ロックのルーツはゴスペル。
ゴスペスからブルースが派生した。
ゴスペルにもブルースにも畏敬の念を持たないロッカーが増えている。
それはどうなんだろう。
偉大なるかな神/How Great Thou Art
1966年5月。
映画出演とリリースされないアルバムの間で、孤立していたエルヴィスには魂を解放する時間が必要でした。そして本当の自分に向かいます。
エルヴィス・プレスリ-はロックンロールのルーツに本来の自分を発揮します。
聞き覚えたゴスペル・ソング<偉大なるかな神/How Great Thou Art>を何気なしに、歌っていたのが、キッカケで正式録音。ゴスペル・アルバムを制作します。
お手軽なサントラとは、一味違った力感溢れる楽曲に、本来の実力を発揮。
アルバムタイトルも、そのまま<How Great Thou Art」(邦題:ゴールデン・ヒム>とつけられたアルバムは、ゴスペルが好きでなかった人でも、エルヴィスの本気がうれしくて、夢中で聞き込んだ人が多いようでした。
おお、主なるわが神
われは畏怖と驚嘆をもって
あなたの御手の創造し給う森羅万象を眺めん
われは星を見 雷鳴の轟きを聞き
あなたの御力か全宇宙に顕れるのを見る
(キリストか再びこの世に来たり給う時
主が高らかな歓呼に迎えられて来たり給いて
われを故郷に導き給う時
わか心はいかなる喜びで満たされることか)
その時われはひれ伏し崇めて おお、わか神よ
あなたか如何に偉大なる御方かを誉め歌わん
わが魂は救い、主なる神に向かいて歌う
偉大なるかなわか神
偉大なるかなわが神
わが魂は救い主なる神に向かいて歌う
偉大なるかなわが神
偉大なるかなわが神前田 絢子氏 翻訳
<How Great Thou Art>は、日本では「輝く日を仰ぐ時」で知られています。
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BMGファンハウス
「ピース・イン・ヴァリー~コンプリート・ゴスペル・コレクション~」より
その後、エルヴィスの<偉大なるかな神>は70年代のライヴ・バージョンでも収録されています。
1974年、メンフィスに於ける迫真のパフォーマンスを収録した「エルヴィス・ライヴ・イン・メンフィス」で、74年度グラミー賞ベスト・インスピレーション・パフォーマンスを受賞したことは有名。
選び抜かれたゴスペル24曲を収録した、現在最も新しいゴスペル・アルバム「エルヴィス・アルティメット・ゴスペル」の1曲目に収録されています。エルヴィスのゴスペルへの真摯な愛情溢れる世界の入口として、感銘深いオープニングです。
ゴスペルは不安を鎮めて明日へ一歩踏み出そうと肩を叩くのかも知れません。
ブルースは不安より、もっと確かな明日への絶望からしぼり出したもの。
ロックンロールは不安に負けずに、悲しみをやっつけようとする雄叫びでしょう。
原点にして頂点
エルヴィスの原点は「教会」にあります。教会で培った力を大輪にして花咲かせたのはサンレコードのオーナーだったサム・フィリップスです。
サムのやり方は「直感」でした。エルヴィスが自費で作成したレコード作りに立ち会った秘書のマリオン・キースカーは、サムの口癖が現実になるとに予感した。サムの口癖は「黒人のサウンドと黒人のフィーリングを持つ白人を見つけたら億単位の利益を手にすることができる」でした。マリオン・キースカーはエルヴィスの連絡先を聞いておいた。
そしてサムにマリオン・キースカーはエルヴィスが遺した音源を聴かせる。
エルヴィスとは何者だったのか
マイ・ハッピネス/My Happiness 聴き比べ
エルヴィスが遺した音源は、<マイ・ハッピネス/My Happiness>でした。これを1958年のコニー・フランシスの音源で確認してみてください。
次に1954年のエルヴィスの音源で確認してください。
次に1948年にヒットしたオリジナル音源をお聴きください。
いかがですか、サム・フイッリプスがエルヴィスに関心を持った理由がお判りいただけるのでないでしょうか?
1954年以前、サムはハウリン・ウルフ、リトル・ジュニア・パーカー,B.B.キング、ルーファス・トーマス、ボビー・ブランド・・・などメンフィスはもちろんブルース活動の中心でしコーディングしており、1950年に設立されたチェス・レコードとも交流がありました。チェスは南部を回る5000マイルに及ぶプロモーションを開始していました。畑でミュージシャンを発掘しつつ、車のトランクに積んだレコードを販売しており、サム・フイッリプスもチェスに音源を回していたのです。サム・フィリップスが興したサンレコードは当初ブルース専門のレーベルでした。
<ザッツ・オールライト>誕生
1954年になると、サンで初めて19歳の白人シンガーのレコードを発売します。A面にアーサー・”ビッグ・ボーイ“・クルーダップのブルース<ザッツ・オールライト>をカヴァー、B面にビル・モンローのブルーグラス・ナンバーをカヴァーしたという実に見事なカップリングだった。このレコードにルイジアナ州のラジオ局のDJは「このミュージシャンは新しい興奮だ!ヒルビリーをR&Bのタイミングで歌う!なんということだ、とにかくすごい!聴いたこともない!彼が今後、人気に押し潰さなければ、うまくやっていけるだろう。」とコメントした。」もちろん、エルヴィス・プレスリーのことだ。日本ではエルヴィスが死ぬまでに、死んだ後も、このようなコメントしたものはほとんどいないだろう。エルヴィスがサンレコードで録音したのはブルースが5曲、カントリーが5曲、それらが一緒になると新しいサウンドになった。それはビル・ヘイリーがすでにトライしていたし、ジョニー・レイもビル・ヘイリーと違ったやり方で挑戦していた。これらは極めて自然だったので、日本では彼らをロックンロールのはじまりとするヒトもいる。
だが、サム・フイッリプスはブルースに関わってきた立場で、この性質を見抜いていた数少ないというか唯一の男だった。思い出して欲しい、彼が口癖だった「黒人のサウンドと黒人のフィーリングを持つ白人を見つけたら億単位の利益を手にすることができる」という意味を。
<ザッツ・オールライト>誕生、つまりロックンロール誕生には、ちょっとしたエプソードがあります。
サムはエルヴィスをデビューさせる一年前から、スタジオに頻繁に訪問することだけをエルヴィスに勧めてエルヴィスの自由にさせた。エルヴィスの訪問頻度は増えリラックスして遊ぶことができた。そしてある日、「ブルースをやってみないか」と電話を入れてエルヴィスのこころにスイッチを入れた。エルヴィスは喜び勇んで駆けつけた。そうして苦戦した結果、コピーではない唯一無二の<ザッツ・オールライト>が誕生した。
なるほど映画『エルヴィス』でトム・ハンクスが演じたエルヴィスのマネジャー、トム・パーカー大佐も、エルヴィスの音源を聴いて「黒人だろ」と呟くが、彼には、サム・フイッリプスのような感性はなかった。
サムにはエルヴィス同様にブルースと黒人音楽全般に関わってきた幅広い歴史をはじめバックグラウンドが染み込んでいた。サムもエルヴィスもその恩恵を体現できた稀有な存在だったのだ。
<ブルー・スエード・シューズ>誕生
カール・パーキンスの<ブルー・スエード・シューズ>が世に出たのは、エルヴィスをRCAビクターに転籍させることで得た3万5千ドルを手にしたあとだった。カール・パーキンスの<ブルー・スエード・シューズ>は当時のベストセラーとして大ヒットした。そのヒットを皮切りにエルヴィスを売った資金で、ジョニー・キャッシュ、チャーリー・リッチ、ジェリー・リー・ルイス、ロイ・オービソンらを次々と世に送り出した。ジョニー・キャッシュの<アイ・ウォーク・ザ・ライン>は、1956年の6週連続ナンバーワンヒット曲で2005年の自伝映画のタイトルにもなったが、この曲にもサムは深く関わっていて、ジョニー・キャッシュが作曲したのを最後にはキャッシュがこんなの歌えないとダメ出しするところまでどんどん早いテンポに変えてしまった。その結果大ヒットしたが、その感性はブルースと黒人音楽全般に精通していたことにある。
驚くべきエルヴィスによって、サムは日頃の口癖を体現し、一連のロカビリアンを世に送り出すことができた。サムとエルヴィスによって大物アーティストになることができた彼ら、たとえばカール・パーキンスは「俺にギターを教えてくれたのは黒人の老人だった。俺が育ったところには白人は俺の家族だけだった」と述べているように、貧しいだけの黒人地帯で育ったというだけでなく、文化さえ黒人から学んでいたのだ。サンレコードからデビューしたミュージシャンたちは全部そうだった。
だからといってサムに絶対的な自信があたわけではない。誰にもロックンロール成功体験なんてない時代のことだ。自分を信じながら自分を疑っていたことがエルヴィスに関わったヒトには少なからず疑念があった。1956年爆発的な人気を得ていたエルヴィスにさえ大丈夫かという疑念が付いて回った。
エルヴィスと長期契約に成功したハリウッドの大物プロデューサー、ハル・B・ウォリスでさえ、どんな映画を撮っていいのかわからず、他社に貸し出す始末だった。映像を持たないサムの場合、事態はもっと深刻だった。依然としてエルヴィスを黒人だと思い込んでいる人が後を絶たないのだ。
ロックンロールをコントロールしたがる金の亡者たち
驚くべき成功がサムにも、エルヴィスにも続いた。しかしロックンロールを商品としてコントロールしたがる金の亡者たちが押し寄せるようになり、ミュージャンは人気に押し潰され、サムのアシスタントだった男たちもバラバラになり、サムもビジネスマンとして大きな勝負に出る。
ホテルチェーン「ホリディイン」の最初の投資家になった。
エルヴィスは『偉大なる神』をリリースする。
最愛の母を失い、国家の戦略で入隊させられた上、金の亡者であるトム・パーカーのあの手この手に嫌気が差しエルヴィスのモチベーションは下がる一方で、気分的に孤立していたエルヴィスが、本当の自分に向かったさきが自身の原点であるゴスペルでした。それはロックンロールの原点でもありました。映画『エルヴィス』をご覧になった方ならお判りでしょう。映画の冒頭、目を輝かせてゴスペルに酔いしれとブルースに魅入られるエルヴィス少年のすがたがありましたね。
エルヴィスは「君は君のままでいいんだよ」と歌で。歌詞ではなく身体でメッセージした人類最初のシンガーです。
エルヴィス・アルティメット・ゴスペル
■エルヴィス・アルティメット・ゴスペル
1.偉大なるかな神
2.ソー・ハイ
3.アメイジング・グレイス
4.クライング・イン・ザ・チャペル
5.ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン
6.スイング・ダウン・スイート・チャリオット
7.ミルキー・ホワイト・ウェイ
8.ヒズ・ハンド・イン・マイン
9.アイ・ビリーヴ・イン・ザ・マン・イン・ザ・スカイ
10.ホエア・クッド・アイ・ゴー・バット・トゥ・ザ・ロード
11.イフ・ザ・ロード・ワズント・ウォーキング・バイ・マイ・サイド
12.ラン・オン
13.ヒー・タッチト・ミー
14.ロック・マイ・ソウル
15.リード・ミー・ガイド・ミー
16.ジェリコの戦い
17.イフ・ウィ・ネヴァー・ミート・アゲイン
18.ハレルヤ・ジョン
19.リーチ・アウト・トゥ・ジーザス
20.フー・アム・アイ?
21.ヘルプ・ミー
22.ロザリオの奇跡
23.テイク・マイ・ハンド・プレシャス・ロード
24.谷間の静けさ
苦しいとき、悲しいとき、うれしいとき。親友のように励ましてくれる声。
聴くものの暮らしを変える力を持つ真実。
一度は聴いてほしい魂揺さぶる100曲をセレクト。
エルヴィス・・・それはあなた自身の魂の声です。
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