クライング・イン・ザ・チャペル CRYING IN THE CHAPEL

エルヴィス・プレスリー 特選ソングス

クライング・イン・ザ・チャペル CRYING IN THE CHAPEL

CRYING IN THE CHAPEL

人はそれぞれに好きなアーティストがあり、共感する何かを感じ取り、生涯のガイドラインにする。

矢沢永吉が好きな人は、矢沢永吉だけを聴き続ける。

「追いかけ」みたいなこともする人も多い。

矢沢永吉といえば、音楽以外では「成りあがり」が有名だ。
彼の自伝で、胸打つ記述も少なくない。

代表曲「アイ・ラブ・ユー・OK」には、どこかエルヴィス・バラードの香りを感じ取る。

エルヴィス・プレスリーが好きな人は、矢沢永吉のような上昇志向より、優しさへの共感を感じ取っているように思う。

それはコンサート会場に足を入れると瞬時に分かる。

自分はエルヴィスのコンサートに行ったことはないが、東京で開催されたバンドは生、エルヴィスの声はフィルムから抽出したものというコンサートには行った。

いろんなミュージシャンも来られていた気がする。

なかでも安岡力也氏は印象に残っている。

直感で「好きだったんだろうな」という気がした。

エルヴィスの優しさは、本当は彼が求めていたものだろう。という気がする。

寂しかったのだろう。

エルヴィスの優しさは、母グラディスへの献身的な姿を通して語られる。

母グラディスへの愛情は、愛される愛とというより、守る愛だと思う。
もちろん、愛されただろうが、それ以上に守ろう、心配かけまいと思ったことが強い気がする。

プリシラに対しても同じだ。

エルヴィスは気兼ねなく甘えて受け入れててほしかったのだろうと思う。しかしできたのだろうか、多分、愛される前に愛することに集中したのではないかと思う。

そこにある寂しさを感じ取ったのではないだろうか?

 

 

チャペルで祈る私の姿をあなたは見ましたね

そこで流した私の涙は喜びの涙だったのです

私は満足の意味を知っています

今、私は主にあって幸せです

そこは素朴で簡素なチャペルです

謙虚な人々がお祈りにやってきます

私は日々をしっかり生きぬくために

主がもっと私を強めて下さるよう祈ります

私はひたすら探し求めつづけました

けれどもここのほかには心の平和を得られる場所は

世界のどこにもなかったのです

今、私はこのチャペルで幸福です

ここでは人々の心は一つです

私たちはこのチャペルに集い

ただ主の誉め歌を歌い主を讃えるのです

あなたはひたすら探し求めつづけるでしょう

けれども、ここのほかには心の平和を得られる場所は

世界のどこにも見つからないはずです

あなたの悩みをチャペルに持っていらっしゃい

そしてひざまづいて祈って下さい

するとあなたの重荷は軽くなり

きっと新しい道が見つかるでしょう

 

ELVIS PRESLEY

 

リリースはビートルズ旋風の真つ只中、1965年4月だが、レコーディングは60年10月30日、31日にかけて行われた。

さすがにRCAビクターも、サントラ盤ばかりでは、エルヴィスの沽券に係わると考えたのか、シングルになっていない録音を引っ張り出して対抗した。そのひとつでチャートを駆け上った。

61年2月の大ヒット曲「サレンダー」を収録するためのセッションのはずだったが、エルヴィス・プレスリーは「主の御手を我が胸に/HIS HAND IN MINE」など大好きなゴスペルを歌いまくってゴスペル・セッションと化した。

除隊後、新たな局面への不安と野心がみなぎった緊張の再活動へ自分を投げ込んだ様子が伺える。この時のゴスペルは主に『心のふるさと/HIS HAND IN MINE』に収録された。

シングル「クライング・イン・ザ・チャペル」裏面の「天の主を信じて」は入隊前のアルバム『心のふるさと』からのカットだ。両面がゴスペルで整えられた。こちらでもうっとりするほど柔らかなエルヴィスが聴ける。

『心のふるさと』を収録した時代。ロックが市民権を得た時代ではなかった。エルヴィス・プレスリーは白眉のスーパースターであったが、同時に非難の対象でもあった。ロックンロールが一過性のものであるという印象が巷にも業界にもあった。エルヴィスもそれに留まる気持ちはなく、野心的だった。

カンツォーネ「イッツ・ナウ・オア・ネヴァー」での驚くようなパフォーマンスに続いて、「クライング・イン・ザ・チャペル」はエルヴィス・プレスリーがどんなアーティストであるのか、そのロックンローラーとしての激しいパフォーマンスの向こうにある等身大の心情をさらけだしたセッションから生まれた。

エルヴィス得意のイントロなしのスタート、ピアノとコーラスが追いかけるような展開は歌一本、歌だけで音楽の頂点にたったエルヴィスならではの音楽への心意気が伺える。

ひとりの人間の人生の一場面を歌ったものだが、イントロなしのスタートによって、そこに至るまでのドラマが匂いたつ短編小説の香りのするような曲。孤独な青年をそれ以上に孤独な表現者が描いた世界を呼吸とともに聴かせる。

”Get down on your knees and pray”神の前にはちっぽけな存在でしかなく、” l’ll grow stronger ”神なしでは強くなれないことを心こめて歌っている。

ナマなエルヴィスが敬虔な気持ちをより一層身を正して立っているので、信仰心のないピエロも思わず教会の窓からのぞき見してしまう。愛ピエロに一歩近付く楽曲だ。

エルヴィスが67年にリリースした「青い涙」の作者グレン・グレンの親アーティ・グレンが1953年に息子のために作った楽曲。

すでに多くのミュージシャンが取り組んでいたので「涙のチャペル」のタイトルで国内でも知られるが、後発ながらエルヴィス盤はその最高峰となった。”You saw me ””Get down “の声が離れない。エルヴィス・バラード数あれど屈指の名作だ。

だが、自分はエルヴィスが求めていた愛は、もっと別の愛だと思い続けている。

 

エルヴィス・プレスリー

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