夏に開いた恋なのに/Summer Kisses, Winter Tears:1960

エルヴィスがいた。

映画『エルヴィス』のクロージングにも流れるエルヴィス・プレスリ-の<夏に開いた恋なのに>は、エルヴィス主演で<ダーティ・ハリー>シリーズのドン・シーゲル監督した『燃える平原児』のサントラ用に1960年10月にハリウッド・ラジオ・レコーダーズで録音されました。しかし映画では使用されなかったこともあり、シングル・リリースはなく、EP盤で61年4月にリリース。
その後、65年7月にアルバム『Elvis For Everyone』に収録されてリリース。
非常に美しいバラードでありながら不遇な運命を辿ります。こんなに良い曲なのに粗末な扱いを受けるなあと思いましたが、力のある曲は、その後、ヴィム・ヴェンダース監督作品の5時間に及ぶロードムービー『夢の涯てまでも /Bis ans Ende der Welt (1991年)』で重要な場面に使用されます。

夏に開いた恋なのに/Summer Kisses, Winter Tears

エルヴィス・プレスリ-の<夏に開いた恋なのに/Summer Kisses, Winter Tears>は、1960.10月にハリウッド・ラジオ・レコーダーズ録音で録音されました。

なんときれいなタイトルだろう。

そう思ったのは、高校時代に友人の家で見かけた33回転のEP盤だった。

彼はコニー・フランシスが好きでたくさんレコード持っていた。
その中にエルヴィスのものも混じるように結構持っていて、それをうらやましく思ったこともあったが、いま思うと彼の方が音楽に熱心だったのだと思う。
バンドを立ち上げたのも彼だったし、自分のようにリタイヤせずに続けていた。

やがて彼は哲学に傾注し、音楽のことも言わなくなり、デモに突っ込んで行くようになった。それから会うことは少なくなった。その友人もこの夏に逝った。
いつしか自分は、気がついたらエルヴィスのレコードの多くを失っていた。

ほとんどの人は、ひとときの季節に熱病のように音楽に親しみ、実社会と関わるようになって、そちらが生活の大半を占める。家族を持ち、さらに考えることは増えて忙しくなっていき、社交のための歌に変質したりする。

夏に開いた恋なのに

路上でひらい、持っていた物を、季節の移ろいと共に、失いながら、風に頬を赤らめながら、それでも笑顔で暮らしている。

 

 

 

 

夏に開いた恋なのに

夏の口づけ、冬の涙
これがあの娘がくれたもの
思わなかったよ、たった一人で
想し出の小道をたどるとは
幸せな時間、孤独な年月
でも悲しむのはよそう
憶えているよ、あの夏の歌を
冬の雨の間もずっと

* 恋の炎、恋の炎は
離れていても燃えさかる
落ちていく流れ星ほど明々と
夜の闇を照らすものはない
夏の口づけ、冬の涙
いずれ消える星のように
孤独な夜に置き去りの僕
昨日までの夢と一緒に

* くり返し

孤独な夜に置き去りの僕
昨日までの夢と一緒に

夏の口づけ、冬の涙

<夏に開いた恋なのに>は、映画「燃える平原児」の挿入歌の予定だったが、結果的にはそうはならなかった。
そのためムービー・バージョンがあって、近頃はアルバムにも収録されたりしている。


燃える平原児・嵐の季節・夢の渚
60年代前半の映画3作品を集めたサントラ盤、アウトテイクが楽しい.

エルヴィス<夢の涯てまでも>旅に出る

ヴィム・ヴェンダース監督作品『夢の涯てまでも /Bis ans Ende der Welt (1991年)』でエルヴィスは<夢の涯てまでも>旅に出ます。

夢の涯てまでも』(ゆめのはてまでも、原題:Until the End of the World / Bis ans Ende der Welt)は、1991年制作のドイツ、アメリカ、日本、フランス、オーストラリア合作のSF映画。ヴィム・ヴェンダース監督の集大成的な内容で、世界十数カ国でロケーション撮影を敢行。

主題歌はU2の「夢の涯てまでも」(Until the End of the World)で、後にアルバム『アクトン・ベイビー』に収録されました。他にもトーキング・ヘッズ、デペッシュ・モード、ルー・リード、ニック・ケイヴ、R.E.M.、ジェーン・シベリーなど数多くのアーティストが新曲を描き下ろしています。そんななか<夏に開いた恋なのに/Summer Kisses, Winter Tears>は印象的に使われています。

物語の舞台は1999年ですが、主人公クレア(ソルヴェイグ・ドマルタン)がドライビング中の車内で<夏に開いた恋なのに>を 聴きながら口ずさみます。

♪ 孤独な夜に置き去りの僕
昨日までの夢と一緒に ♪

Summer Kisses, Winter Tears

Summer kisses, winter tears
That was what she gave to me
Never thought l’d travel all alone
The trail of memorles
Happy hours, Ionely years
But I guess I can’t complain
For I still recal! the summer song
Through all the winter rain

*The fire of love, the fire of love
Can burn from afar
And nothing can light the dark of the night
Like a falling star
Summer kisses, winter tears
Like the stars may fade away
Leaving me to spend my lonely nights
With dreams of yesterday

*REPEAT

Leaving me to spend my lonely nights
With dreams of ye8terday
Summer kisses, winter tears

Summer kisses, winter tears・・・夏は天国、冬は地獄。
エルヴィスは、自分の心に従うためは、、自身の心が燃えていなかればならないと考え、燃え続けたヒトだと思います。デビュー早々、全米あげての批判と称賛、相反する意見の中で、生きるためには天国と地獄の葛藤を駆け抜けるしかありません。

実はエルヴィスは子どもの頃から、「天国と地獄」相反するなかで生きてきました。双子の兄が死に、自分が生き残った。なぜ。自分だったのか。苦しむ母、グラディス。罪悪感がエルヴィスを苦しめました。屈託のない笑顔は葛藤の上にあります。

生きることは生半可のことではない。日常が修行なら「好きなこと」で修行したい。エルヴィスが自前で録音した時、すでにエルヴィスは知っていたのだ。

不安から解放されたい人々と、その気持ちが痛いほどわかって自分も解放したいエルヴィス。その間を繋ぐのが、自分の歌だと心燃やして、「よし、行くぞ!」と熱唱するエルヴィス。ライブ会場では汗まみれになって歌うバラード。外界のことは気にしなくていいんだと突進する。

レコーディングでは、仲間たちと自分ひとりに没頭する。心静かに歌う。

メンフィス・テネシー Elvis for Everyone


ハンク・ウィリアムスの名曲をカバーした <.偽りの心>は絶対に聴いてほしい傑作です。

『メンフィス・テネシー/Elvis for Everyone』は、エルヴィスが54~60年代中期にかけて録音した作品集。主演映画『嵐の季節』『夢の渚』『ラスベガス万才』挿入歌も収録 されているが、映画の匂いより、オリジナリティ溢れるポップなエルヴィスを強く感じるアルバム。

1.偽りの心
2.夏に開いた恋なのに
3.君といつまでも
4.「嵐の季節」~イン・マイ・ウェイ
5.トゥモロー・ナイト
6.メンフィス・テネシー
7.最後のキッス
8.「嵐の季節」~僕を忘れないで
9.「夢の渚」~サウンド・アドヴァイス
10.「ラスベガス万才」~サンタ・ルチア
11.新しい恋人を見つけた
12.恋は激しく

Elvis for Everyone [FROM US] [IMPORT]

燃える平原児・嵐の季節・夢の渚
60年代前半の映画3作品を集めたサントラ盤、アウトテイクが楽しい.


画像が美しい『ELVIS ON STAGE』

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