恋はいばらの道を/True Love Travels on a Gravel Road:1969

エルヴィスがいた。

日本男子がエルヴィスの名盤中の名盤として愛してやまないアルバム『エルヴィス・イン・メンフィス』からの<恋はいばらの道を>は、スローテンポなシンプルなカントリーナンバー。ロバート・ジョンソンに代表される「朝、眼が覚めたら彼女はいなかった」というブルーズと違い、エルヴィス・ブルーズは、「朝、目が覚めたら、彼女が微笑んでいた」というブルーズ、その違いはカントリーテイストの違いなのか、<ミステリー・トレイン>のように悪魔にさらわれても追いかけて追いかけて奪い返す。それがエルヴィスの音楽ではないのか。
ディアン・ディーがスマッシュヒットさせた曲を、エルヴィスは自分の本質を嗅ぎつけたのか、リリースと同時にカヴァー、1969年2月17日にメンフィス・アメリカン・サウンドで録音。

『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』に登場するエルヴィスは恋人アラバマを命がけで守ろうとするクラレンスにいいます。

俺はおまえが好きだった。これからもずっとな。

エルヴィスの本質が響くシーンです。

恋はいばらの道を/True Love Travels on a Gravel Road

<恋はいばらの道を>を聴くと浮かんでくるのが、映画『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』です。

『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』が切ない。
そのバイオレンス・シーンの激しさにもかかわらず、若い女性の心をとらえて離さないのは、その無垢さ。エルヴィスと千葉真一のカンフーしか頭にないような彼と、彼と彼への愛しか持っていない女の子。

世間のみんなが冷たい視線しか投げかけなくても、満面の笑みで「世界一素敵な奴」だと言ってくれる彼。「世界一素敵な奴」だと言って喜んでいた息子を守るために、わざと犯罪組織に悪態をつき星になる父。目を覆いたくなるような、痛々しい彼女への暴力シーンに、女の子たちは泣く。

それほどまで彼のために生きようとする姿勢に泣く。血まみれの彼女を抱き寄せ、オレのためにと謝りながら疾走する姿に愛の素敵を見る。住むところさえなく逃避行を続ける二人にあるのはエルヴィスが1956年につけていた指輪とタトゥと愛をまとった身体だけ。愛一杯にして身体だけで生きる姿勢が永遠のラブ・ムービーとして光るアラバマとクラレンスの物語。

汗が涙に見える男、エルヴィスは彼に言う。

「おまえには負けたぜ。クラレンス」
「最高にクールだ。」
「俺はおまえが好きだった。これからもずっとな。」

彼にはそう聞こえる。キングに存在を肯定されることでクラレンスは永遠に戦える。

キング・エルヴィス・プレスリーが宇宙に帰還後に制作されたエルヴィス映画の最新作『スコーピオン』は劇画タッチの超激写なれど、ブラックユーモアの味つけがユニーク。
『サッチ・ア・ナイト』が頭から離れなくなって”うふふ”の破れかぶれ青春リターン・マッチ。

一方、青春真只中『トゥルー・ロマンス』はやはり帰還後のエルヴィス映画大傑作。
蹴っ飛ばされ、転がって、走って、こけて、痛みも切なさも、ロカビリー。

”監獄ロックこそロカビリー
彼はロカビリーの神だった
タフでツッぱっていて無礼
あの映画の彼はロックを歌いまくって
太く短く生きて散っていく
おれの理想のカッコいい男だ
エルビスは最高さ
おれはおカマじゃないが
エルビスは女より美しかった”

しみじみセリフは、飾りじゃない。ツッぱり野郎の宣戦布告が全編を支配して熱い。

『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』は、テネシー州のノックスビル生まれのロサンゼルス育ちのクェンティン・タランティーノが脚本を執筆。アップルコンピュータのCMや『トップガン』『スパイ・ゲーム』の映像作家トニー・スコット監督したアクションとラブ・ロマンスの傑作。
クェンティン・タランティーノの出世作であり、エルヴィス映画番外編と呼んでもいい『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』。

クリスチャン・スレーター(クラレンス)パトリシア・アークエット(アラバマ)を主演にブラッド・ピット、ゲーリー・オールドマン、デニス・ホッパー、サミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・ウォーケン、いまならオールスターというキャストで制作されたカルトな傑作。
エルヴィス(エルビス)役をなんとバル・キルマーが演じている。

世界一の女の子を守るために戦う彼のために、キングはキングと呼ばれるのがふさわしい。
彼にいばらの道を乗り越える勇気を与え、奇跡をもたらし、真実の愛を守るために、キングはその任務を全うする。二人の息子にエルビスと名付けられるまで。

そう言えばキングも歌と懐かしい愛と痛んだ愛しか持っていなかったような気がする。

除隊後、グレイスランドの一角にある小さなオフィス。取材陣に初めてプリシラのことをインタビューされたエルヴィスには、少年のような笑顔がこぼれていた。隠せないそれはクラレンス(クリスチャン・スレーター)が父(デニス・ホッパー)に見せた表情と変わらなかった。

恋はいばらの道を>は『トゥルー・ロマンス』とは無関係だが、紛れもなくアラバマとクラレンスの物語。—–そしてエルヴィスが淡い夢を描いた遠い夏の日の歌。

傷ついた女性たちへのエルヴィスの応援歌

何人いるだろうか?
サテンやレースのしゃれたドレスが着られるのに
粗末な木綿の服を選ぶ女の子は
恥ずかしさを 少しも顔にあらわさず
恋人の傍らに堂々と立てる女の子は

何人いるだろうか?
何年も寒い冬を過ごした後で
冷たく冷めてしまわない心をもつ人は
真の愛は いばらの道を通り抜けてこそ

ゴールドで舗装された道を歩いただけでは
愛は よそもの
心は危なっかしいだけ
真の愛は いばらの道を通り抜けてこそ

長い歳月を 僕たちは
多くの困難を 涙と共に乗り越えてきた
でも それが二人の愛を育んでくれた
いつも 二人は一緒
どんなに強い風が吹き荒れるとも

これまで 一度だって
君の青い瞳に ねたみや
迷いの色を 見たことがない
真の愛は いばらの道を通り抜けてこそ

ゴールドで舗装された道を歩いただけでは
愛は よそもの
心は危なっかしいだけ
真の愛は いばらの道を通り抜けてこそ

おおベイビー

おお真の愛はいばらの通を通り抜けてこそ
真の愛は いばらの道を通り抜けてこそ 

『トゥルー・ロマンス』をバイブルにする人へこの曲を

How many girls choose cotton dress world
When they could have satins and lace
And stand by her man
Never once et the shame touch her face
How many hearts could live through all the wlnters
We’ve known and still n()t been cold
True love travels on a gravel road

*Love is a stranger and hedrts are In danger
On s mooth street paved with gold
True love travels on a gravel road

Down through the years
We’ve had hard time and tears~
But they only helped our love grow
And we’ll stay together no matter how strong the wind blows.
Not once have I seen your blue eyes
Filded with envy or stray from the one that you hold.

True love travels on a gravel road

*Repeat

True love travels on a gravel road
True love travels on a gravel road

アラバマとクラレンスが身につけていた馬蹄形のロカビリーな結婚指輪はエルヴィスが1956年、いまや伝説となった熱い<ハウンド・ドッグ>録音時にしていた指輪。

『トゥルー・ロマンス』を心のバイブルにする女性たちに恋はいばらの道を>を・・・・。
アラバマとクラレンスは田舎的でアイデンティティも希薄で、互いを自分の居場所にするほど共依存的だ。だからこそ命がけでいのちを守ろうとする。

どこにでもいる彼、彼女たちの心がドラゴンの背に乗っていつか癒され、幸福な人生を手にすることを祈って。

エルヴィス・プレスリーの名言のひとつ。
「オレは重要な人間になりたいなんて考えたこともない。」

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