アイ・ガット・ア・ウーマン / I Got A Woman:1956

エルヴィス。プレスリー登場! エルヴィスがいた。

エルヴィス・プレスリーがRCAで1956年に録音した<アイ・ガット・ア・ウーマン>はレイチャールズが、1955年にR&Bチャートでナンバーワンヒットを記録した典型的な50年代のR&B。

エルヴィスは、自分らしく快調なロックンロールとしてカヴァー。すでにサンレコード時代のライブでもレパートリーに加えて、頻繁に取り上げていたナンバーです。

オールタイム・ロックンロール、キング・オブ・ロックンロール!
ロックンロールは生き方のアート。

ロックのルーツはゴスペル

エルヴィスがロックのルーツはゴスペルだと公言していたように、<アイ・ガット・ア・ウーマン>もレイ・チャールズがゴスペル<MyJeseus is All The World I Need>をもとに1954年に作曲したもので、エルヴィスは55年2月にサンレコードで録音(未発表)しており、ライブでよく歌っていたが、RCAに移籍後再録した。

実に多くのミュージシャンによってカヴァーされているが、エルヴィスにぴったりの曲で快調なロックンロールに仕上げている。

エルヴィスのバージョンは1956年1月の<ハートブレイク・ホテル>シングルリリースに続いて、3月にファーストアルバム『エルヴィス・プレスリー登場』に収録されてリリースされ、アルバムは大ヒット。1956年5月1日から10週連続ナンバーワンを記録。
また4曲入りのファーストEPとしてもリリースされている。

アイ・ガット・ア・ウーマン / I Got A Woman:1956

俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘さ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘さ
朝、必要な時にここにいてくれる
親友みたいな存在さ、
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ

明け方から愛をささやくのさ、俺だけにね
明け方から愛をささやくのさ、俺だけにね
俺だけに愛をささやくく彼女
とってもやさしく愛してくれる
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ

朝から晩まで愛し合う
ケン力なんかしやしない
他の男には目もくれず
俺に淋しい思いもさせないで
女は家にいるのが一番と
わきまえてる娘なのさ

俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ
彼女は俺の女で俺も彼女の女さ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ

知らないのかい、すごくいい娘なんだぜ
知らないのかい、すごくいい娘なんだぜ
俺の可愛い女は町外れに住んでいる

ライヴ・イン・メンフィス ( BMG )より

アイ・ガット・ア・ウーマン / I Got A Woman:1970

レイ・チャールズの<アイ・ガット・ア・ウーマン>は宇宙的規模で魅力的です。
神はエルヴィスにどんな役目を与えたのだろう。そしてリスナーにはどんな役割を与えたのだろう。

録音された歌には、パフォーマーのその瞬間の命が吹き込まれています。
だから誠実であれば、どの歌にも、それぞれの命があります。

その命をどんなふうに聴いてあげるかは、リスナーの役目。
解釈はさまざま。

歌の命を聴いて、ボクはこう思うんだけど・・・・たとえばエルヴィスに尋ねる。

返ってくる答え、時には無言のまま返ってこない場合だってある。
歌を聴くことは、その人の命を聴くこと。

だから、命が吹き込まれていない歌は聴きたくない。

なぜなら、ボクの命は永遠ではないから。
限りある時間で、できることをするのだから、どうせなら命のある歌を聴きたい。

それと同じように、自分も命のある行動をしたいと思う。

でも、それは実際にはそれが難しい。
だからこそ、命のこもったものに触れて、自分を叱咤激励したいと思う。
スーパースターとは、そういう支援ができる存在だから、
所得も含めてスーパーなんだと思います。

「エルヴィス・オン・ステージ~スペシャル・エディション~」で、
<アイ・ガット・ア・ウーマン>を観て震えるほど興奮しましたよ。

エルヴィス・プレスリーはホントにスーパー・スター。欲はない、思ったからそうする。なんらかの都合でできないのなら我慢もする。幼い頃から都合で我慢してきた。やり出したら強い、打たれ強いし、打つ力も強い。プロで通用しないからトラックの運転手やってる方がいいよ」と大御所ミュージシャンから忠告されても、やりたいからやる。見たい世界は見てみたいと、やめなかった。

細やかにデザインされたパフォーマンスの美しさは言葉でも、絵でも、音でも語れない。そこにはやりたいからやってきたという自負がある。それがオーディエンスの心に響く、「やりたいようにやったらいいんだ。」と壁の向こうから歌が聴こえる。いまは正面で生身の身体で訴えている。

DVDでは気がついていなかったことが、さすがに映画のスクリーンで観ると違う。

この一曲に、エルヴィス・プレスリーが全部つまっているのには驚きました。

もう一回言いますが、震えましたよ。

またたく間に自分のすべてを表現しているのは、もう涙ものですよ。

出だしから終わりまで、どうして、こういうことが出来るんだか、不思議なくらい自分を知り抜いていた上で、惜しげもなく自分を全部見せている。

軽くこなしているかのように思えるパフォーマンスだけど、計算と自然がおりなす、それは神業ですよ。おそろいしいくらいにすごいことと感心が止まらない。

それと併せて、「エルヴィス・オン・ステージ~スペシャル・エディション~」で、一番忘れられないシーンとなった場面があります。

いままでDVDでは、あまり気がつかなかったというか、飛ばしてみていたせいです。

もう一度やろう・・・・音がはずれた。

メンフィス・ビールストリートのショップ

ラスヴェガスに乗り込んで、メイン・ステージでの調整の場面。

仲間と騒ぎながら練習している場面から一転。
人気のないホールに、エルヴィスの声がかぶさります。

「もう一度やろう・・・・音がはずれた」

この編集はエルヴィス・プレスリーの真実を表現しているようで、感動的です。
このステージが実際にどのようにして作られたか、その真実がこのひとことに集約されているようです。

映画では、いろとりどりのリハーサルを見せてくれていますが、一番重要なリハーサル・シーンは隠されたままです。

映画はそれを映像では見せずに、エルヴィスのひとことと声のトーンで語り尽くします。

「もう一度やろう・・・・音がはずれた」

スーパースターへの道は、これをどれだけ繰り返したに尽きるのではないでしょうか?
繰り返すほどに命が育まれていきます。

「エルヴィス・オン・ステージ~スペシャル・エディション~」では、どの曲がすごいと言えないほど、全部が熱唱なのですが、

<アイ・ガット・ア・ウーマン>のパフォーマンスはすごいですよ。

太古から受け継いできた”もともとのいのち”を自分の手にいれて身体と心の全部を使って表現する。一瞬の狂いも、ないかのようなきめ細かな表現は、CDやレコードに聴くバラードの領域をはるか遠くにしてしまう人間の迫力とやさしさに満ちています。

嘘がつけない23歳のロックンローラーは宇宙に還った。

エルヴィス・プレスリー登場!

決して嘘ができない、やさしさは、全身全霊のふるまいからしか、出ないんだと思わせる力。それこそが人間力なのです。

エルヴィスのロカビリーが、自然発生的に価値観の違いによる衝突があったにせよ、他人を攻撃したことは一度もなかった。嘘ができない人間力は、晩年には自らをも責めたのかも知れません。
セックスピストルズのようなアプローチは悪くはないが、音楽はスキャンダルで違約金集めをほぼ目的とした中身はスッカラカンな遊びでもないし金儲けではない。それが何の意味があるのだろう。

音楽に黒も白もない。外していけないのは人の道。不良にだって誇りはある。1956年の<アイ・ガット・ア・ウーマン>と1970年の<アイ・ガット・ア・ウーマン>は明らかに違います。

エルヴィスは母の死後、明らかに変わった。「母親依存症」というラベルを貼る人もいる。双子の兄を死産したことで、幼い頃から不安定な母親を助けなければという気持ちで暮らしながら、孤独な子どもは心配させないことで、ヒーローになろうとする。

3歳のエルヴィスは、「ママ、心配しないで。ぼくが働いて家を買ってあげるよ。車も2台買って、ママに一台あげるからね」と口癖のように言っていたそうです。そういう子どもに国から必要とされることは、とても重要なことで、徴兵されたときも「特別扱いしないでほしい」と懇願したといいます。

他の男には目もくれず
俺に淋しい思いもさせないで
女は家にいるのが一番と
わきまえてる娘なのさ

俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ

スターになってからお金の心配はなくなったが、十分、心のケアができたかと言えば、ほとんど構えなかった。構わなかった。その後悔に苛まれただろう。ジョン・レノンが、「エルヴィスは軍隊に殺された」と言ったらしいが、そうではない。23歳のエルヴィスは「母親とともに死んだ」のだ。
<アイ・ガット・ア・ウーマン>にミスったダメージはやんわりと効いてくる。もうこの世に用がない、その時に「音がはずれた」とは言えないのだ。

時がもう少しスローだったなら、と思いながら、<アイ・ガット・ア・ウーマン>に封入された魂に触れてみたい。楽譜通りではないかも知れませんが、宝石箱から宝石があふれるようなひとときを聴いてみたいものです。

「エルヴィス・オン・ステージ~スペシャル・エディション~」を、ぜひご覧ください。

I Got A Woman

双子の兄を死産したことで、幼い頃から不安定な母親を助けなければという気持ちで暮らしながら、孤独な子どもは心配させないことで、ヒーローになろうとする。

「ママ、心配しないで。ぼくが働いて家を買ってあげるよ。車も2台買って、ママに一台あげるからね」と口癖のように言っていた3歳のエルヴィス坊や。愛する母親を守るために国から必要とされることは、とても重要で、徴兵されたときも「特別扱いしないでほしい」と懇願します。

他の男には目もくれず
俺に淋しい思いもさせないで
女は家にいるのが一番と
わきまえてる娘なのさ
俺の女は町外れに住んでいる
とってもいい娘なんだ

スターになってからお金の心配はなくなったが、十分、心のケアができたかと言えば、ほとんど構えなかった。構わなかった。その後悔に苛まれただろう。

とってもいい娘は逝ってしまったんだ。

23歳で母親を失った時、もう地球に用はなくなり、天国に連れていくために、ロックンロールのキングは宇宙に還って行った。

アイ・ガット・ア・ウーマン / I Got A Woman:1956
エルヴィスは幼い頃から不安定な母親を助けなければという気持ちで暮らしながら、孤独な子どもは心配させないことで、ヒーローになろうとする。<アイ・ガット・ア・ウーマン>他の男には目もくれず、俺に淋しい思いもさせないで、女は家にいるのが一番とわきまえてる娘なのさ、俺の女は町外れに住んでいる、とってもいい娘なんだ。

オールタイム・ロックンロール、キング・オブ・ロックンロール!
ロックンロールは生き方のアート。

ライヴ・イン・メンフィス [LIMITED EDITION]
圧倒する怒涛のライブ。50年代の興奮が蘇る故郷メンフィスのコンサート。
ロックンロール・メロディを聴けばすべては解決する。<偉大なるかな神>はグラミー受賞。

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