今夜は恋の気分で / Tonight Is So Right For Love

全映画研究

エルヴィス・プレスリー主演5作目にして初のコメディ。
人気絶頂期の1958年、陸軍召集、全米騒然の内に入隊したキング・オブ・ロックンロール、エルヴィス・プレスリーの軍隊から復帰、世界がどよめいた第1作。

ニュルンベルク裁判(1945年11月20日 – 1946年10月1日)から14年後のドイツ。すっかり戦争の匂いも消えたフランクフルトを舞台に、エルヴィス・プレスリーのドイツ駐留の軍隊生活をそのままヒントに、ハル・B・ウォリス・プロダクションが製作した心地よい映画は、もちろん大ヒット。
エドモンド・ベロインとヘンリー・ガーソンが書き下ろしたオリジナル脚本を、ハル・B・ウォリス製作映画の常連監督ノーマン・タウログが初めてエルヴィスと組んだ。
いわゆる「エルビス映画」の方向性を決めた一作。

撮影は「底抜け宇宙旅行」のロイヤル・グリグス、音楽をジョセフ・L・リリーが担当し以後エルビス映画の常連となった。
出演は「闇に響く声」に続くエルヴィス・プレスリー、「カンカン」のジュリエット・プラウズ、ほかにロバート・アイヴァース、レティチア・ローマンら。
セクシーさと清楚さを兼ね備えダイナミックなダンスを披露するジュリエット・プラウズとの共演は見ものだ。

エルヴィス・プレスリーは以下の10曲を歌う。

What’s She Really like(僕の彼女はこんな風)
G.I.Blues(G.I.ブルース)
Doin’ the Best I Can(ベストを尽くしたが)
Frankfurt Special(フランクフルト・スペシャル)
Soppin’ Around(いかす買物)*レコーディング時、エルヴィス自身がギター演奏
Tonight Is So Right For Love(今夜は恋の気分で)
Wooden Heart(さらばふるさと)
Pocketful Of Rainbows(ポケットが虹でいっぱい)
Big Boots(奴のあだ名はビッグ・ブーツ)
Didja’ Ever(マーチで行こう)

エルヴィスが「ベストを尽くしたが」を歌っている時に、「ブルー・スエード・シューズ」がジュークボックスから流れてくるのもご愛嬌。

見逃せない!エルヴィスはこの26本の劇映画に主演していますが、本作「G.I.ブルース」での歌のパフォーマンスでは独特の雰囲気を醸し出しています。

今夜は恋の気分で / Tonight Is So Right For Love

「今夜は恋の気分で」は2つのバーションがあり、アメリカ版公開映画では、No.1を使用。ヨーロッパ、日本公開版ではN0.2を使用するという複雑な展開。

その理由は、原曲がドイツ民謡だったことに起因する著作権の問題といいます。

「今夜は恋の気分は」シド・ウェインとアブナー・シルバーのコンビが、「Bergreller/ホフマンの舟歌」をベースに改作したもの。劇中「Bergreller」というナイトクラブでエルヴィス・プレスリーが歌います。

サントラ盤アルバムは連続111週チャートインの大ヒット。2年以上ランキングされました。
第三回グラミー賞にもノミネートされました。

今夜は恋の気分で / Tonight Is So Right For Love

映画「G.I.ブルース」キャスト

キャスト(役名)

エルヴィス・プレスリー Elvis Presley(Tulsa_McCauley)
ジュリエット・プラウズJuliet Prowse (Lili)
J ジェームズ・ダグラスames Douglas(Rick)
ロバート・アイヴァースRobert Ivers(Cooky)
レティチア・ローマンLeticia Roman(Tina)

映画「G.I.ブルース」スタッフ

スタッフ

監督 : ノーマン・タウログ Norman Taurog
製作 : ハル・B・ウォリス Hal B. Wallis
脚本 : エドモンド・ベロインEdmund Beloin / ヘンリー・ガーソン  Henry Garson
撮影 : ロイヤル・グリグス Loyal Griggs
音楽 : ジョセフ・J・リリー Joseph J. Lilley
美術 : ハル・ペレイラ Hal Pereira /ウォルター・タイラー Walter Tyler
編集 : Warren Low

監督 Norman Taurog (ノーマン・タウログ)

ノーマン・タウログはコメディ映画の監督として有名でしたが、シリアスな映画でも成功。『少年の町』(1938年)でアカデミー作品賞にノミネートされた。さらに、古典文学の中で最も元気が良くて成功した映画化でデヴィッド・O・セルズニックが1938年に制作した『トム・ソーヤ』やMGMの戦前の最後のミュージカル『踊るニュウ・ヨーク』(1940年)も手がけた。

ノーマン・タウログは、エルヴィスと長期契約を結んだ大物プロデューサー、ハル・B・ウォリス、エルヴィス・プレスリーと彼のマネージャーのトム・パーカーに気に入られ、1960年から1968年までにエルヴィスのロックンロール映画9本を撮りあげた。プレスリーの映画では最多。
ハル・B・ウォリスとは、ジェリー・ルイスとディーン・マーティンの『底抜け』シリーズも手がけた。

■監督 作品

お化け大統領
踊るニューヨーク
五つ児王国
当たり屋勘太
百万円貰ったら
頓珍漢大勝利
キャベツ畑のおばさん
スーキー
愉快なリズム
カレッジ・リズム
恋と胃袋
バギー万才!(1969)
スピードウェイ(1968)(1968)
カリフォルニア万才(1966)
ビキニマシン(1965)
いかすぜ!この恋(1965)
ヤング・ヤング・パレード(1963)
パームスプリングの週末(1963)
ガール!ガール!ガール!(1962)
七面鳥艦隊(1961)
ブルー・ハワイ(1961)
G・I・ブルース(1960)
底抜け宇宙旅行(1960)
船を見棄てるナ(1959)
水兵さんは暇がない(1958)
陽気のせいデス(1956)
底抜け西部へ行く(1956)
歓びの街角(1956)
お若いデス(1955)
底抜けニューヨークの休日(1954)
楽しき我が家(1953)
底抜けやぶれかぶれ(1953)
底抜け落下傘部隊(1952)
逃げた花嫁(1948)
初めか終りか(1947)
感激の町(1941)
少年の町(1938)
トム・ソーヤの冒険(1937)(1937)
恋の手ほどき(1933)(1933)
坊やはお休み(1933)
王様ごっこ(1931)
スキピイ(1931)*アカデミー賞監督賞受賞
腕白大将(1931)
ラッキー・ボーイ(1929)
田舎娘(1928)

制作  Hal B. Wallis (ハル・B・ウォリス)

ワーナー・ブラザースに入社、1930年代より370作品以上にプロデューサーとしてクレジットされているプロデュース作品の多くがアカデミー作品賞にノミネート、『カサブランカ』(1943年)では受賞。映画界への貢献が認められ、アービング・G・タルバーグ賞を2度更にセシル・B・デミル賞も受賞している。

ハル・B・ウォリスは、エルヴィス登場と同時にいち早く動き、長期契約を実現したが、どう扱えばいいのか暗中模索の状態だった。(エルヴィス自身を含め誰も経験したことのない全く読めない時代だった)そこでエルヴィスを他社に貸し出し「やさしく愛して」で様子を見ることに・・・方針が定まったのは今作「G.I.ブルース」のヒットだった。
エルヴィス映画とタッチがにているものとしてディーン・マーティンとジェリー・ルイスの底抜けシリーズは一斉を風靡した。最後にプロデューサーとしてクレジットされた作品はジョン・ウェインよキャサリン・ヘップバーン主演の西部劇『オレゴン魂』(1975年)。お見事な映画人生。

■製作 作品

私は殺される
失恋4人男
情熱の航路
オレゴン魂(1975)
ザ・ファミリー(1973)
フォロー・ミー(1972)
新・ガンヒルの決闘(1971)
クイン・メリー 愛と悲しみの生涯(1971)
朝焼けの空(1970)
勇気ある追跡(1969) *ジョン・ウェイン アカデミー主演男優賞受賞
1000日のアン(1969)
5枚のカード(1968)
裸足で散歩(1967)
ハワイアン・パラダイス(1966)
GO!GO!GO!(1966)
ボーイング・ボーイング(1965)
エルダー兄弟(1965)
アカプルコの海(1964)
青春カーニバル(1964)
ベケット(1963)
ガール!ガール!ガール!(1962)
肉体のすきま風(1961)
ブルー・ハワイ(1961)
G・I・ブルース(1960)
底抜け宇宙旅行(1960)
凡ては夜に始まる(1960)
船を見棄てるナ(1959)
ガンヒルの決斗(1959)
果てしなき夢(1959)
闇に響く声(1958)
野性の息吹き(1957)
底抜け一等兵(1957)
さまよう青春(1957)
OK牧場の決斗(1956)
雨を降らす男(1956)
底抜けのるかそるか(1956)
画家とモデル(1955)(1955)
バラの刺青(1955)
底抜け最大のショウ(1954)
ふんだりけったり(1953)
底抜けびっくり仰天(1953)
赤い山(1952)
底抜け落下傘部隊(1952)
愛しのシバよ帰れ(1952)
北京超特急(1951)
底抜け艦隊(1951)
旅愁(1950)
欲望の砂漠(1949)
美しき被告(1949)
ラブ・レター(1945)(1945)
渡洋爆撃隊(1944)
サラトガ本線(1943)
ラインの監視(1943)
カナリヤ姫(1943)
戦場を駆ける男(1942)
壮烈第七騎兵隊(1942)
マルタの鷹(1941)(1941)
ヨーク軍曹(1941)
月光の女(1940)
愛の勝利(1939)(1939)

■製作総指揮
札つき女
ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942)
ハイ・シェラ(1941)
前科者(1940)

映画「G.I.ブルース」物語

実際の駐留生活を連想させるような物語がコミカルに描かれます。

西ドイツ、フランクフルト駐屯アメリカ装甲師団のお調子者3人組、タルサ(エルヴィス・プレスリー)とリック(ジェームズ・ダグラス)とクッキー(ロバート・アイヴァース)は、除隊したら故郷オクラホマでナイトクラブを経営するのが夢。

タルサは部隊の戦車の砲手、その部隊にはオイローパというカフェの身持ちの固い美しいダンサーがいることが評判、彼女を陥落させた者には300ドルが与えられる賭けができていた。
身持ちの固いダンサーとはリリ(ジュリエット・プラウズ)のこと。
タルサら3人組は、オイローパに行き、りりの出演を確かめて入る。
早速リリに言い寄ろうとするタルサだが相手にされない。

同じ時、言い寄るカフェの常連に水をぶっかけたりりは偶然居合わせたタルサに米兵のほうがマシよとタルサに告げる。
気をよくしたタルサは有頂天。
俄然意欲を出したタルサは苦心のすえリリとデートする機会を得た。音楽が好きな2人は様様なカフェのはしごをしているうちに次第に仲よくなった。

彼女はタルサを自分のアパートに誘った。そこで彼女のルームメイトティナに会う。
りりの日常を知ったタルサは真剣に恋してしまった。
リリも他人やこどもにやさしいタルサの立ち振る舞いに信頼し、好意をよせた。
二人はデートをし、互いに感情は高まっていった、

しかし、真剣に恋してしまったタルサには賭けをしていることが切り出せず苦悩する。
やがてリリはある日タルサの上官から、自分には300ドルの金が賭けられているのを聞いてしまった。
リリは失望し、タルサの弁解も聞かなかった。
失意のタルサは仲間のひとりリックとその恋人マーラの間に生まれた赤ん坊のおもりをして心をなぐさめた。

だが赤ん坊は泣いてばかりいた。困ったタルサは唯1人の女の友達であるリリに電話で相談した。赤ん坊をつれて、タルサはリリのアパートに行った。
賭けに参加した兵士たちはリリとタルサが赤ん坊を抱いているのを見て驚いた。

やがてタルサの真実を知ったリリは、以前にましてタルサに信頼をよせた。
タルサとりりはフランクフルトに恋の大輪を咲かせた。

アメリカの青春映画とミュージカルの楽しさをコラボレーション!
エルヴィスとジュリエット・プラウズの共演が楽しい

DVD 「G.i.ブルース」

エルヴィス・プレスリーとは何者なのか?

1950年代に、アメリカやイギリスをはじめとする多くの若者をロックンロールによって熱狂させ、20世紀音楽の最大のムーブメントを引き起こした正真正銘のスーパースター。

「すべてはエルヴィスから始まった。エルヴィス以前には何もなかった」ジョン・レノン

「エルヴィスは神の贈り物だ、何の説明もいらない、
数千年に一度救世主がやって来るが、エルヴィスはその時代の救世主だった」
リトル・リチャード

「エルヴィスはロックンロールのビッグバンだ」U2 ボノ

音楽的な成功に留まらず、人々の魂の友として、エルヴィスが人に与えた勇気は計り知れない。

極貧な幼少時代からスーパースターに上り詰めたことから、彼はアメリカンドリームの象徴であり、人種差別の壁を取り払った最初のスーパースターである。
エルヴィス・プレスリーは、言葉・スローガンではなく行動、存在でやり遂げた点で、まったく異質である。

さらに「ロックは若者を悪くする」という当時の大人たちの弾圧に痛めつけられながらも、気にも留めていないように軽く跳ね返し、若者たちの間でロックンロールは支持され拡大した。
その姿は音楽界の「アレクサンドロス・シーザー・イエスキリスト」を彷彿させる。

50年代終わりに米軍に召集され、ドイツに駐留。その間に人間力と音楽力を高め、帰国後は民謡をロックンロールとの融合を成功させたポップスに挑戦、爆発的な大ヒットを連発しロックンロールをメジャーな音楽に押し上げた。
この柔軟さに体制に反抗する若者には不満になった面があるが、支持は全世界の全世代に及んだ。

「キング・オブ・ロックンロール」と呼ばれるが、アメリカでは「THE KING」といえば彼を指す。「神は細部に宿る」というが、エルヴィス・プレスリーの画像を施した商品は車から食べ物までいたるところに存在する。
正真正銘の神であり、グロテスクである。つまり安心であり同時に欲望である。
このような存在はエルヴィス以外にいない。

ジョン・レノンは「エルヴィスがいなければ、ビートルズはなかった」と語っているが、ビートルズはエルヴィスから良い面も悪い面も学ぶことができた。

ビートルズは、アート性を押し出すことで、エルヴィスのグロテスクさを回避することができた。
エルヴィスのロックンロールはカントリーとリズム&ブルースの融合で、土の匂いがプンプンする音楽だが、初期ビートルズはこの両面を切り分けロックンロールを抽出することでアート性を強調、後期に至っては、オノ・ヨーコのアート性を借りながらビーチボーイズ、ボブ・ディランのアート性を上手に取り込んだ。

ビートルズ最後のアルバム「アビーロード」をプロデュースしたフィル・スペクターは、エルヴィスをプロデュースできなかったことを悔しがっていた、「エルヴィスなら、なんでもできた

エルヴィス・プレスリーのアートなグロテスクさ

エルヴィスのグロテスクさはとは、誰にでもある、生きることの泥臭さ、ありふれた日常の幸せの希求からこぼれる土着の香り。特に生涯を南部で過ごした人なら身体で知っている匂いだ。

ファッション誌では決して取り上げることのない、生々しい生。

エルヴィスは語らなかったが、皮膚で聞き皮膚でメッセージした。

実際、イエス・キリスト伝説のようだ。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれひとり父のみもとに来ることはありません。」(ヨハネ14:6)
エルヴィスをイエスのフレームにはめこんで、ここまで言うと、さすがに恥ずかしくなるが、本当に似ている気がする。彼は大衆の欲望を受け止め、受け止めきれず倒れた。エルヴィス・プレスリーとは大衆が創り出した幻影だ、しかし大衆には幻影が必要なのだ。

エルヴィス・プレスリーは早い段階で知っていて、応えるべくして短い人生、つまり底知れぬ孤独と闇を、限りなく遠くまで走り抜けて、誰もいけない場所まで到達して、自らを「苦難な道」にして、そこに光を与え続けた。

「エルヴィス・プレスリー?彼は神よ。」と、マドンナはひとことで語り尽くした。

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