1956年はエルヴィス・プレスリーが<ハートブレイク・ホテル>でRCAからメジャーデビュー。R&B部門でナンバーワン、ポップチャートでもナンバーワン、カントリーチャート3位にランクインさせました。3部門制覇は、カール・パーキンスの<ブルー・スエード・シューズ>以来の快挙でした。以後連続ヒットを飛ばしヒットチャートを独占状態にしたエルヴィスの年でした。
その年の暮れ、12月4日にエルヴィスはメンフィスのサンスタジオにふらりと立ち寄ったところ。。。。大瀧詠一氏はFM『アメリカンポップス伝PT2』で以下のように説明しています。
怒涛の1956年を過ごしたエルヴィスは、映画『Love Me Tender』に出演し、久しぶりの休暇をもらいました。メンフィスのサンスタジオに戻ったエルヴィスは、そこで Carl Perkins が『Matchbox』を録音している場面に出くわします。正確には『Matchbox』のデモを聴いていたようです。
そこにふらりとエルヴィスが入っていって、ジャムセッションとなり、サンレコードの オーナーSam Phillips があわてて録音テープを回しました。
そして歴史に残るElvis Presley、Jerry Lee Lewis、 Carl Perkins と Johnny Cash による伝説的なジャムセッションが記録されたのです。
そして、ここで大瀧さんが紹介する曲がエルヴィスが<Too Much Money Bussiness>よりこっちが好きだと言い3回も歌った、同じChuck Berryの作品<Brown Eyed Handsome Man>でした。
ブラウン・アイド・ハンサム・マン/ Brown Eyed Handsome Man
「大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝 PT2」 第1部(メンフイステネシー)
<ブラウン・アイド・ハンサム・マン>は、エルヴィス旋風の真っ只中の1957年にチャック・ベリー(Chuck Berry)が放ったロックンロールナンバーです。エルヴィスはサンレコードのジャムセッションでも取り上げています。
この曲、Brown Eyed Handsome Man(邦題『茶色の目をした伊達男』)は、後に”永遠のロック小僧”ポール・マッカートニーもカヴァーしてエルヴィスのナンバーとともに『Run Devil Run』に収録しています。
稀代の天才ミュージシャンが語るエルヴィス&ロックンロール
NHK FM の『大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝2012PT2』は、PT1の続編です。
PT1では、 Elvis Presley 登場まででしたので、PT2はエルヴィスが大スターになった1956年以降が放送のテーマになりました。ここではMillion Dollar Quartet のセッションについて語っています。
Elvis Presley、Jerry Lee Lewis、 Carl Perkins と Johnny Cash によるサン・スタジオでのジャムセッションを録音したもので、後に音源が発売され「百万弗四人衆」と冠されました。
Million Dollar Quartetという名前からよほど特別なグループのようですが、同じサンレコード所属のアーティストであるエルヴィス・プレスリー、カール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイス、ジョニー・キャッシュという豪華メンバーによる、まさに歴史に残る“伝説的”なセッションで、しかもリラックスした状態で、誰かが笑いながら続けられており、<Brown Eyed Handsome Man>で聴こえる女性の声はエルヴィスのガールフレンド、マリリン・エヴァンズとサンスタジオの秘書であるマリオン・カイスカーで、そのラフさに夢のような時間を感じたヒトは多いと思います。
またエルヴィスは<Out of Sight, Out of Mind>に入る前にChuck Berryの<Too Much Money Bussiness><Brown Eyed Handsome Man>を歌い<Brown Eyed Handsome Man>の方が好きだと言ってますが、実際に正式リリースしたのは<Too Much Money Bussiness>でした。
この史上最高のセッションを、オリジナルの録音順序を維持したまま、完全収録したものが2枚組の『MILLION DOLLAR QUARTET / ミリオン・ダラー・カルテット』。ロックンロールはゴスペル、カントリー、ドゥーワップ、ブルース、ポップ、カウボーイの曲から生まれましたが、そのすべてがここで聴くことができます。
本作には、”Rip It Up”、”Don’t Forbid Me”、”Out of Sight, Out of Mind”といった当時の人気ナンバーに加え、エルヴィスの自作曲(“Don’t Be Cruel”、”Love Me Tender”)、チャック・ベリーの”Brown-Eyed Handsome Man”や”Too Much Monkey Business”のカバー、そしてハンク・スノー、ファロン・ヤング、ジーン・オートリー、ビル・モンローが作曲したカントリーやブルーグラスのクラシック・チューンも収録されています。
本当に彼らが心から歌が好きなことがわかるといって放送されました。
なお、Jerry Lee Lewis は Carl のサウンドにピアノを加えるために呼ばれていたのですが、このときはデビュー前だったとのこと、知りませんでした。当時の空気を知る貴重な資料となりましたが、でも何故 Johnny Cash はそこにいたのだろう。
大瀧詠一氏は、このセッションを語るだけで50分の番組が終わってしまうと語っています。それほど彼にとっても特別なセッションだったことがわかります。
- A1. Untitle Instrumental
- A2. Love Me Tender – Instrumental
- A3. Jingle Bells ? Instrumental
- A4. White Christams Instrumen
- A5. Reconsider Baby
- A6. Don’t Be Cruel
- A7. Don’t Be Cruel ? take 2
- A8. Paralyzed
- A9. Don’t Be Cruel ? take 2
- A10. There’s no PlaCe like Home
- B1. When the Saints Go Marchin’ In
- B2. Softly and Tenderly
- B3. When God Dips his Love In my Heat
- B4. Just a Little Talk with Jesus
- B5. Jesus Walked that Lonesome Valley
- B6. I ShaLL not Be Moved
- B7. Peace In the Valley
- B8. Down By the Riverside
- C1. I’m With a Crowd But so Alone
- C2. Farther Along
- C3. Blessed Jesus (Hold my Hand)
- C4. (As We Travel Along) on The Jericho Road
- C5. I Just Can’t Make it By Myself
- C6. Little Cabin home on the Hill
- C7. Summertime is Past and Gone
- C8. I Hear A Sweet voice Calling
- C9. Sweetheart You Done Me Wrong
- C10. Keeper of the Key [Carl Perkins feature ]
- C11. Crazy Arms
- C12. Don’t forbid Me
- C13. Too Much Money Bussiness
- C14. Brown Eyed Handsome Man
- C15. Out of Sight, Out of Mind
- D1. Brown Eyed Handsome Man ? take 2
- D2. Don’t Forbid Me ? take 2
- D3. You Belong to my Heart
- D4. Is It So Strange
- D5. That’s When Your Heartaches Begin
- D6. Brown Eyed Handsome Man ? take 3
- D7. RIP It Up
- D8. I’m Gonna Bid my Blues Goodbye
- D9. Crazy Arms
- D10. That’s my Desire
- D11. End of the Road
- D12. Black Bottom Stomp
- D13. You’re the Only Star in My Blue Heaven
- D14. Elvis Says Farewall
この日のセッションを大別すると、Carl のバンドが加わってのセッションとエルヴィスの弾き語り音源こそ発表さていませんがJohnny Cashが加わってのミリオンダラーセッションの3つに大別されます。
1956年はエルヴィスの大ヒットに触発されるように、たくさんのロックンロールスターが録音を開始しました。
第1回は、この1956年12月4日の録音で終わっています。
エルヴィス登場以前
エルヴィス登場以前の1951年からの年間トップ10をご紹介します。エルヴィス登場以前の音楽がいかに違っていたか、お判りいただけるものと思います。
1951
01. トゥー・ヤング / ナット・キング・コール
02. ビコーズ・オブ・ユー / トニー・ベネット
03. ハウ・ハイ・ザ・ムーン / レス・ポール&メアリー・フォード
04. カム・オン・ア・マイ・ハウス / ローズマリー・クルーニー
05. ビー・マイ・ラブ / マリオ・ランザ
06. オントップ・オブ・オールド・スモーキー / ウィーバーズ
07. コールド・コールド・ハート / トニー・ベネット
08. イフ / ペリー・コモ
09.一年で一番素敵な夜 / マリオ・ランザ
10. テネシー・ワルツ / パティ・ペイジ
1952
01. ブルー・タンゴ / リロイ・アンダーソン
02. ホイール・オブ・フォーチュン / ケイ・スター
03. クライ / ジョニー・レイ
04. ユー・ビロング・トゥ・ミー / ジョー・スタッフォード
05. アウフ・ヴィーダーゼーン、スイートハート / ヴェラ・リン
06. ハーフ・アズ・マッチ / ローズマリー・クルーニー
07 . Wish You Were Here / Eddie Fisher & Hugo Winterhalter
08. I Went To Your Wedding / Patti Page
09. Here In My Heart / Al Martino
10. Delicado / Percy Faith
1953
01. Song From Moulin Rouge / Percy Faith
02. Vaya Con Dios / Les Paul & Mary Ford
03. Doggie In The Window / Patti Page
04. I’m Walking Behind You / Eddie Fisher
05. You, You, You / エイムズ・ブラザーズ
06. Till I Waltz Again With You / Teresa Brewer
07. April In Portugal / Les Baxter
08. No Other Love / ペリー・コモ
09. Don’t Let The Stars Get In Your Eyes / ペリー・コモ
10. I Believe / フランキー・レイン
1954
01. Little Things Mean A Lot / Kitty Kallen
02. Wanted / Perry Como
03. Hey There / Rosemary Clooney
04. Sh-Boom / Crew Cuts
05. Make Love To Me / Jo Stafford
06. Oh! マイ・パパ / エディ・フィッシャー
07. アイ・ゲット・ソー・ロンリー / フォー・ナイツ
08. スリー・コインズ・イン・ザ・ファウンテン / フォー・エース
09. シークレット・ラブ / ドリス・デイ
10. ヘルナンドの隠れ家 / アーチー・ブライヤー
11. ヤング・アット・ハート / フランク・シナトラ
1955
01. チェリー・ピンク・アンド・アップル・ブロッサム・ホワイト / ペレス・プラード
02. ロック・アラウンド・ザ・クロック / ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツ
03. テキサスの黄色いバラ / ミッチ・ミラー
04. オータム・リーブス / ロジャー・ウィリアムズ
05. アンチェインド・メロディー /レス・バクスター
06. ザ・デイビー・クロケットのバラード / ビル・ヘイズ
07. ラブ・イズ・ア・メニー・スプレンドアッド / フォー・エース
08. シンシアリー / マクガイア・シスターズ
09. エイント・ザット・ア・シェイム / パット・ブーン
10. ダンス・ウィズ・ミー・ヘンリー / ジョージア・ギブス
「大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝」 第1部(エルヴィス以前)
「大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝」 第2部(エルヴィスSUN時代pt1)
エルヴィス登場
1956
01. ハートブレイク・ホテル / エルヴィス・プレスリー
02. ドント・ビー・クルーエル / エルヴィス・プレスリー
03. リスボン・アンティグア / ネルソン・リドル
04.私の祈り / プラターズ
05. わがままな風 / ゴジ・グラント
07. パリの貧しい人々 / レ・バクスター
08. Whatever Will Be Will Be (Que Sera Sera) / ドリス・デイ
08. ハウンド・ドッグ / エルヴィス・プレスリー
09. メモリーズ・アー・メイド・オブ・ディス / ディーン・マーティン
10. ロックンロール・ワルツ / ケイ・スター
1957
01. オール・ショック・アップ / エルヴィス・プレスリー
02. 砂に書いたラブレター / パット・ブーン
03. リトル・ダーリン / ダイアモンズ
04. ヤング・ラブ / タブ・ハンター
05. ソー・レア / ジミー・ドーシー
06. ドント・フォービッド・ミー / パット・ブーン
07. . シング・ザ・ブルース / ガイ・ミッチェル
08. ヤング・ラブ / ソニー・ジェームス
09. トゥー・マッチ / エルヴィス・プレスリー
10. ラウンド・アンド・ラウンド / ペリー・コモ
1958
01. Volare (Nel Blu Dipinto Di Blu) / ドメニコ・モドゥーニョ
02. All I Have To Do Is Dream / クローデット / エヴァリー・ブラザーズ
03. Don’t / I Beg Of You / エルヴィス・プレスリー
04. ウィッチ・ドクター / デヴィッド・セヴィル
05. パトリシア/ ペレス・プラド
06. セイル・アロング・シルバーリー・ムーン / ラウンシー / ビリー・ヴォーン
07. キャッチ・ア・フォーリング・スター / マジック・モーメンツ / ペリー・コモ
08. テキーラ / チャンプス
09. イッツ・オール・イン・ザ・ゲーム / トミー・エドワーズ
10. リターン・トゥ・ミー / ディーン・マーティン
1959
エルヴィス・プレスリーは兵役でドイツの駐屯中です。
01. ニューオーリンズの戦い / ジョニー・ホートン
02. マック・ザ・ナイフ / ボビー・ダーリン
03. パーソナリティ / ロイド・プライス
04. ヴィーナス / フランキー・アヴァロン
05. ロンリー・ボーイ / ポール・アンカ
06. ドリーム・ラバー / ボビー・ダーリン
07. スリー・ベル /ブラウンズ
08. カム・ソフトリー・トゥ・ミー / フリートウッズ
09. カンザスシティ / ウィルバート・ハリソン
10. ミスター・ブルー / フリートウッズ
1960
01. Theme From “A Summer Place” / Percy Faith
02. He’ll Have To Go / Jim Reeves
03. Cathy’s Clown / Everly Brothers
04. ランニング・ベア / ジョニー・プレストン
05. ティーン・エンジェル / マーク・ダイニング
06. ごめんなさい/ ブレンダ・リー
07.イッツ・ナウ・オア・ネヴァー/ エルヴィス・プレスリー
08. ハンディマン / ジミー・ジョーンズ
09. 本命はお前だ / エルヴィス・プレスリー
10. ザ・ツイスト / チャビー・チェッカー
エルヴィス・プレスリーとは何者だったのか
ここでは、ブルースをカントリーにするデビュー曲<ザッツ・オールライト>が上手く歌えずに苦戦する様子、調子をあげて色気が曲全体を包み込む迫力がお楽しみいただけます。<ザッツ・オールライト>のB面として知られる<ブルームーン・オブ・ケンタッキー>のカントリーの大御所ビル・モンローのバージョンと聴き比べが楽しい最初のテイクからアップテンポにチェンジしてエルヴィスカラー全開のロックンロールナンバーに完成させます。
そして、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの<ロック・アラウンド・ザ・クロック>がチャートインして話題を呼びますが、この曲はタイトルこそロックとついていますが、実質的には、まだまだダンス・ミュージックでした。
一方、エルヴィスはすでにロックンロールを発明し、サンレコードで<今夜は快調>を発表するも大きなヒットには届きません。そしてサンレコードには、カール・パーキンス、ジョニー・キャッシュが集まってきます。
「大瀧詠一のアメリカン・ポップス伝」 第3部(エルヴィスSUN時代pt2)
大瀧詠一さん、エルヴィス愛が溢れていますね、ありがとうございます!
ヒトには5つの心(自我)があります。
- CP=厳しい心。規律的で理想に傾斜する父親の心。
- NP=母性の心。優しく保護的な心。
- A=大人の心。冷静で理知的な心。社会生活を送る上で必要な心です。
- FC=自由。天真爛漫で無邪気な子どもの心。
- AC=順応する、いい子を演じようとする抑圧的な心。
ロックンロールの素晴らしさは、自由。天真爛漫で無邪気な子どもの心。です。エルヴィスには母から受けた母性の心。優しく保護的な心が根強くあり、バラードに発揮されました。さらに悪魔的とも言える順応する、いい子を演じようとする抑圧的な心が強く、この先天的な3つの自我が葛藤していました。それをアートにレベルで表現したのは『ミステリートレイン』であり、大瀧詠一さんが、アメリカンポップス伝で取り上げたサンレコードで生み出した作品群でした。
最終的には自分でもまとめきれずこの世にバイバイしてしまいましたが、葛藤を楽しんだことで、幸せな人生だったと総括できるでしょう。
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