エルヴィス・プレスリーの「Hurt / 心の痛手」

心の痛手 エルヴィスがいた。

ビリー・ジョエルが同名のトリビュートソングをリリースした「エルヴィス・ブールバード(From ElvisPresley Boulvard,Memphis Tenessee/メンフィスより愛をこめて)」。
タイトル通り、自宅グレースランドで録音したアルバム(1972年2月)は、カントリーチャードで第1位にランキングされ、RIAA認定ゴールドディスクからシングルカットされた「心の痛手/フォー・ザ・ハート」の両A面は、エルヴィスを知らない人の胸もコンコン、ノック、50年代の香りを漂われたドラマティックなパフォーマンスは「地響きがするね」と唸らせます。さらにとどめとなるセリフ部分から歌へと変わる部分はドキドキさせます。
カントリーチャート6位にランキングされた。

心の痛手/エルヴィス・プレスリー

From ElvisPresley Boulvard,Memphis Tenessee/メンフィスより愛をこめて

ナットキングコールが歌った「If I Give My Heart To You」の作者ジミー・クレインとアル・ジェイコブスが1953年に共作、「ユール・ナヴァー・ウオーク・アローロン」「アンチェイド・メロディー」などR&Bヒットで知られるロイ・ハミルトンが、エルヴィスがデビューした1954年にヒットさせた楽曲をカヴァーした曲。黒人ジャズシンガー、ダイナ・ワソントンのパフォーマンスと聴き比べてみるのも楽しい。「えっ、同じ曲?」とここまで変わるのかと驚くこと間違いなし。
エルヴィスはライブでも歌っていて、人生最後のアルバム『エルヴィス・イン・コンサート』にも収録されている。

傷ついたよ
君が嘘をついていたと思うと傷ついたよ、
胸の奥深くまで君は言った、
二人の愛は本物で永遠に別れたりしないと
なのに新しい恋人ができたなんて
僕の心は張り裂けそうさ傷ついたよ
君には分からないほど深く
そうさダーリン、傷ついた
まだ君を愛しているから
他の誰にもできないほど
ひどく傷つけられようと
僕は絶対、絶対に君を傷つけない
愛してる、愛してる愛してる

70年代エルヴィスのソフルフルな宝物「心の痛手」

心の痛手

75年10月<想い出の影>の後を受けて76年3月にリリースされた「HURT/心の痛手」がそのキャリアのなかでも重要なポジションにあるひとつの理由は、この悲しく痛ましいこの曲が、エルヴィスの晩年とオーバーラップして聴こえるところにあるらしい。

しかし、そこまで激しく動揺させるのは、真実そのような理由ではない。と、言い切ってしまおう。
グレイスランドに録音機材を持ち込んでセッション。
ここには「遠山の金さん」がお白州で、桜吹雪を見せて啖呵を切る、それに似た理由によるものだ。

つまり、シットダウン・セッション、サンのめまいがするような数々の表現、それと同じ理由による。そう、ここにはロックンローラーとしての、正真正銘のエルヴィス・プレスリーが仁王立ちしているのだ。
ゴスペルへの、ブルースへの、ロックへの熱情を全身で表現している姿を感傷的な受け取りをしてあげてはいささか失礼だと思うのだ。

エルヴィスにとってもロックロール誕生と言い切ってよいであろう、世界中の若者に自由の風を送り込み、快調にしてしまった「今夜は快調!」、

ゴスペルからはみだしブルースの魔手に墜ちる寸前でロックンロールへと誘った永遠の青春賛歌「ミステリー・トレイン」、怒りをもって涙をぬぐい、すべてを許しながら、満身を震えさせながらも自己肯定に遂に至った「ミルクカウ・ブルース・ブギー」、あるいはこの世の終わりに突進するしか考えられない男の無念、情念を、ほとんどアカペラ、アナーキーなサウンドでハードボイルドなモノクロの夜景にして切り取ってみせた「ハート・ブレイク・ホテル」の衝撃と比べても、遜色が亡く、70年代も後半にさしかかった時に、問答無用の50年の匂いプンプンのまま、2分少しというロックンロール&シングル盤のルールを守りながら、エルヴィスは素晴らしく挑戦的に、どこをどう聴いても、無駄のないR&Bの大傑作に仕上げているのだ。

「Hurt / 心の痛手」歌詞

エルヴィス・バラード

I’m so hurt
To think that you lied to me
l’m hurt way down deep Inside of me
You said our love was true
And we’d never, never part
Now you want someone new
And it breaks my heart

I’m hurt
Much more than you’
ll ever know
Yes darling,
I’m so hurt
Because I still love you so
But even though you hurt me
Like nobody else could ever do
l would never, never hurt you
Love you, Iove you
l love you

76年2月。すでにこの時期、エルヴィスの体調は万全でなかったはずにもかかわらず快調だ。心身ともに疲労するなかで、プロとして自分で自分を否定しながら、新境地を切り開き、円熟味を増したばかりか、これだけの熱情は驚きと言っても過言ではない。

“I’m so hurt “どこへ飛んで行くのかと思う程に激しい悲しみの洪水で始まるや、”To think” エルヴィスはみごとな意志の力で、「アート」にふさわしい着陸をする”that you lied to me”。この最初の歌詞2行でエルヴィスはグレイスランドの主である、いまその瞬間と、サンレコードのドアのノブを最初に回した日の2つの点を線にしてみせる。

“To think” に宿る意志のきらめきこそ、線上のエルヴィスのいまここになのだ。「痛みに負けることも、負けないことも、すべては意のまま、誰も自分を傷つけることなどできない。しかし君が望むなら傷ついてあげてもいいんだよ」と言わんばかりに裏切りを受けてたつ。それゆえにファイナルの”l would never, never hurt you Love you,——“が一層輝く。
その凄さに実像、虚像のアラベスクに目を奪われるが、ここにはまぎれもないプロフェッショナルがいるのだ。

ここで聞かせる”Much more—-”迫真の台詞も、数ある台詞入り楽曲の中でも群を抜いて声、表現とも最高峰と太鼓判押して間違いのない素晴らしさで不自然さがまったくなく曲を盛り上げている。またその閑のジェームス・バートンのギターは相変わらず仰々しく見せつけるプレーなどせずに、熱く静かに泣いているのが嬉しい。さらにはグレン・ハーディンのピアノも、エルヴィスが誇らし気に紹介していた、それにふさわしいプレーで泣かせている。
一級品、いや特級の男たちが、女の斬り付けた傷を愛しながら、人生を語った夜のできごとである。

「バーニング・ラブ」「約束の地」と並んで、70年代エルヴィスが自分のルーツを見つめながら、遺してくれた宝物である。

ELVIS 30#1 HITS

エルヴィス30ナンバー1ヒッツ ELVIS 30#1 HITS

2002年9月25日全世界同時発売

1. Heartbreak Hotel/ハートブレイク・ホテル
2. Don’t Be Cruel/冷たくしないで
3. Hound Dog/ハウンド・ドッグ
4. Love Me Tender/ラヴ・ミー・テンダー
5. Too Much/トゥー・マッチ
6. All Shook Up/恋にしびれて
7. Teddy Bear/テディ・ベア
8. Jailhouse Rock/監獄ロック
9. Don’t/ドント
10. Hard Headed Woman/冷たい女
11. One Night/
ワン・ナイト
12. A Fool Such As I/ア・フール・サッチ・アズ・アイ
13. A Big Hunk O’ Love/恋の大穴
14. Stuck On You/本命はお前だ
15. It’s Now Or Never/イッツ・ナウ・オア・ネヴァー
16. Are You Lonesome Tonight/今夜はひとりかい?
17. Wooden Heart/さらばふるさと
18. Surrender/サレンダー
19. His Latest Flam! e/マリーは恋人
20. Can’t Help Falling In Love/好きにならずにいられない
21. Good Luck Charm/グッド・ラック・チャーム
22. She’s Not You/あの娘が君なら
23. Return To Sender/心のとどかぬラヴ・レター
24. Devil In Disguise/悲しき悪魔
25. Crying In The Chapel/クライング・イン・ザ・チャペル
26. In The Ghetto/イン・ザ・ゲットー
27. Suspicious Minds/サスピシャス・マインド
28. The Wonder Of You/ワンダー・オヴ・ユー
29. Burning Love/バーニング・ラヴ
30. Way Down/ウェイ・ダウン

Bonus Song: A Little Less Conversation (Radio edit)/
ア・リトル・レス・カンヴァセーション(ラジオ・エディット)

ボーナス・エンハンストCD 収録ビデオ
1. A Little Less Conversation (Original)  ア・リトル・レス・カンヴァセーション(オリジナル)
2. A Little Less Conversation (Extended Remix) ア・リトル・レス・カンヴァセーション(JXLリミックス)
3. A Little Less Conversati! on (Music Video) ア・リトル・レス・カンヴァセーションMTVビデオ・クリップ

 

ロックンロール100

エルヴィスがいた。

エルヴィスがいた。1954~1977

 

 

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