孤独な川は流れる
海へ、海へとすべてを受けとめてくれる海へと
孤独な川は叫ぶ、待って、待ってと
必ず帰るから待っていてと
愛しい人よ、僕のダーリン
<アンチェインド・メロディ/Unchained Melody>は、1955年の楽曲。作曲:アレックス・ノース、作詞:ハイ・ザレットが書き上げた。
1955年、アレックス・ノースは刑務所映画『アンチェインド』(日本未公開)の主題歌として作曲。トッド・ダンカンが歌うバージョンが、そのサウンドトラックに収録されている。レス・バクスター・オーケストラが発表したインストゥメンタル・バージョンが1位を記録した。ビルボード・チャートで 3位を記録したアル・ヒブラー、イギリスで 1位を記録したジミー・ヤング、そして R&Bベストセラー・リストで 1位とポップチャートで 6位を記録したロイ・ハミルトンによってこの曲は発売された。その他、様々な言語で500種類を超えるバージョンが録音され、20世紀で最も録音された曲のうちの1曲になった。
日本でおなじみのバージョンは1965年にHot100で4位になったライチャース・ブラザーズのバージョンだが、その後も68年にエルヴィスのバックコーラスであるスイート・インスピレージョンズ、79年にジョージ・ベンソンと絶え間なく歌い継がれている。1990年の『ゴースト』にはライチャース・ブラザーズのバージョンが主題歌として使用されヒットした。
エルヴィス・プレスリーは、1977年6月21日にCBS-TV『エルヴィス・イン・コンサート』のためのライブで取り上げ、このバーションが6月にリリースされた生前最後のアルバム『ムーディ・ブルー』に収録、さらに死後の1978年にシングルカットされてカントリーチャート6位にランキングした。
歌っている様子は、『エルヴィス・イン・コンサート』の映像で見ることができ、「エルヴィス死す」の速報でオンエアされ、悲報と共に焼きついているので敬遠、殆ど聴くこともなかった。
映画『ELVIS』では、クライマックスに実写で映し出されている。何年経っても胸が痛む。
アンチェインド・メロディ /Unchained Melody
愛しい人よ、僕のダーリン
僕は独り、長いこと
君の感触を焦がれ続け
*時のたつのは遅く
時は多くを変えてしまう
君は今でも僕のものなのか
君の愛がほしい
君の愛がほしい
神よ、彼女の愛を今すぐ届けて
孤独な川は流れる
海へ、海へとすべてを受けとめてくれる海へと
孤独な川は叫ぶ、待って、待ってと
必ず帰るから待っていてと
愛しい人よ、僕のダーリン
僕は独り、長いこと
君の口づけを焦がれ続け
(*くり返し)
ムーディ・ブルー
収録アルバム「ムーディ・ブルー」
<ムーディ・ブルー>は<サスピシャス・マインド>の作者マーク・ジェイムズ自身が74年にシングルリリースしたものの、ヒットしなかった楽曲をエルヴィスが<サスピシャス・マインド>同様にカヴァーしてシングルリリース。カントリーチャート、トップに送り込んだミディアムテンポのストレートに心地よい快作。
映画『アメリカン・グラフィティ』にも使用されたダイヤモンズの<リトル・ダーリン>も56年当時からエルヴィスが好んでいた曲で、エルヴィスは当時を懐かしむ様子でご機嫌に歌っている。
55年にR&Bチャート10週1位になった<プレッジング・マイ・ラヴ>もいい味でカヴァー。エルヴィス心の歌といえる作品たちは、必ず気に入ってもらえるはず。疲労がピークに達していたのか、選曲といい。好きなようにパフォーマンスしている様子が伺える。
- アンチェインド・メロディ
- 愛しい貴方
- リトル・ダーリン
- 浮気はやめなよ
- レット・ミー・ビー・ゼア
- ウェイ・ダウン
- プレッジング・マイ・ラヴ
- ムーディ・ブルー
- 何でもないのに
- イッツ・イージー・フォー・ユー
エルヴィスの魂が、ナッシュビルから聴こえてくる気がするカントリーへの愛を感じる最後のアルバム。
最後の一滴まで・・・・アーティスト、エルヴィスが美しい。
NHKでは映画音楽の番組をオン・エアしていますよね。
先日も<監獄ロック>がピックアップされ、日本人ミュージシャンによって歌われていました。
しかし、総じて<エデンの東><ひまわり>など演奏だけの方が、オリジナルな雰囲気に近く、その分、映画をストレートに伝えてくれているような気がします。
「ゴースト~ニューヨークの幻」に使用された<アンチェインド・メロディ>が歌われた時には、映画音楽を飛び越えて、エルヴィスの<アンチェインド・メロディ>が脳裏をかすめました。
映画に使用されたのは1965年の代ヒットとなったライチャス・ブラザーズの音源。
1955年にはアル・ヒブラーでヒットしていますが、もともと映画用の書き下ろし。
若いエルヴィスが、その人生の歩みと共に、聴いてきた曲でもあるので、その栄光の最後の年に歌っているのが、切なく感じてしまいます。
エルヴィス、天国と地獄と
エルヴィス・プレスリーの<アンチェインド・メロディ>は、ロマンスの地獄と天国と両極端を、ひとり往く重さと情熱を切り取って底なしの美しさを聴かせます。
ひとりで行動できる人はカッコいい。
苦渋を全部呑み込んで、大切なもののために、泣いてやれる強さ。
神々しく、透明な涙がこぼれてくるようで、切ないですね。
最後にひとつぶの涙が、ポツリと落ちる感じです。
全体に、孤高が発する力に圧倒されますが、後半部分・・
感動的なラストの高音に突入する寸前 ♪God speed your love to me からですが、特にtoから最後の一滴までに、一度きりの何かがこめられている感じがします。
人の一生に、愛は何度も繰り返し起こるでしょうが、ここには奪うことも、奪われることもない愛が存在していることをきっぱりと宣言するかのような深さが漂っています。
このエルヴィスは、気負いもなく、自然体で、とても柔らかに感じます。
それだけに、とても切ない。
しかも、この繊細で、ダイナミックな音源がライブであることは、さらに驚きです。
<アンチェインド・メロディ>と快作<ムーディ・ブルー><ウェイ・ダウン>を収録したアルバム『ムーディ・ブルー』は、ジャケットのデザインも含めて、カッコいいと感じた、とても好きなアルバムにひとつでした。
楽観的なエルヴィスの魅力
アルバム『ムーディ・ブルー』が、オリジナルの雰囲気そのままに、紙ジャケットシリーズでリリースされたのが、とってもうれしかったのを、覚えています。
エルヴィス生前最後のアルバムになってしまったため、ジャケットの光が不吉であるとか、悲しいとか 体調不良とか、ネガティブな点がやたら強調されたこともあったりして、無意識に聴くことを避けてしまったこともありますが、どの曲もエルヴィスの声と歌唱力、なにより屈託なく歌っている力強さが魅力です。
一度もリリースされたことのない楽曲を条件に、この時期の優れたパフォーマンスを集めたのだろうなと思わせるアルバムです。
エルヴィス・プレスリーって人は、どんなに状況が悪くても、楽観的にしかなれないんだろうなと思わせてしまう歌声に満ちています。
人々を元気にするエルヴィスの楽観さが、逆に<アンチェインド・メロディ>のヒリヒリする刹那さを浮き立たせているように思います。
アルバムの最後を締めくくる楽曲<It’s Easy For You>でも、70年代エルヴィスの特長であるカントリー・フレーバーが全開、とてもいい味出していて、傑作でしょう。
THE GREAT PERFOMANCES
<アンチェインド・メロディ>や<It’s Easy For You>を聴いていると、こどもが天下をとったような国で、若さを追いかけるより、いい大人になることの方が、断然素晴らしいことのように思います。
<アンチェインド・メロディ>は1978年3月にシングル・リリースされました。
アルバム「THE GREAT PERFOMANCES」に収録されたバージョンです。
やはりライブですが、ここでの、エルヴィスは自らピアノを演奏。
入魂の弾き語りを「炸裂」させています。1977年6月21日のことです。
この音源は、CBSがテレビスペシャル「ELVIS IN CONCERT」用に撮影していたものでした。
まさかその音源や映像が遺作になるとは、誰も思っていなかったでしょう。
<アンチェインド・メロディ>の映像は「THE GREAT PERFOMANCES」で観ることが、できます。
百獣の王ライオンさえも親子一同に集まり、神妙に聴きそうなパフォーマンスとエルヴィスの姿が、とっても大好きです。
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