ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/You Gave Me A Mountain:1973

ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン エルヴィスがいた。

1977年8月16日、エルヴィス・プレスリーが宇宙に帰ってから46年がすぎました。『アロハ・フロム・ハワイ』から50年が過ぎました。早いもので半世紀が過ぎたのです。未だに新たに<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/You Gave Me A Mountain>にやられるヒトが出てくるから「すごい」としか言いようがありません。
<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/You Gave Me A Mountain>は<アラモの歌>や<ローハイド>の日本盤B面に入っていた<エルパソ>のマーティ・ロビンズの歌ですが、「涙の声を持つ男」として有名でした。しかし多くのファンが語るまでもなく<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/You Gave Me A Mountain>になるとエルヴィスの独壇場でした。エルヴィスの命日に聴きたい歌ですね。

ONE&ONLY

ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/You Gave Me A Mountain

テュペロの生家で(エルヴィス・プレスリー)

「アロハ・フロム・ハワイ」は来日できないことへの対策として行われたライブで、日本のゴールデンタイムに照準を合わせたので現地では真夜中のライブになりました。
事実はトム・パーカー大佐がパスポートを所持できなかったためにエルヴィスの来日が叶わなかったのです。
当時、スケジュール的に余裕がなく、ライブの企画も、内容はこれまでのライブと大きく変えることはできませんでしたが、世界初にして唯一の宇宙中継にこだわって曲目にはアメリカを伝える試みが感じられるように思います。もっともアメリカらしいジャンルであるカントリーから、マーティ・ロビンスの<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン>やハンク・ウィリアムスの<泣きたいほどの淋しさだ>をピックアップしました。

さすがのエルヴィスもテレビの向こうにいる15億人といわれる観衆を対象に歌う緊張のストレスで体調を崩したと言われています。そして当日もノリが悪く、ペースに乗るのが、ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン>に続いて、<スティームローラー・ブルース>の途中あたりからです。ヒートアップしたエルヴィス・プレスリーという人が,、奥が深くて複雑だという本領を発揮します。

声ならし程度の<サムシング>が終わり、序盤戦のクライマックスとなるユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/ You Gave Me A Mountain>は、親に憎悪された子の物語。

砂漠の真ん中に生まれて
母は私に生命をくれると同時に死んだ
彼の妻をうばったのは私のせいだと
父の愛すらも許されず

神よ、貴方はご存知ですね。私は無実の罪で牢獄にいれられておりました
それとてもあまたの丘の頂きのひとつとして
私はそれらすべてをひとつひとつ越えてまいりました
しかしこのたびは神よ、貴方は山を下さった
とても私には登れそうにない山を
それはとうてい丘とは呼び得ないもの
貴方様はこのたび私に山を下さったのです

愛する女は心の痛みに飽き疲れ
悲嘆とあらそいに疲れきっています
なんにもならない労働に疲れ果て
私の妻であることにも疲れたのです

彼女は私の陽光のいちるの望みを持ち去り
私の誇りと喜びを私の生きる理由を
そして私の小さな坊やまて連れ去りました

ああ神様
貴方はこのたび私に山を下さった
とても私には登れないだろう山を
とてもそれは丘とはいえないような山を
神様、あなたはこのたび私に下さったのです
神様、あなたはこのたび私に下さったのです

アロハ・フロム・ハワイ

聖地は真理

対象を神に置き換え、仕方のない試練と受け止めることで、地獄図のような物語を、戦う男の歌に昇華、そこから生まれるドラマティックで厚みのある展開は、エルヴィスならではの畏敬の念が滲み出ています。

<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/ You Gave Me A Mountain>の生みの親である、マーティー・ロビンス自身のパフォーマンスをはじめ、フランキー・レイン、レイ・プライズのものと共通していますが、ゴスペルを思わせるニュアンス、編曲も含めて明らかに違う解釈さらにシャープさと哀愁がエルヴィスの魅力です。

どのパフォーマンスも、アメリカ的なストレートなタフさが伝わってきますが、エルヴィス・バージョンは、さらに痛みとの葛藤も、ダイナミックな仕上がりです。

やれどもやれども、物事がうまくいかない男の苦しみを、地響きがするようなサウンドが呑み込みますが、エルヴィスの歌声が懸命に跳ね返します。

聴いていると、こどもたちの泣き顔が浮かんでは消えます。
その一方で、感情の抑圧を撃破したいすさまじい欲求が、エルヴィス全身の動きから、歪んでいく端正な顔から、華やかなステージから、聴こえてきます。

「児童虐待」が事件として相次いで表面化していますが、表面化しない虐待を想像するとものすごい数でしょうね。

以前、ニューヨークのデパートで、こどもを叱っていた日本人の母親が警備員に連れて行かれました。

国によって基準が違いますし、個人によって違います。
虐待のレベルをどう設定するかで変わります。

「そんなに怒ったらいやだよ、悲しくなっちゃう!」

「なんで、叩くんだよ。痛くて死にそうだよ!」

親に愛されなかった子は、愛されることを強く望みながらも、愛されることを恐れるために、愛することができない子になります。

愛してほしいときに、愛されなかった痛みが、出てきてどうしていいのか分からなくなってしまいます。

鎖につながれたように、身動きがとれなくなるのです。

他人を信じることも、自分を信じることもできないままに、幸福になる居心地の悪さより、慣れ親しんだ不満の状態が、しっくりしてしまう苦しみに支配されます。

この歌の主人公のように傷つき、自分の感情を殺し、他人の感情にふりまわされて、早くから大人の役目を背負わされるこどもが増えています。

<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/ You Gave Me A Mountain>は、淡々と、しかし思いをこめて滑り出す、その出だしに絶妙の味があります。

「どうせ、おれなんか、もうどうでもいい」と言ってるような感じさえします。
しかし「このたびは神よ、貴方は山を下さった」というところから、この楽曲にエルヴィスは、一気に熱い血を流しこみます。

格闘しているかのようなエネルギーです。怒りとさまよう魂の激突がきしみを上げますが、エルヴィスは制圧する力を伴奏に借りるかのようにバックの面々にけしかけます。

エルヴィスの首を飾った赤いレイが揺れるとき、血が噴出しているようにも見えます。
バンド、特にドラムスの連打、抑圧したようなコーラス、内容に反して美しいメロディーラインを強調するオーケストラ、アドレナリンと血と汗が混然一体となって騒然と進行する様は終始不吉です。

誰の目にも触れないようで、どこかで覗かれていても分からない。広大な土地に暮らす小さな家庭内のドラマを連想させるにふさわしく、この楽曲が「カントリー」のジャンルであることが、リアリティを一層強くしています。

歌に流し込んだ熱い血が、エネルギーとなって、気を押し出します。
痛みの気は 涙になりますが、傷ついた心は穴があいているから、大量の汗となって押し出され、体内から溢れ出ます。エルヴィスは歌い続けます・・・

「神様、あなたはこのたび私に下さったのです」といいながら、本当のところ、少し斜め下を向いて、ニヤッと笑っているようなエルヴィスを感じます。

山と思えば、あきらめる、
丘と思えば、やる気も萎える
道と思えば、進んでいく

ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン

それを何と決めるのは自分自身。
こども心を捨てさせられたことさえ、忘れている大人にこども心を真っ白にまとったエルヴィスが、道を灯すかのような大きな星になって歌います。

エルヴィス・プレスリーとは何者だったのか?

エルヴィス・プレスリーとは何者だったのか

<ユー・ゲイブ・ミー・ア・マウンテン/ You Gave Me A Mountain>を聞けば伝わってくるように、人間への想いが断然違います。

映画『グレイスランド』『トゥルー・ロマンス』が両者とも見事な正解を出しています。尚、2つの作品にそれぞれ登場するカップルは、エルヴィスが1969年に発表した『エルヴィス・イン・メンフィス』の収録曲<
恋はいばらの道を/True Love Travels on a Gravel Road>に登場するカップルを連想させます。

もう現代では、絶滅危惧種的女性な点がエルヴィスにはお似合いですね。

アロハ・フロム・ハワイ-デラックス・エディションDVD

曲目リスト ディスク: 1

1.ツァラトゥストラはかく語りき

2.シー・シー・ライダー

3.バーニング・ラヴ

4.サムシング

5.ユー・ゲイヴ・ミー・ア・マウンテン

6.スティームローラー・ブルース

7.マイ・ウェイ

8.ラヴ・ミー

9.ジョニー・B・グッド

10.イッツ・オーヴァー

11.ブルー・スエード・シューズ

12.泣きたいほどの淋しさだ

13.愛さずにはいられない

14.ハウンド・ドッグ

15.そして今は

16.フィーヴァー

17.私の世界へ

18.サスピシャス・マインド

19.メンバー紹介

20.アイル・リメンバー・ユー

21.のっぽのサリー/ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン

22.アメリカの祈り

23.恋の大穴

24.好きにならずにいられない

曲目リスト  ディスク: 2

1.ブルー・ハワイ

2.私の恋人(テイク1~3)

3.ノー・モア(テイク1,2)

4.ハワイアン・ウェディング・ソング(テイク1~4)

5.朝の雨

〈1973年4月4日アロハ・フロム・ハワイ NBC-TVスペシャルUSオリジナル放送ヴァージョン〉

6.ハワイアン・パラダイス

7.ツァラトゥストラはかく語りき

8.シー・シー・ライダー

9.バーニング・ラヴ

10.サムシング

11.ユー・ゲイヴ・ミー・ア・マウンテン

12.朝の雨

13.スティームローラー・ブルース

14.マイ・ウェイ

15.ラヴ・ミー

16.ジョニー・B・グッド

17.イッツ・オーヴァー

18.ブルー・スエード・シューズ

19.泣きたいほどの淋しさだ

20.愛さずにはいられない

21.ハウンド・ドッグ

22.ブルー・ハワイ

23.そして今は

24.フィーヴァー

25.私の世界へ

26.サスピシャス・マインド

27.メンバー紹介

28.アイル・リメンバー・ユー

29.ハワイアン・ウェディング・ソング

30.のっぽのサリー/ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン

31.私の恋人

32.アメリカの祈り

33.恋の大穴

34.好きにならずにいられない

エルヴィス・プレスリー コレクション

アロハ・フロム・ハワイ

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