リコンシダ・ベイビー(考えなおして)/Reconsider Baby:1960

リコンシダ・ベイビー/エルヴィス・イズ・バック エルヴィスがいた。

1960年、除隊して帰ってきたエルヴィス・プレスリーが3月20日、21日、30日さらに4月3日4日にレコーディング、ファンが待ち望むなか、急ぎ4月にリリースされたクオリティの高いアルバムELVIS IS BACK

からミディアム・スローなブルースナンバー<リコンシダ・ベイビー(考えなおして)/Reconsider Baby>エルヴィスはこういったブルースを60年代に多くレコーディングしていました。サックス、ピアノがエルヴィスの甘くワイルドな声に絡む実に味わい深いナンバーです。

Elvis is Back!/エルヴィスが帰ってきた!

エルヴィスが帰ってきた

1.Make Me Know It /きみの気持を教えてネ
2. Fever /胸がもえたぜ
3. Girl of My Best Friend, The /奴の彼女に首ったけ
4. I Will Be Home Again /キット帰ってくるからね
5. Dirty, Dirty Feeling /すさんだ気持
6. Thrill Of Your Love /恋のスリルに比べれば
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7. Soldier Boy /固い枕の兵隊暮らし
8. Such A Night /キッスにしびれた
9. It Feels So Right /いかすぜ!この恋
10. Girl Next Door Went A’Walking /隣のあの娘
11. Like A Baby /ライク・ア・ベイビー
12. Reconsider Baby/考えなおして

上記の<SUCH A NIGHT>は日本盤でアルバム・タイトルは最初が<エルヴィスが帰ってきた!>その後<キッスにしびれた>に変わった。
最初<考え直して>だった<Reconsider Baby>も<リコンシダ・ベイビー>に変更された。
曲順もSIDE/Aと/Bが入れ替わっていて、しかもSIDE/Aの1曲目には「キッスにしびれた」を据えていた。現在セールされているアップグレード盤にはオリジナル盤には収録されていない復帰第一作のシングル<Stuck On You/本命はお前だ><Fame And Fortune/恋にいのちを>が収録されている。

このアルバムはそのタイトルからも分かるように兵役を終えてドイツから帰還したエルヴィスの記念すべきカムバック第1作だ。

これはキャリアの中でも意欲的な作品が多く集められている。ロックンロールといういうリズム&ブルースが主体だ。
しかしブラックさが強く匂わずにポップな香りにしあがっているところにエルヴィスの声、歌唱力、イマジネーションの凄さと当時の音楽界の状況を察することができる。

1960.2~4月にかけてナッシュヴィル RCA.Bスタジオで録音、その様子は<ELVIS PRESLEY/SUCH A NIGHT>で知ることができる。

エルヴィスの気持ちを教えてね

エルヴィス・プレスリーとは何者だったのか

エルヴィスは気持ちはアルバムを聴くとよくわかります。

<1.Make Me Know It /きみの気持を教えてネ><7. Soldier Boy /固い枕の兵隊暮らし><9. It Feels So Right /いかすぜ!この恋>の3曲を除いてギター/スコッティ・ムーア、ドラム/D・J・フォンタナが参加している。

Reconsider Baby/考えなおして>でエルヴィスとブルージーなカッコいい掛け合いをするサックスはブーツ・ランドルフ、ピアノ/フロイド・クレーマー。おなじみのジョーダネアーズがバックコーラスを担当。エルヴィスもギターを弾いている。

快調なロックンロール・ナンバー<Make Me Know It /きみの気持を教えてネ>は<Don’t Be Cruel>のオーティス・ブラックウェルがエルヴィスのために書き下ろした作品。
エルヴィスの60年代を代表する傑作のひとつだ。後年マドンナも歌ってヒットさせた< Fever /胸がもえたぜ>もオーティス・ブラックウェルの作品だ。

1965年のコロムビア映画『いかすぜ!この恋』にファンからのリクエストで<It Feels So Right /いかすぜ!この恋>と共に挿入された< Dirty, Dirty Feeling /すさんだ気持>は<監獄ロック>を書いたリーバー&ストウラーのコンビの作品とエルヴィスの帰還を祝うにふさわしい顔ぶれだ。

さて、このアルバムにふさわしいタイトルのきれいなナンバー< I Will Be Home Again /キット帰ってくるからね>は西ドイツで知り合ったプリシラにデイトで歌ってきかせたという伝説の曲。

アルバムからのシングルカットとしては随分遅れて1964年に<Such A Night /キッスにしびれた>1965年に<It Feels So Right /いかすぜ!この恋>がリリースされている。
<Such A Night /キッスにしびれた>はドリフターズが1953年にR&Bチャートでヒットさせたご機嫌なナンバーだ。エルヴィスの<エッセンシャル・エルヴィスVol.6~Such A Night >ではtake2~take4が収録されている。

Girl of My Best Friend, The /奴の彼女に首ったけ>はイギリスでシングルカットされ1960.1970年の2度ベスト10にチャート・イン。
本国アメリカではエルヴィスそっくりな声で歌うラル・ドナーがカヴァーでシングル・リリースし、チャート・インさせている。

この度2000.4.21にリリースされたベストアルバム<ベスト・オブ・エルヴィス・プレスリー~アーティスト・オブ・ザ・センチュリー>には考え直した結果か、ベスト盤にはじめて?<胸に来ちゃった>や<強く生きよう><ポーク・サラダ・アニー>等の新しく選曲された楽曲とともに<Reconsider Baby/考えなおして>が収録された。今度のベスト盤は誠実さを感じますね。

リコンシダ・ベイビー/Reconsider Baby

リコンシダ・ベイビー

さて、名曲<Reconsider Baby>は「新生エルヴィス登場!」とばかりに、かっての<ハートブレイク・ホテル>を再生させるかのように意欲と誠実で創られた迫力のある曲だ。

兵役から解放されて、自由人となったエルヴィスが喜々として取り組んでいるのだろうと容易に想像してしまう<Reconsider Baby
いいね!とにかくいいね!
サックスが豹にまとわりつく蛇のように蠢いているが、その隙間を走るようなピアノも甘味がなくていい。雷雨のようなギターが闇に赤い光りを送り込むように炸裂する。
楽器がエルヴィスを引き立て、エルヴィスは楽器を引き立てる、そして最後の最後に豹が牙をむく。

長い暗い夜に訣別するかのような最後のフレーズ~why don’t you Reconsider Baby give yourself ~のReconsider Babyには思わず唸ってしまう。この言葉にこめられた感情がすべての楽器を超越してこの曲がナニだったのかを語り、このプレイのマスターが誰だったのかをはっきりと印象づける。

「君の気持は変わってしまったようだけど、考え直して」という甘い歌詞の曲。涙のようなピアノを押し殺し封じ込めるようにサックスが唸り、悲しく深く暗い夜の苦渋を語る。「もう一度お前の口から、愛していると言わせるぜ」とばかりにyou say you once have loved me~ギターが叫ぶ。まるでオレはナニがあっても生き抜くぜと言ってるようだ。

そして最後にとどめの言葉、Reconsider Babyの不敵。「考え直すのがお前のためだぜ、(でなきやオレは行くぜ)」きっぱり言い放ってしまっているような表現がエルヴィスらしい。

エルヴィスの妙に女性的な部分と野性的な面、挑戦と怠慢、謙虚と高慢、悪霊と癒し、ひとりの人間に見えるふたつの極端がここでも炸裂している。言葉と表現の落差が放つ危険。歌詞で判断したら地獄行きだぜ!ベイビー。

アップグレード盤ではこの曲に続いて大ヒット曲<Are You Lonesome Tonight?/今夜はひとりかい>が続いて収録されているが、<Reconsider Baby>の後では、まったく精彩を感じなくなってしまうほどに実に素晴らしい。

SUNに通じるReconsider Baby

Elvis Is Back!

ELVIS IS BACK!は極めて微妙なアルバムだ。

本当ならエルヴィスはこのアルバム以降の活動は<Reconsider Baby>をコアにしてもよかった。当時そう判断するのは困難だったかもしれないが、そうしてほしかった!!!ね、そう思いませんか?エルヴィス・ファンの皆様がた!!お手を拝借(パチパチ)

エルヴィス・サン・セッションズ

入隊前、ロックンロールの熱狂は冷めるものとみんなが思っていた。あらゆるメディアはエルヴィスをすぐに枯れる金のなる木だと思っていた。少なくとも二番手、三番手の火の玉、ビートルズやボブ・ディランが登場する迄は。

エルヴィスが道を切り開いていく。優しい笑顔に潜む強靱な反骨心。たったひとりで黙々と—–。
ジョン・レノンは感じた。あの道を歩けばやがて大きな河があると—
ボブ・ディランは思った。そこに石が転がっていける道があると—-
ブルース・スプリングスティーンは風を追いかけて走りたいと思った。

エルヴィス・プレスリーとは何者だったのか

しかし心の宝を金に交換することしか考えない奴ら「トム・パーカー大佐」「ヒル&レインジ社」はその路上にてエルヴィスに銃弾を浴びせた。
このアルバムは、そんなことを知らなかった、いえ薄々感じていたエルヴィスが、自身が置かれた環境の中で、自分の独創性を信じて意欲的に取り組んでいる作品。

だから、みんなココロして聴いてあげてくれたら、エルヴィスがあの笑顔で「THANKYOU VERYMUCH」って笑ってくれるはず。もう一度、お手を拝借(パチパチ)

おまけ

おまけに、エルヴィス・ブルースで狂ってください。

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