' in love
With you as my sweetheart
Act one was when we met
I loved you at first glance
You read your lines so cleverly
And never misse a cue
Than came act two
You seemed to change
You acted strange
And why. l've never known
Honey you lied when you said you loved me.
And I had no cause to doubt you.
But I'd rather go on hearing your lies
Than to go on livin' without you
Now the .stage is bare
And I'm standing there
With emptiness all around
And if you won't come back to me
Then they can bring the curtain down
*Repeat
この曲はエルヴィスが生涯歌い続けた中のひとつだ。